無視したら無視される
「ボクはここで寝てる。ほっといて」
日没の回数的に1ヶ月近く無視し続けてるにもかかわらずほぼ毎日やってきてる。
近くの街なのは確かなんだろうけど、暇人か。
司祭って言っていたような気がするけど格好はシスターみたいな感じがする。
生成り色の修道服みたいなのに頭巾に緑の小さな刺繍、フリルとかレースとかはなくとてもシンプル。
「申し訳ありません。その大きいイベクエは見逃せません」
「……イベクエ?」
「やはり来訪者様ですね。よろしかったら説明いたしましょう」
うれしそうですね、なんか。
もうにっこにこである。
後ろに花が飛んでいるように見える。
木の上にいるボクに対して下にいるえ、え、え、…シスター。
ずっと上向いてるけど首痛くないのだろうか。
「……めんどくさいからなにも言わなくていい」
「イベクエにつきましては第一発見者に権利があるのですが」
どうやら今度はボクが無視される番らしい。
「あなた様については発見者の方が譲ってくれたのです。自分のところよりも私のほうが足りていないだろうと。なので早々に諦めるつもりはございません。あちらをご覧ください」
顔を動かさずにシスターが指したほうへ視線を向ける。
いつもシスターが乗ってくるロバっぽい生き物が草を食んでるその奥、一定間隔で馬車が止まっている。
毎日入れ替わっているからずっと、商人かなにかの休憩所的な場所だと思っていたのだけど。
「ご覧にいただけたでしょうか。つまり、私を拒否しても次が来ます。イベクエが達成されるまで条件はなにかと、次から次へ人が来ます」
「…………はぁ」
対立するめんどくさいことがあったらより対応が楽なほうを選ぶのがボクだ。
きっとこのシスターは丁寧なんだろう。
忍耐強いとも言える。
1ヶ月間ひたすら挨拶に一言二言そえるだけで帰るような人だ。
いったいなんのことかわからないけど、そのイベクエとやらのためにやらかすようなのも、いるんだろうなぁ。
「ご理解いただけたでしょうか」
「……いやいやながら」
「では、長話するには少々私の首が持たないので下りててきていただいてもよろしいでしょうか」
やっぱり首つらかったんだね。
それはそうだ。
「下りてもてもいいけど、条件がある」
「なんでしょうか?」
「髪ほどいて」
「それ、わざとではなかったのですね」




