女体化ヒロインは稀少価値だっ!
ハロー♪ 皆さん。
お元気ですか? 井上○水です。
すいません、初っぱなから嘘吐きました。
調子にノッてすいません。
本当にすいません。
改めて皆さんに、簡単に自己紹介させてもらって良いですか?
俺の名前はアレス。
【アレス・レオグニル】
別に「火竜の〜」とか言って口から炎とか吐けませんので、悪しからず。以後、お見知りおきを。
突然ですが、皆さんに問題です。チャラン♪
俺は今とにかく無駄に広大な大草原を、死にもの狂いの全力疾走で、息を切らしながら駆け抜けています。
それは一体なぜでしょう?
Q.
① 首が三つもある、巨大な大蛇に襲われているから。
② 紫色のとっても大きなゴリラに、ストーカーされているから。
③ これまた首が四つもある、超大型犬のワンちゃんに追っかけられているから。
④ 陸地なのに、メガロドン並にデカい鮫に捕食されそうになっているから。
⑤ ご立派な毒針を持った、信じれないサイズのスズメバチに狙われているから。
正解は───全部でした♪(笑)
「ぎぃやああッ!! 誰かっ…誰でも良いから助けてくれぇええ!! ヘルプっ、ヘルプミィイイッ!!」
顔面崩壊を晒しながら、情けない声をあげて助けを呼ぶ俺。嗚呼…本当に情けない…。
でも仕方ねぇーよな。だって今の俺の実力じゃあ、ゼッテェーあの魔物たち倒せねぇーもん!
それが本能で分かったのか、アイツら出くわした瞬間に真っ先に俺を狙って来やがった。
確かにあのメンツじゃあ俺が断トツで雑魚だけども…。
それでもさぁ~。
てゆーか、本当に誰か助けに来いよッ!
このままじゃあ俺、マジで死んじゃうよ。
いいの? 俺、一応主人公よ。
良いの? いきなりこの物語終わっちゃうよ。
イ イ ノ?
・・・お願いします!
誰か助けに来て下さいッ!!
俺が心の中で助けを求めていると、耳にしていたインカムから愛しの可愛い妹(?)の声が、雑音混じりに聞こえてきた。
『ザーザーッ……にぃにぃ、今どこ…?』
「“クー”か!? 頼むっ、助けてくれぇ! このままじゃあお兄ちゃん、死んじゃうッ!!」
『OK把握。ぼくの《レーダー》の範囲外まで逃げるなんて…。流石にぃにぃ。逃げ足だけは世界一ww』
「褒めてんのか馬鹿にしてんのかどっちだよ! ってそんな事言ってる場合じゃねぇー! マジで助けてくれっ! 今ガチのピンチなんだよ! クーはお兄ちゃんが死んでも良いの?」
『大丈夫。にぃにぃは殺しても死なない…。 それに今“ミュウミュウ”と“ゼフレにぃにぃ”が向かってる。あと“パイセンさん”も…。 だからあと一分ぐらいガンバ♪』
「一分も持たねぇーよ!」
『そこで諦めたら人生終了ですよ…(笑) にぃにぃ、ファイトだよっ! ・・・それじゃあ。 ガチャン! ツーっツーっ……』
「洒落になってねぇーよッ! ・・・クー? クーちゃん? クーちゃま?! クーさまぁあああっ!? お願い! お兄ちゃんを一人にしないでっ!! ・・・もう無理だああああッッ!!」
何度呼び掛けても愛しの妹(?)からの返答はなく、ただ虚しい時が過ぎるだけ…。
てゆーかおかしいだろうッ!
無線なのになんで 『ツーツーツー』 なんだよ!
電話じゃねぇーんだからよ!
そう心の中でツッコミを入れながら、断末魔の様な叫び声をあげて、チラッ! っと後方を確認する。
そこには目を瞑りたくなる絶望が広がっていた…。
⑥ あきらかに規格外のカラフルな色をした、可愛いカエルちゃん。
⑦ もの○けの森とかに居そうな、シ○神さま(デイ○ラボッチ) によく似たナニカ。
⑧ ただのグ○ードン(劇場版)
⑨ 巨大化した“V”の人(みたいな人。)
・・・・なんか増えてるッ!?
それを見た俺はフッっと笑みを浮かべ、大人げもなく大粒の涙を流して、人生最後の言葉になるかもしれない声を絞り出す。
「こんな所で死にたくねぇよぉお~! お願いだから助けてくれよぉお~ッ! ピーたんっ! ミュウ! ナデパァ~イっ! ──ううっ…。これで死んだら化けて出て、お前らのおっぱい、お前らが死ぬまで揉みまくるからなぁああッ!!」
そんな最低発言をする俺に、救いの【女神】さまの声がインカム越しに聞こえてくる。
『聞こえてんぞバカッ! その呼び方で呼ぶなっつってんだろうがッ!! あとで処刑だかんなっ!』
『伏せたまえ、アレス君!』
『アーちゃんごめんねっ、いま助けるよ!』
《 “全てを灰燼に帰す、滅竜王の一撃” ッ!!》
《 “真・黒撃乱斬衝 極” ッ!!》
《 “聖域より降り注ぐ、裁きの閃光” ッ!!》
ドゴォオオオンンッッ……!!!!
