小話 タダキミノタメ
―――チャーside―――
僕はかつて失敗作だった。
とある上級天使が神様の力を使わずに下級天使を創れないかと研究して生まれた個体の1人が僕。
アオ曰く、残されてた資料を見るに机上の理論的にはおおまか間違っていなかったらしい。
慎重に実践してケアレスミスな部分を修正していけば50年もしないうちに成功していたと思うとも言っていた。
だけど最初に作られた歪な下級天使のようななにかが琴線に触れたようで、研究することを辞めてただひたすらに製造に夢中になり大事な世界を育てる役目を放棄した。
その結果が神様からの討伐指令で、上級天使は神様から解放されて自由になるのだと反乱を開始。
ただひたすらに作られては放置されてる歪な天使と他の上級天使のもとできちんとした姿で生まれ育てられた天使達ではきちんとした天使達のほうが能力が高いに決まっている。
戦況はどうあがいても劣勢でしかなく、だから歪な天使達の中でも自己意識がはっきりしてる個体なんかは神様側にまわっていた。
うまく動かない声帯に腰の左右に魚のヒレのようにはえてる翼を抱えて生まれた僕はただぼんやりとしていた。
この喉では仲間と連携をとれないしこの翼では飛べないしとなんとなく理由をつけて。
短い戦闘のすえに勝利したのはもちろん神様の軍。
そっちに味方した歪な下級天使達は、戦いの中で絆を深めた他の上級天使達のもとへいくことになった。
なにもしなかった僕が誘われるわけもなく、やらかした上級天使の支配する領域と共に消えるつもりでいた、んだけどね。
後処理でばたばたしてる天使達の邪魔にならないように隅っこでぼーっとしてる僕に声をかけてきたのはハイだった。
「チャー様、アオ様及びミド様より解析結果が到着しました」
「地球型大気成分に上辺だけの物体、および2進数構成、結論としてシロ様が現在存在していると考えられる世界の種類は地球派生ゲーム類似型世界と仮定されました」
「リョウカイ、オディリアノガイヘキトソウ、ソレヨウニヘンコウ。シールドセッテイノチョウセツモワスレズニ」
当時は新人だったシロ様のところはいくら手があっても足りなかったから、他の上級天使に見向きもされない僕ですら歓迎された。
別に今この瞬間に死を迎えたってきっと僕は気にならない、というより生まれてこのかた失う恐怖とか死ぬ不安とかを感じたことがない。
きっとこの喉と翼だけじゃなくて心もすこし歪んでたんだろう。
でもハイはいつも恐れているから、怯えているから。
少しでもそれが和らぐように僕ば僕なりに、今日も力を尽くすんだ。
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