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第97話 この先の予定


「……はあ、あんたら全然変わって無いな。つーかルウさん、何先に噴き出してるんだよ。せめてこいつより我慢しろよな、全く……」


「いや~、ごめんごめん。面会リストの中にカインの名前があったから、すっごく楽しみにしてたんだよね。そしたら凄く真面目ぶって挨拶するから……」


「一応、共和国の代表と王国の勇者の面会だぞ。よう、久しぶりとか声掛けられる訳ないだろ。それに真面目ぶってたのはそっちもじゃねーか」


「……全くだ。ルウ、私達はこの国の代表なのだ。他国の要人相手に失礼な真似は許されない。もっと威厳というものをだな……」


「「あんたが言うなっ!!!」」


俺とルウさんがヒュージ相手に同時につっこむ。

……ああ、なんかすげー懐かしいな、この感じ。

2人を見ると同じ事を思ったのか、今にも噴き出しそうだ。

結局俺達3人ともが笑ってしまい、落ち着くまでしばらくの時間を要した。



「……さて、いい加減話を進めよう。時間を無駄には出来ないからな」

「そうね、ヒュージの言う通りだわ。お互い暇じゃないものね」


……どの口が言ってるんだと言いたいが、ギリギリ踏みとどまる。

流石に本題に入るまでが長すぎた。

3人の、そっちだけで盛り上がって、という視線も痛い。

これ以上脱線するのは、こちらとしても望んでいないしな。


「それと、ここからは堅苦しいのはやめにしよう。もっと気楽に話してくれ」

「ふふっ、カインに敬語を使われたら、また話が止まっちゃうしね」

「……あんたら、いい加減人をネタにするの止めろよ……」


とにかく、ようやく本題に入れる。

まずは国同士の連携を確認して、共和国には主に後方支援をお願いした。


「まあ、妥当だな。うちは戦闘力はあまり高くないしな」

「ああ、その分補給を頑張ってもらう事になるだろうから、よろしくな」


実際に魔族と戦う事になったら、英雄達が上位魔族を、高ランク冒険者が中位魔族や強力な魔物を、中ランク以下の冒険者でそれ以外を相手する事になるだろう。

特に魔王や大魔族を相手にするには、英雄達が複数で戦ってやっと勝ち目が見えるといった感じだろう。

人間側は総力戦でいかなければ、どこかの国が墜ちた時点でほぼ勝ちがない。


勇者であるカレンはその中でも、絶対に倒されてはいけない人物の1人だ。

もっと強くなる必要があるし、それを支える俺達も同様だ。


「そういう訳でこの後は、この国の英雄に会いに行く予定だ」

「……どちらに先に会いに行くつもりだ、カイン?」

「……解りきってる質問するなよ。両方同時しかありえないだろ」

「……まあ、そうなるよな。すると2手に分かれるのか」

「ああ、カレンとルミラが《鉄の王》に、俺とフィリアが《森の王》に会う」


目的とバランスを考慮すれば、こういう配置にならざるを得ない。

今回ここでは、新しい装備を英雄達に依頼しにきたのだ。

カレンには防具を、ルミラには武器防具の両方を、フィリアには防具を作って貰う予定だ。


カレンは聖剣があるので防具だけで良いし、ルミラの装備も王国では最高級の逸品だが《鉄の王》による専属装備(オーダーメイド)には敵わない。

フィリアには、エルフのみが作れる《精霊の衣》を作って貰うつもりだ。

そして勇者であるカレンと、実質的なリーダーである俺が別れる事でどちらか一方に偏らないバランスを取っているという訳だ。


お互い英雄の下に向かい装備の依頼を了承してもらうというのが今回の計画だ。

しかしこの提案に、カレンとルミラから異議が申し立てられた。


「先生、それって全員一緒には行けないんですか?」


「無理だ。どちらか一方を優先した時点で、もう一方が確実にへそを曲げる」


「……だったら組み合わせを変えてはどうですか?私とお師様とか……」


「あーーー!!ルミラずるいっ!!私も先生と一緒が良いっ!!!」


「無茶いうな。作る装備を考えたら、おまえらが《鉄の王》な会わないと意味無いだろうが……」


顔を合わせて、はいお願いします、なんて簡単な相手じゃない。

作って貰うための材料集めも考えると、1月半から2月は見ないといけない。

その事を説明すると、更に強く反対された。


「……1月半から2月って、この国にいる時間のほとんどじゃないですか」


「しょうがないだろ。実際の完成にはもっと時間がかかるんだし……」


「~~~っ!!それでも、もっとお互いに会いに行ったりとかすれば……」


「……向かう先は、この国の東の端と西の端だぞ。そんな簡単なものじゃねーよ。一応、通信石は渡しておくから声でのやり取りは出来るだろ?」


そう言って、2人に通信石を渡しておいた。

通信石は魔力を流す事で、対になっているもう一方の石を通して離れた相手と会話出来るというシロモノだ。

当然俺にしか作れないし本来は秘密なのだが、ヒュージとルウさんは昔一緒に居た時に使わせた事があったので、2人に知られる分には問題ない。


「そうですよ、2人とも。我儘を言って導師様を困らせてはいけませんよ」


と、フィリアも説得に回るが


「……嬉しそうだよね、フィリア。喜びが隠しきれてないよ……」

「……ずっとお師様と一緒なんだから、フィリアは文句無いだろうけど……」


と、2人は不満たらたらな様子であった。


更にそこに追い討ちを掛ける様に


「……うわ~、カインもってもてだね。それで誰が本命なわけ?」

「この様子だとフィリア嬢が本命か?いやしかし、全員という可能性も……」


などと、本当の馬鹿(ヒュージとルウさん)2人が空気を読めなかったのか、あえて読まなかったのか真相は解らないが、火に油を注ぎやがった。



……最終的には何とか説得出来たがかなりの時間と労力を使った上に、3人が俺を除いて話し合った結果、何故か俺がカレンとルミラに贈り物をしたり、今回の件が終わった後2人きりで出掛ける事を約束させられたのだった。

その様子を見たルウさんが


「いや~、もてる男は辛いね。このっ、このっ」


とやってきたので、笑顔で額に怪我しない程度の小さな魔弾をぶち込んでおいた。

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