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学園研究部の裏側①

作者: 空野 刹那

「探せ!絶対に逃がすな!」

はぁはぁはぁ・・・。

息遣いが荒くなる。

「いたぞ!こっちだ!」

はやくここから逃げなくては・・・。



目が覚める。

窓を開け、空気を吸う。

今日から始まる新たな一日への期待が高まる。

俺、黒崎 悠真 (くろさき ゆうま)は高校生になる。

初日の朝は快晴だった。

俺は朝の支度を済ませ、自宅を出る。

「いってきます」

そんな声が鳴り響くのは俺が一人暮らしを始めたからだろう。

帰ってこない「いってらっしゃい」を小声で発しながら、

俺は今日から通う「清鳴高校」に向かった。


正門前の桜がひらひらと風になびいている。

「入学おめでとう」

「同じ高校だね」

「あの子可愛くない?」

「俺、何組かな?」

そんな生徒達の声を聞きながら

自分が何組であるのか確認する。

A組の欄からB組、C組、D組ときて最後E組。

そこに俺の名前はあった。

「あの・・・すみません。E組の教室ってどこですか?」

話しかけてきたのはハーフっぽい顔立ちのいわゆる美少女だった。

目があった為、少しドキッとしてしまい視線を落とす。

彼女、いやその呼び方は正しくないのかもしれない。

そう。彼が履いていたのはズボンだった。

ズボン。即ち、男子用制服である。

一瞬、気を失いかけたが、ぎりぎりで留まり、顔を確認する。

美少女。もう一度、下を見る。

ズボン。しかし上を見る。

美少女。もう何が何だか分からなくなってきた。

「あの・・・男・・・?」

つい聞いてしまった。

「え?あ、そうだけど」

男だった。

男だった。

一瞬、恋をしてしまった自分が恥ずかしい。

「あ、えーと俺もE組なんだ。一緒に行こうぜ」

「あ!うん!僕、青花あおはな 空音そらね。よろしくね」

「俺は、黒崎 悠真。よろしく」

会話しながら階段を登る。

この学校は三階建てで、上から1,2,3年という並びになっている。

「ここみたいだね」

空音がE組の扉を開ける。

クラスの大半は席についていた。

偶然にも俺と空音は席が隣だったので「よかったね」

と言い合い席につく。


入学式が終わりクラスは解散する。

「ねぇねぇ。ゆーまは部活何に入るの?」

空音はいつのまにか俺の事を「ゆーま」と呼んでいた。

「うーんと・・・まだ決めてないかな」

「なら一緒に見に行こうよ!」

そんな一言から俺たちは部活動説明会の為ここ。

体育館に来ていた。

まずは運動部から順に発表が行われた。

特に面白いものはなかった。

しかし文化部の発表に入り、三組目。

突如としてそれはやってきた。

「続いては学園研究部の発表です。おねがいします」

(学園研究部?なんだそれ)

「れでぃーすえーんどじぇんとるめーん!

くだらない学校生活に飽き飽きしているであろう生徒諸君!」

突然ハイテンションで上裸に金マントの男が飛び込んできた。

「俺は学園研究部副部長の灰里はいざと しゅん

これから君たちに一つだけ質問する!」

そう言って上裸男は舞台の上へ上がる。

「学校楽しいか?」

その一言は一瞬にして場を凍りつかせた。

「楽しくないと思うやつ。俺んとこに来い。

部室で待っててやる」

そんなカッコよさそうなセリフを言った彼だが、

この場の全員はこう思っていた。

まず上を着ろよ!


部活動説明会が終わっても俺は先ほどの

上裸の言葉を忘れられずにいた。

「ねぇねぇ、ゆーまはどの部活にする?」

空音の言葉に少し戸惑う。

「えーと、学園研究部・・・かな」

空音は不思議な顔をする。

当然だ。

あんな上裸男のいる部活だ。

ヤバい部活に違いない。

でも俺はその部活にとても惹かれてしまっていた。

『学校楽しいか?』

その言葉に動かされたに違いない。

「じゃあ僕もそれにしようかな」

驚きだった。

「え?なんで?」

「ほら、僕女の子っぽいじゃん?

