オーロラって見たことない
呪文を一文唱えるたびに体に芯に集まっていた力が解き放たれ、ボクらを包みこむ幾重もの光の布となった。
じっくり見れたならオーロラのようにとても美しいのだろうけど、それとともに訪れる抗えない眠気が襲い掛かってくる。
ゲームでは3ターンボクが行動不能になる代わりに5ターン範囲内の味方への一定以上の攻撃を防ぐ、ボス戦でとてもお世話になったスキルだ。
子守歌みたいに耳に届いたのは召喚のベルかな。
1ターンがどれくらいの時間になるのかわからないけれど、きっと、クロ、な んとかし
―――クロside―――
シロ様の声が途絶え、美しい5枚の障壁が出現するのを見計らいベルを鳴らすと音が転移扉を作る針へと姿を変えた。
時計の針のように足元で回転し、1分ほどかけて扉を開ける。
「おもちゃ、かえせぇ!」
ベルもハルバードもしまい意識のないシロ様を抱き抱え、ひたすら扉が開くのを待ちます。
今までこの障壁が破られたことはないものの攻撃の強さが違いすぎる。
受けるたびに飛び散る光の破片。
最外殻の障壁が一部引き裂かれた、扉はまだ半分。
「お、も、じゃぁ!」
最外殻が完全に消滅、次の外殻にほつれが出始め、扉は8分の5ほど。
「おもちゃぁ、おっきしなぁ」
2枚目消滅確認、3枚目に突入、扉は4分の3ほど。
「ⓐ、ケ、ろ呉!」
3枚目消滅確認、4枚目もすでに大きく裂かれてしまっている、時間が短くなってきている。
扉はあと8分の1ほどで。
「ⓐⓐ亜ケケKゖけ」
4枚目…扉はまだ、まだもう少し、間に合わなけりゃこの身を壁に完成次第シロ様を押し込むしかない。
1秒にもみたないこの時間、早く、早く、早く、早く!
「dんvjdsfk!」
<乗船開始します>
5枚目割れた、が、まだ残っている!扉が開いた!
足から扉に吸い込まれていく。
扉が閉まるまで障壁はもたないだろうな、危険は承知の上、このまま扉をあけたまま飛ぶしかない。
捜査室に飛び込み椅子の座る間もなく叫ぶ。
「代理責任者命令緊急厄災世界脱出開始!」
<代理責任者クロロベンゼン生体データ確認。エンジンフル稼働、世界間航海開始します>
これで、なんとか、なるはず。
たとえついてこられても戦闘部隊と合流することができれば対処でき
衝撃も音も何も感じなかった
大きすぎるそれを受け止めきれず麻痺した感覚の中
唯一残っていた視界でとらえたのは
二つに叩き折られたオディリア
壊れず暴走した転移装置が作り出したぐちゃぐちゃのワープホール
なにも持っていない、自分の、手
―――シロside―――
「なんでボク、木にからまってる?????」




