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第59話 和服に着替えよう


眠そうな3人も朝風呂に入り、朝食を食べたらしゃっきりした。

その後、今日の予定について話し合う。


「ヤタローさんから連絡があるまではこの宿で待機だな。今日は全員で観光しようと思うんだけど、どうだ?」


3人から特に不満が上がることもなく、無事今日の予定が決まった。


一応、荷物が盗まれないよう【固定】を付与しておいて部屋を出た。

宿にそのことを告げ、昼食は外で食べる旨を伝え宿を出た。

服装は浴衣の上に茶羽織という上着を着て、下駄という履物を履いていた。


昼まで後3時間はあるというのに、町は活気に満ち溢れていた。

他の国の人間が珍しいのだろうか、かなり視線を感じる。

加えて3人の容姿なら仕方のない事だろう。


俺はまず、昨日の店に3人を連れて行くことにした。

店に入ると昨日の女性が挨拶をしてきた。


「いらっしゃいませ。……あら、昨日のお兄さん、本当に来てくれたのね」

「……お兄さんは止めてくれ。カインって名前がある。それより、アンタはここの店員で間違いないのか?」

「正確には店主のアカネといいます。どうぞご贔屓に」


そう言って俺に微笑みかける。

背中の方から妙な圧力を感じるが、勘違いだから止めろ。


「……何だか、妙に仲が良いですね、先生」

「……昨日遅かったのは、ここに寄っていたからなんですね、お師様」

「……全く、目を離すとすぐに女性と親しくなるのですから」


俺が非難がましいことを言われるのを見て、アカネが可笑しそうに笑う。


「ふふっ、随分と慕われているんですね、カインさん」

「……アンタと一緒でからかってんだよ。それより、昨日の件大丈夫か?」

「ええ、任せて下さいな。私のお薦めでいいんですか?」

「一応、本人の好みも聞いてくれ。明らかにおかしかったら止めて欲しい」

「解りました。ふふっ、3人とも素材が良いから迷いますね」


3人の方を見て、アカネが嬉しそうな顔をする。

俺は3人に今回の趣旨を説明する。


「3人とも、この人に服を選んで貰え。自分の好みも伝えれば考慮して貰えるから遠慮するなよ。代金は俺持ちでいい」


その言葉を聞き、3人が目を輝かせる。


「本当にいいんですか、先生っ!!ありがとうございます!!」

「太っ腹ですね、お師様。う~ん、迷いますね……」

「あっちも綺麗ですし、これも良いですね。……導師様、遠慮しませんよ?」


3人の物言いに、いささか不安になりアカネに尋ねた。


「……なあ、こういう服の相場っていくらなんだ?」

「ピンからキリまでありますけど、小物も含めれば大体これくらいですね」


示された数字は、結構な金額ではあった。


「ちなみに、当店の最高の逸品はこちらになります」


それは確かに、他とは格も違えば値段も桁違いだった。


「……なあ、この金額って王国だと平民の年収より遥かに高いんだけど」

「皇国でもそうですよ。買われるのは極々一部の方だけですね」

「……多少なら良いけど、出来れば平均的な物で頼む」

「ええ、お任せ下さいな」


アカネが近寄り、3人に親しげに話しかけた。

3人の方も目移りしている様で、キラキラした表情でアカネに色々聞いている。


(……ああ、これすげー時間がかかるやつだ……)


女性陣の表情から察した俺は、さっさと逃亡を決め込む。


「俺、外で時間潰してるから1時間後に合流な」


そう言ったらアカネが真剣な顔で


「何言ってるんですかっ!最低2時間は必要ですっ!!」


と言ってきた。……ああ、そうですか。すいませんね。


2時間後に合流する事を決め、店を出ようとする。

すると、アカネが3人に何やら耳打ちすると、3人が俺の方を見た。

何か企んでるっぽいんだが、あの感じなら妙な事ではないだろう。



店を出て辺りをぶらつき、適当に他の店や茶店に入って時間を潰す。

ついでに、サカイの名物や美味しい店などの聞き込みもやっておいた。

そうする内に2時間経ったので、アカネの店に戻ってきた。


「いらっしゃいませ。ってカインさん、お帰りなさい」


俺の姿を確認したアカネが、笑顔で迎えてくれた。

その顔には、一仕事終えた仕事人の充実感があった。


「……何か凄い満足した顔してるみたいだけど、どうだったんだ?」

「ええっ!久しぶりにこんなに充実した気持ちになりましたっ!やはり素材が良いとやりがいがありますね!!」


と、興奮した様子で語っていた。


「それで、3人は何処にいるんだ?」

「ええ、あちらでカインさんをお待ちですよ」


奥の部屋に案内され、扉を開けるとそこには


「あっ、先生。……その、どうでしょうか?」

「お師様っ!あの、似合っていますか?」

「……少々胸がきついですね。導師様、いかがでしょうか?」


和服で美しく着飾った3人がいたのだった。

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