そのせいであんまり友達がいなくて・・・

だから入ったらなにか変わるかもって思ったんだ」

「空音・・・」

「ほら!早く行こ!」

こいつ本当に可愛いな。

そんな邪な考えを頬を叩いて薄れさせ、空音についていく。


学園研究部部室前。

どうやら他にも人が来ているらしい。

物好きもいるんだなぁ。

そんなことを考えつつ扉をノックする。

「すみません。入部希望なんですけど」

その言葉と同時に扉を開けると

小さな女の子。そう幼女がいた。

「氏ね」

そう一言言って、扉を閉められた。

少しだけ心が傷ついた。

「え?あっあの・・・」

もう一度扉を開ける。

幼女はどこかに消えてしまっていた。

代わりにそこにいたのは俺を動かしたその人。

上裸男こと、「灰里先輩」だった。

勿論、今回は服を着ている。

なぜか髭眼鏡を付けているのはきっとスルーしてもいいだろう。

「あの・・・入部希望なんですけど・・・」

「おっ!二人目と三人目だね。カップル?」

どうやら空音のことを女だと思っているらしい。

「そっ!そんなんじゃないです!あと僕は男です!」

空音が弁解する。

俺も女の子だと思っていたことは棚にあげて先輩に

「そうです!こいつはちゃんとついてますから!」

と伝える。

すると先輩は唐突に笑い出した。

髭眼鏡のせいでとても変態にしか見えないのは心に留めておいた方がいいだろう。

「わかってるって、君からは女の子の香りがしないから」

あぁ・・・こいつ・・・変態だ・・・。

「まぁそんなことは置いといて自己紹介しようか」

「あっ、俺、黒崎 悠真です」

「僕は青花 空音です」

上裸男、改め変態は髭眼鏡を外した。

「俺は三年で副部長の灰里 瞬。よろしくな」

俺は多分この人を「変態」もしくは「変態先輩」としか言わないと思う。

「よろしくおねがいします。・・・あの、さっき幼女が・・・」

「あーそれうちの部長。愛想なかったでしょ?」

(部長?あの部長か?

風格とか全然なかったけどな・・・)

「じゃぁその部長様を呼んでくるからその辺座って待ってて」

変態は部室の奥へと消えていった。

とりあえず椅子に座る。

少し待っていると入り口の扉が開いた。

風が吹く。春の香り。

振り向くと紺色の髪の女性がそこにいた。

少し幼げな容姿。身長は150~160ほど。

空音と同じくらいだ。

可愛らしい制服に身をつつ・・・

訂正だ。

制服ではなかった。

チアリーディングのユニフォームに身を包み、

手にはチアで使うボンボンを持っている。

あぁそういう感じか・・・。

頭の中に過ったのは先程、どこかへ消えていった変態。

いや、今度からは「ド変態」と呼ばせて頂こう。

あいつのせいに決まってる。

しても短すぎるんじゃないか?

何かとは言わないが。

「おっ!似合ってるじゃん!やっぱチアはいいね~」

例の変態がやってきた。

とりあえず蔑んだ目で眺めておく。

「ちょっ、何その目・・・俺泣くぜ?」

「いえ、先輩の事を変態とか思ってないですから」

「聞いてないよね?!俺そんなこと聞いてないよね?!」

無視しておこう。

「いいよいいよ・・・ちゃんと仕事はしたからね?」

変態の後ろにはさっきの幼女がいた。

「あの・・・えーと・・・」

「桃山 カレン。カレンでいいわ」

「あっはい。よろしくお願いします。カレン先輩」

カレン先輩、及び幼女は白衣を身に纏っていて、眼鏡族。

髪は金のツインテールだが、染め忘れがあるので

恐らく純日本人なのだろう。

「見過ぎだよ・・・」

「ん?空音?なんか言った?」

「なんでも!」

女の子は難しいな・・・。

あ、男だった。

「今日は特に何もないから入部届出したら帰ってもいいわ」

(なんか自由だな・・・)

「明日は授業後すぐに集合だから遅れずにね。じゃあ解散!私は寝ます」

そう言って彼女は奥の部屋に戻って行った。

(あの部屋・・・何があるんだろう・・・?)


夕方。自宅。

この広い家に一人というのはなにかと不便だな。

「ルームシェアとかしてみるか・・・」

「ピンポーン」

チャイムの音が鳴る。

俺は扉に向かう。

「すみませーん、隣に引っ越してきた青花ですけどー」

青花?

