始発駅 後編
時の停車場 東京駅
女性はゆっくりと話し始めた。「ここはあなたのいた2020年ではないわ。ここは時の停車場。あなたの世界では東京駅と呼ばれているわね。今でも東京駅は存在する、でもねあなたのいた東京駅に戻るには何十もの乗り物を乗り継がないといけないの」少年は唖然とするしかなかった。ここは自分のいた世界ではない、そして戻ることも困難であると聞き、もう静かに驚くことしかできなかった。女性はなにかを思いついたように、カバンに手を入れた。女性は「これはあなたのいた世界に戻るための一番最初の列車よ。この列車は一年に数回しか走らないの、だからこの切符は絶対に無くさないで、列車に乗り遅れてもダメよ」少年は無意識のうちに女性が渡す切符に手をのばしていた。女性は「もうすぐ列車がでるわ!急いでホームに向かって!早く!」というと、少年の背中を押した。少年はそのまま走った。切符には「寝台特急あさかぜ 博多行き 1957」と書かれていた。1957の意味はおそらく時代だろうと思いながら、少年はホームに向かった。あさかぜには一つ一つのドアに車掌補と呼ばれる人が立っている。自分の乗る号車ではなかったが出発のギリギリだったため、乗せてもらうことができた。少年が乗ると列車はすぐに動き始めた。
こうして、もといた世界、2020年に戻るための少年の旅がスタートしたのだった。