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妹を迎えに

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いつも空を見ている②③


の番外編です。

暎万


「おばあちゃん。今日学校の帰りにね。みんなでカラオケ行くからさ。遅くなるよ。」

「いや、今日はやめときな。暎万えまちゃん。」

「なんで?」

「お父さん帰ってくるって。また、怒られちゃうよ。」

スマホ握ったまま、あ~と思う。

「でも、もう行くって言っちゃったし。」

ねぇ、早くと友達が周りで騒ぐ。

「そんなに遅くならないようにするからさ。」

そう言って電話切った。


騒いでると時間忘れる。気づくとカバンの中でスマホ鳴ってる。取り出して気づく。やば、着信何件か入ってた。もちろん、お父さん。


「もしもし。」

「どこいるの?」

「ええ?」

「うるさくて聞こえない。」

しょうがなく、ボックスの外出た。

「どこいるの?」

もう、声が怒っている。楽しかった気分が下がった。

「迎え行くから。」

「やめてよ。お父さん。まだ8時じゃない。」

お父さんがため息つく声が聞こえる。

「じゃあ、何時に終わるの?迎え行くから。どこ?」

「自分で帰れるよ。」

いつまでも子供扱い。みんなの中でこんな親から電話来るの、わたしくらい。迎えになんか来られるの、恥ずかしい。

電話の向こうでお兄ちゃんの声がして、しばらくするとお兄ちゃんが出た。

「暎万、お兄ちゃんが行くから。それならいいだろ?場所、どこ?」

ちょっとほっとした。


「暎万、のり悪い。どこ行ってたのよ。」

「電話。」

「え?」

「ごめん。9時で帰る。兄貴迎え来るって。」

「え?うそ?」

みんなが喜んだ。

「なに?」

「だって、暎万のお兄ちゃん、かっこいいじゃん。」

「……」

キャーキャー騒いでる。


春樹


「こんばんは~」

「ああ、どうも。こんばんは。」

「いつも暎万さんと仲良くさせてもらってます~。」

「ああ、妹がお世話になってます。ありがとうございます。ほら、いくぞ。」

「ああっ」

「なに?」

妹の少し気まずそうな顔と、妹の友達の顔を見回す。

「あの、お兄さんの高校ってH校ですよね。」

「はい。」

「わたしたちって中高と女子校じゃないですか。」

だからどうした。

「今度、お友達紹介してもらえませんか?」

妹の友達の顔を見回す、もう一度。普通の中学生。中学生も暇なものだ。

「そうねえ、紹介してほしいってやつが周りにいたらね。」

一応笑っておいた。

「いくぞ。暎万」

やっと解放されて夜道をゆく。

「親父が心配するのも一理あるわ。」

「なに?」

「お前もいつのまにか彼氏のほしい年頃になったんだなってことだよ。」

「いらないよ。別に。」

「お前らはあれだ、仲良くしている誰かに彼氏できたら、みんな欲しくなるって。」

「そういうものなの?」

「それで、くだらない男にひっかかるんだ。」

妹はむっとした。

「自分はどうなのよ。」

「俺はがきには興味ないから。」

ふっと妹が笑う。

「変なとこ似てるんだから。親子で。」

「なんだよ。」

「年上好き。」

「年上とまではいかないでも、中学生はありえないから。さっきああいったけど、紹介とかしないから。」

悪いけど幼女趣味とかないわ。まあ、幼女は言い過ぎだけどな。

「じゃあ、愛想よくしないで、ばさっとさっきも切っちゃってよ。ほんと、お兄ちゃんって」

「なんだ?」

わざわざ迎えに行ってやったのに、こいつは感謝のかの字もないな。

「お母さんそっくり。顔はお父さんに似てるのに。」

「どういう意味?」

「外面いいんだから。」

「……」


「ただいま」

「おかえり。」

「ただいまっ」

父親が奥から出迎えると、暎万のやつさっさと靴脱ぎ散らかしてとんとん階段あがって自分の部屋に入っちゃった。ばたんとドアが閉まる音がする。父がため息をつく。

「そんなに心配しないでもいいじゃん。」

僕がそう言うと、父は僕の顔を見た。

「お前も娘を持てばこの気持ちがわかるよ。」

消えてった階段のほう見てる。その様子見てて思った。


「いや、俺は息子だけでいいわ。」

こんなに心配しても疎まれてな。父親ってまじかわいそうじゃないですか。


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