扉を開けるとそこには空音がいた。

「えっ?!ゆーま?!な、なんで?!」

「こっちが聞きたいよ。家隣だったんだね」

家は一軒家。隣ということは空音もそうだろう。

「うん。引っ越してきたのは昨日だけどね」

どうりで昨日は眠れなかったわけだ。

うん。決して学校への好奇心とかがあったわけじゃない。

きっと。多分。恐らく。

「そうか、なんかあったらいつでも来いよ」

「えっ?いいの?」

?なんで嬉しそうなのだろう。

「お、おう。当たり前だろ?」

「う、うん・・・ありがとね」

「あぁ。じゃあまたな」

「うん」

そういえば洗剤切れてたな・・・。

「今から買いに行くか」


「ありがとうございましたー」

店員のささやかな見送りを感謝しつつ店をでる。

午後九時。

次第に深くなる夜。

危険な香りを匂わす夜。

「早く帰ろう・・・」

俺は家へ足を速めた。

しかしその瞬間は突然訪れた。

「避けて!避けて!避けてぇぇぇぇぇ!!!」

ずしっ!

重い・・・。

手にはやわらかい感触。

うーん近い物で言えば肉まんかなぁ。

おっこれむっちゃ揉みやす・・・。

手元を見る。

まぁ詳しくは言わないがアレがそこにあった。

俺の上にいるのは仮面をつけた少女。

いやサイズ的に幼女だろう。

なぜかバニーガールなのは触れてはいけない所だろう。

(どこかで見覚えが・・・?)

「いたたたた・・・。あっ!早く逃げないと!あなた!ごめんなさいね・・・ってなんだ。

あなただったのね。ちょうどいいわ。ついてきて!」

「え?は?ちょ?まっ?!」

手を引っ張られ走らされる。


結局、そのままついてきてしまった。

そこは夜の学校だった。

「ここって・・・学校?」

「こっちよ」

先程の少女に再びついていく。

そこで目にしたのは「学園研究部」の部室だった。

「なんでここに・・・?」

「あら?言ってなかったかしら?」

そう言って少女は仮面を外した。

その顔はつい最近。いやさっき見た。

仮面の少女の正体は幼女先輩だった。

ということは今、この部室に変態、あ、間違えた。

ド変態もいるであろう。

俺はつばを呑む。

扉を開けるとそこには空音と

チアリーダー(名前不明)がいた。

「あっ!ゆーま!ゆーまも来たんだね」

「空音もか」

「うん!先輩に突然呼ばれて着いて来たらここに」

俺は隣のチアリーダーに視線を向ける。

「君は昼の・・・」

少女は眠そうな顔でこちらを見た。

白倉しろくら 氷姫ひさめ。よろしく」

「よろしく。白倉さん」

「氷姫でいい」

「あっうん。よろしく氷姫さん」

(チアリーダーのことは少し気になるけど今度にしておこう)

