初めまして、さっきぶり
砕け散った蛹から流れ出ていくボクに使われなかった液化したなにか。
てっきり次目覚めるのは記憶もまっさらになって新しい故郷にいるのだろうと思っていたのにまだあの謎空間だ。
床と壁と天井の境目のない、そもそもあるのかもわからないカスタード色の空間。
床と思しき場所に広がる液体に浸かった蛹の欠片に、蝋燭の影みたいに映る灯りに誘われて視線を上げた。
そこにいたのはとても見知っていて、今初めて実物を目にする黒。
「おはようございます、シロ様」
下半分だけになった蛹の中に残っている液体に浸かったままぼんやりと思い浮かべる。
赤ん坊が大人を見上げる首の角度は大人が象を見上げるのと同じ角度なんてあいつの戯言。
シロとは逆をコンセプトにキャラメイクされた存在。
設定可能な最低身長100cm――最大身長200cm
課金パーツで一番長い白髪――無課金パーツで一番短い黒髪
光を透過する体――闇に溶解する身
無気力な主――やる気に満ちた従
巨大な翼――小さな翅
水の核――炎の核
節操なく課金して作られたボクに対して無課金でどこまでできるかにあいつがこだわって、いわゆる配布石的な物を注ぎ込まれて生まれた。
とにかく無課金にこだわってたのでボクよりも時間も労力もかかってる。
そこらへんもある意味正反対なのかもしれない。
課金して10分そこらで作られたボクと半年分ほど貯めた配布石で作られた彼。
プレイヤーの分身であるボクの分身。
手となり足となり剣となり盾となり、一声でなんにでもなる。
さて、いまさら当たり前なのだけど産まれたてなボクはなにも身に着けていない。
ボクには体温は必要ないけど、ボクの中の苔はある程度の気温を必要とする。
そのせいか熱を求めてるのだと体が反応する。
もしかしたらやや虚弱なるものをひいたのも関係あるのかもしれない。
「っくしゅ」
「失礼します」
条件反射とばかりにすばやく持ち上げられた。
石であるがゆえに体温を持たない体に、支えられた胴体からじわりと熱が馴染んでいく。
設定可能な最大身長200㎝に相応しい実用的な筋肉はちょっと身じろぐぐらいじゃびくともしない。
動きやすさと耐火性を重視した服のどれもが見た目のシンプルさからはわからない希少素材なのを知っている。
木炭にマグマの熱をもって生まれた天使。
名をクロロベンゼン。
………もちろん、あだ名はクロである。
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