《《《グギャァアアオオンッ!!》》》
《ギシャアアアッッ!!》
《ビィイイイイッッ!!》
《ブルァアアアアアアアッッ?!》
その声と同時に眩し光と激しく強烈な爆発音。
何かが光速で切り刻まれる音に、生命を絶つ炎の匂い。
それと大きな振動と衝撃。
爆風が襲ってくる。
少し遅れて、魔物どもの断末魔の呻き声が聞こえてきた。
(・・・一体だけ、断末魔が変なヤツいなかった?)
爆風で吹っ飛ばされた俺は、五・六回地面にバウンドして、「ひでぶッ!!」 とカッコ悪い悲鳴をあげて、天を仰ぐ様に逆さまに倒れ込む。
嗚呼…。 今日も空は青い……。
「生きてる……グスン…。 生きてるよぉおお~!!」
『生』の実感を噛み締めながら、歓喜余って涙声で大きな声を出してしまう俺。
そんな俺に駆け寄り、申し訳なさそうな顔をして覗き込み、勢いよく抱きしめてくる超絶美少女がひとり。
「アーちゃん大丈夫、どこもケガしてない!? 死んじゃやだよぉ~!」
その美少女は俺を優しく抱きしめるとワンワン泣き始め、そのあまりにも規格外の 『“最終兵器”』 を押し当ててくる。
(おっ、おおお…! ──鎮まれ、俺の“我が息子”…)
興奮のあまりにアホな事を考えてる俺を、心底心配した様子で見詰めてくる、爆乳美少女。
俺はその美少女の頭を優しく撫でてあげ、まじまじと見詰め返す。
彼女(?)を一言で表すなら 『ピンクのお姫様♪』 と言う表現が一番合っているだろう。
とても長くて艶のある綺麗な髪もピンク。
長い睫毛や眉もなんかも、ほんのりピンク。
大きくてキラキラした瞳の色もピンク。
思わず吸い付きたくなるような、とても柔らかそうな唇もピンク。
彼女が身に纏っている騎士甲冑みたいなモンも、ピンクを基調にしている。
剣も盾も冠も。
髪をツーサイドアップにしている、その可愛いリボンすらもピンク。
(恐らく下着もピンク。)
さっきから聞こえている、甘くて可愛い美声も萌え声である。
極めつけは彼女の背中から生えている様に見える(実際は生えていない)左右対称の大きな六枚の翼さえもピンクである。
どこまでいっても、
ピンク! ピンク! ピンクッ!!
普通はここまできたら嫌悪感や不快感が生じるものだけど、決してそうゆう事はなくて、彼女(?)にはピンクしか似合わず、ピンクもまた彼女(?)の為にあるようだと錯覚させるぐらい、違和感がないのだ。
「アーちゃん? 本当に大丈夫…?」
俺が黙ったままずっと見詰めて居たので不安になったのか、可愛らしく首を傾げて、体調を訊いてくる美少女。
そんな美少女に俺は決め顔をしながら返事をする。
「ああ大丈夫だ。助けに来てくれてありがとうな、ミュウ♪ ──結婚しよう!」
「ふぇええっ!? 急にどうしちゃったのぉ!? ──でも…うん、分かった! アーちゃんがどうしてもって言うんなら…僕は良いよ? えへへ…嬉しいな♪」
恥ずかしそうに顔を赤くし、少し含羞みながらも、その魅力的な唇を差し出してくる、爆乳の超絶美少女──“ミュウゼリーゼ”。
やっべぇッ…。
軽い冗談で言ったつもりだったんだけど。
でも言ってしまったもんはしょうがない。
今さら冗談だって言ったらミュウが傷付くし、きっとまた泣き出すんだろうなぁ…。
コイツは誰よりも俺の事を信頼し信用してくれているので、裏切りたくない…。
悲しませたくない。
そんな顔は見たくない。
例えコイツがちゃんとした女の子じゃなくても──。
それに、さっきから可愛い顔をして俺を待ってるのがもう……辛抱堪らんッ!!
なのでほんのちょっと悩んだ末、意を決してミュウの素敵な唇を奪いにいく。
(あんな死ぬ思いをしたんだ。こんくらいのご褒美があったって良いよな…?)
そんな事を思いながら、ミュウと唇を重ね合わせようとすると──
ビリビリビリビリビリビリッッ!!!!
「あぎぎぎぎぎぎゃぎゃっ?!?!」
「ああ! ごめんアーちゃん! やっぱり【乙女ガード】が発動しちゃってるぅ!? 本当にごめんねぇ~!」
全身黒焦げになるくらいの“謎の電流”が、俺の身体に流れて軽く失神する。
その横でどうしたら良いか分からず、あたふたオドオドするミュウ。
マジかわいい……♡
そんな俺たちの様子を、さっきから遠くで見ていたもう一人の美少女と美女が、俺たちの方に近づいて来た。