「やぁ君たち」

変態先輩と幼女先輩が奥の部屋から出てきた。

変態先輩はまぁ多分時計っぽいモチーフの服を纏い、

まぁいかにもって感じの仮面をつけている。

なんとなく先輩だと分かるのはそういうオーラがでているからであろう。

「突然ですまないね。さっそくだけど君たちにたのみがあるんだ」

幼女先輩がアタッシュケースを取り出しこちらに向けて開ける。

「俺達と一緒に怪盗やってみないか?」

ケースの中には衣装と仮面。それから色々な道具が入っていた。

「怪盗・・・ですか???」

空音が少し不安そうに言った。

「あぁそうだよ。本当は明日このことについて伝えるつもりだったんだけど、

どうやらこいつが君に見つかったっていうのを聞いて今日に早めたんだ」

「わざとじゃないからしょうがないでしょ!私だって一生懸命ぃ!」

「あーわかってるわかってる。わかってるから」

変態及び、エロおやじはめんどくさそうに話を振り払った。

「俺達はとある目的で怪盗をやってるんだ」

「とある目的・・・?」

変態達の目的・・・。あ、間違えた。

先輩達の目的・・・。

「俺達はある美術品を狙ってる。お前らノワール・ジェニーって知ってるか?」

「えーと美術家の?」

ノワール・ジェニー。

フランスの有名な美術家。

その作品は絵画から彫刻など様々。

まさに美術界の天才と言える人物だろう。

「そう。そのジェニ―の美術品がジェニーの死後。倉から盗まれたんだ」

「盗まれたっ?!誰にですか?」

「わからない。ただ盗まれた美術品は各地の美術館に横流れしているんだ。

俺達はジェニーの孫。この部の初代部長のノワール・トム先輩の意思を継いで

こうして怪盗をやっている」

横流れ、孫、初代部長。大体わかってきたぞ。

「つまり全部の美術品を盗み出して回収しろ、ってことですか?」

「鋭いね。嫌いじゃないよ」

変態に言われてもあまり嬉しくないな。

まぁいい。先輩。まちがえた。変態の言っていることを要約すると

「先輩から頼まれたから奪われたもの取り返してっ!」

ってことだろう。なんとも勝手な話だ。でもそれだけ・・・

「報酬はあるんですよね?」

ナイス空音。

先輩の出方を待つとしよう。

「うーん。君達が求めるものじゃないかもしれないけど一応ね」

「一体何が貰えるんですか?」

「秘密♡」

イラっ。

「先輩?何をくれるんですか?」

先輩に聞いた俺がバカだったと思いながらもう一度聞いてみる。

「俺も知らないんだよね。先輩がなんか貰えるって言ってたから

俺も参加してるんだよね。まぁ振り切って人助けだと思ってさ?」

人助けか・・・。悪くない響きだけどリスキーなのはちょっと・・・。

「あの!僕やります!怪盗!」

(空音?なんで・・・?)

「ほら、僕取り柄ないからさ・・・。人の為になにか出来るならやってみたいんだ」

「空音・・・」

「うんうん。君らは?」

「俺は・・・」

「私、やります。なんか楽しそうですし」

決めれないのは俺だけ・・・。

「一度やってみて決めてもいいけど」

つばを呑む。

怪盗をやってみる・・・。

それがどういうことかはよくわかっている。

でも俺は・・・。

「やってみます。怪盗」

「よし、決まりだ。さっそく今回のターゲットについて説明しよう」


今回のターゲットは

輝気美術館にある絵画。「ひまわりっぽいやつ」

名前の由来はゴッホのひまわりを模写しようとしたら

何故かまったく別の凄い作品が生まれてしまったらしい。

これだから天才は。

「侵入経路について説明しよう。これを見てくれ」

先輩のパソコンには輝気美術館のマップが映し出されていた。

「侵入場所は東側の天井窓。あらかじめ鍵は壊しておいた。

そこから彫刻フロアを通って絵画フロアに入る」

天井からってなんか怪盗っぽいな。

「それから絵画を盗み、盗んだ後は警備を掻い潜りながら三階の窓から隣のビルに入る。

そのビルの裏に向かえの車が来てるからそこから脱出する。いいな?」

「「「はい」」」

「じゃあ、明日の部活で」


帰り道。

空音と帰っている。

「なんか大変なことになったね」

「そうだな」

怪盗・・・か。

明日の部活までに覚悟を決めておいた方がいいかもな。

「うまくやれるかな・・・」

「なんとかなるんじゃないか?」

「うん。そうだよね。じゃあまた明日!」

「おう」

俺は家の扉を開け中に入る。

「怪盗・・・か・・・」


翌日授業後。

「やぁやぁ君が悠馬君で君が空音君だね?」

外国人が部室にいた。

「あの・・・どちら様で?」

「ボクはノワール・トム。この部の元部長デース」

この人がトムさん。卒業生ってことか。

「あぁ来てたんだね」

「変態先輩」

「へんたっ?!」

心にダメージを負っている変態は放っておいて

トムさんに視線を移す。

「えっと、今日はなんで?」

「衣装を持ってきまシタ!三人分!」

衣装・・・怪盗のか。

「あと予告状を作ってきまシタ!」

「予告状?」

「そりゃ怪盗だから予告状は必要だよね。えーとどれどれ・・・」

今宵、輝気美術館の美術品。

【ひまわりっぽいやつ】を頂きに参上します。

怪盗団ルシェルシュ〆

「うん。今回もいい感じですね、先輩」

いつのまにか復活していた変態が褒めるとトムさんは喜んでいた。

「あの・・・るしぇるしゅ?ってのは?」

「フランス語で研究という意味デース!そんなことよりも衣装デース!見てくだサーイ!

いえ!むしろ着替えてくだサーイ!!!」

「あっはい!」

俺は押し付けられたケースを持って奥の部屋に入る。

服は如何にも怪盗らしい服だった。

黒色の紳士服にシルクハット。

なんか古い・・・?

仮面は顔の左半分を覆い隠している。

仮面はつけているだけで顔が覚えれなくなるそうでとても便利である。

「あの・・・こんな感じでどうですか?」

扉を開けると着替えた空音と氷姫もいた。

空音は猫っぽい衣装?というかスカートだった。

「あれ?女だっけ?」

「違うよ!」

氷姫はトランプっぽい衣装。

スカートの渕にマークが付いている。

「ささ、着替えた事だしコードネームでも決めようか。

まぁ俺が一応考えてあるけどね」

変態が決めたのかぁ。

少しテンションが下がるが、まぁいいだろう。

「まずは氷姫ちゃん!君のコードネームは【アリス】だ」

アリス。その言葉はあの本の主人公の他に幼いを意味している

というのは本人には言わなくていいだろう。

「次!空音君。君は【キャット】だ」

まんまだな。可愛いから許そう。

「最後・・・悠馬のコードネームは・・・」

「【ルパン】デース!」

「あっ俺の役目がぁ・・・」

ルパン。世界で怪盗と言ったらその名前を誰しもが考えるであろう。

その名前を背負うのか・・・。

「あんまり気張りすぎて今日、失敗すんなよ?」

ん?今この人なんて言った?

「「「え?今日?!」」」

ちなみに変態は【クロック】。幼女は【ラビット】である。


「こちらアリス。以上なし」

「こちらクロック。OK。アリス。こっちも大丈夫だぜ」

初仕事。俺達は今回のターゲット。

「ひまわりっぽいやつ」を狙って、輝気美術館に来ていた。

「行動舞台はクロック、キャット、そしてルパン。

おとりは私とアリスでやるわ。絶対盗ってきなさいよ」

ラビット(幼女)の声援を受け東側の窓を静かに開ける。

そのまま絵画フロアを覗くと警官が10人ほどいた。

「こちらルパン。敵、約10名。銃装備。絵画を囲むように見張っています」

「こちらクロック。だいぶ怪盗っぽいな。初めてとは思えないぜ」

「いや、まぁ映画とかよく見てたんで」

「なるほどね。どおりで」

「こちらキャット。なにしてるんですか真面目にやってください。ルパンも!」

「う、ごめん」

俺は窓から二階通路に降りる。

美術館は二階まで吹き抜けになっており、壁側に通路がある。

幸い警官は一階にしか配置されなかったようだ。

通路を渡り、絵画フロアへ潜入する。

「こちらラビット!搖動を開始するわ。いくわよ!アリス!」

「はい!」

その合図と共に外から爆発音がした。

「なんだ?怪盗か?!」

「慌てるな!全員表に出ろ!」

「何としてでも守り抜くぞ!」

警官達が続々と出ていく。

残ったのは二人。

「こちらクロック。キャットと俺で抑える。ルパン?盗れるね?」

「こちらルパン。勿論」

これが初めての盗み。

「行くぞっ!キャット!」

「はいっ!」

二人が同時に警官の上に飛び降りた。

呼吸を整える。

(大丈夫だ。俺ならできる。)

隙を見て俺は絵画を回収しようとする。

「ごめんルパン!一人逃がした!」

キャットの声だ。

振り向こうとしたその時だ。

「動くなっ!そのまま手を挙げてこちらを向け!」

警官1。背後5メートル。勝てる。

「いやだと言ったら?」

俺は色々道具の中の投擲用石というシュールなものを持ってきていたので

振り向き警官に投げつける。

石が当たり、警官がよろめく。

「なっ?!」

「いまだ!キャット!」

「うん!」

キャットが警官を抑えて気絶させる。

俺は絵画を回収し階段を登る。

3階窓の前で立ち止まり助走をつける。

俺はそのまま身体で窓を割り隣のビルへ飛んだ。

キャットと変態も俺に続く。

「ルパン、キャット!ナイスプレーだったよ!さぁ、早く車へ!」

俺達はビルを降り、裏口から出る。

すると目の前に黒のキャラバンカーが止まっていた。

「二人も来てマース。早く乗ってくだサーイ」

運転手はトムさんだった。

「おかえり!うまくいったみたいね!」

「お疲れ様です」

搖動係の二人とも合流し、俺達は美術館をあとにした。


「いやぁお疲れ様!」

変態の声が部室に響く。

絵画をトムさんに預け、俺達は部室に帰ってきたのである。

「盗れてよかったぁ」

空音が安堵の声をあげる。

「当然よ!だって私がいたもの!」

幼女が誇らしげに胸を叩く。

「楽しかったかも・・・」

氷姫は少し嬉しそうだった。

「君はどうだった?」

俺は・・・。

「初めてでしたが・・・楽しかったです」

「入部の意思は決まったかい?」

入部ということは怪盗を続けるということだ。

「俺は・・・」

悩んでいても仕方ない。

今、一番やりたい事をやろう。

「入部したいです。俺をこの部活に入れてください!」

先輩達がにやりと笑う。

「ようこそ学園研究部。怪盗団ルシェルシュへ」

俺は今日から


怪盗になる。


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