表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/224

第43話 《死者の迷宮》の外で


リッチが消滅した場所には、虹色に輝く宝玉が落ちていた。


「それが《迷宮主の証(ダンジョンコア)》ですか?」

「凄い魔力を感じますね。さすがAランクの迷宮といったところですか。」

「これが攻略の証になるのですよね?早く外に出て休みましょう。」


迷宮主(ボス)を倒し、《迷宮主の証(ダンジョンコア)》を手に入れると迷宮に魔物は出現しなくなる。

普通の迷宮ならこれでお仕舞いなんだが、この迷宮の様に瘴気の濃い場所では時間が経てば、また魔物が生まれやがては新しい迷宮主(ボス)が生まれる。


その前に瘴気を浄化して、迷宮を安全にする必要があるのだが


「…まあ、ついでにやっておくか」


俺は迷宮そのものに【結界】【拡大】【浄化】【増幅】を付与した。

魔術を打ち込んだ場所から、【結界】が【拡大】し、迷宮を包み込んだところで、【浄化】の力が【増幅】し瘴気を消し去った。


「…こんなところか。じゃあ外に出るか、…ってどうした?お前ら」


「いえ。…先生はいつも通りだなって、そう思っただけです」

「…はあっ。本来であれば、複数の神聖魔術師がいないと出来ないのに…」

「…あっという間でしたね。…この規模なら2ヶ月はかかるでしょうに…」


3人は俺に、呆れ半分、感心半分の表情を向けてくる


「……まあお前らも、純魔力を使えるようになれば、似たような事は出来るさ」


そう言いながら《迷宮主の証(ダンジョンコア)》を回収し、外へと向かうのであった。



しばらく歩いた後、無事に迷宮の外に出たのは、もうすぐ日が沈む時間だった。


「……先生のおかげで、かなり回復しましたけど、疲れたね」

「無茶をしたと思ったが、お師様に鍛えられたおかげでどうにかなったな」

「…私はもっと攻撃手段が欲しいですね。今のままでは私が遊んでしまいます」


それぞれ、感想や反省点を話し合っている。


今後の課題としては、カレンは一撃の威力を高めることだろう。

簡単なのは、武器に闘気(オーラ)や属性を纏わせるのが早い。

身体はいずれ成長するだろうから、焦らなくてもいい。


ルミラは決定力が不足している。

防御主体とはいえ、相手に脅威を感じさせなければ攻撃がカレンに集中する。

少なくとも、注意が引けるくらいの攻撃を用意すべきだろ。


そう言う意味では、フィリアも一緒だ。

今の3人は、決定的な攻撃をカレンしか持っていない。

今のままでは強敵相手では、今回のようにルミラとフィリアで相手の攻撃を防ぎ、その隙にカレンが大技を決めるぐらいしか勝つ方法がない。


(それぞれが、必殺技といえるものを1つは持つ必要があるな…)


そんな事を考えていると、上空から嫌な気配を感じた。

3人は、まだ気づいていない。


「お前達っ!!上から何か来るっ!警戒しろっ!!」


俺の声に反応して、3人は臨戦態勢を取る。

上空を見上げると、人間に似た姿で背中に蝙蝠の様な羽を生やした生き物がいた。


「……魔族。…あの感じは中位魔族か?」


そこにいたのは、見るからに軽薄そうな顔をした男の魔族だった。


「ん~?お前ら人間か?……その様子だと、ここのリッチ倒したのか?…マジで?

……ぷぷっ、ダッセー!!アイツ、人間なんかに倒されたのか。ぎゃはははっ!」


そいつは目に涙を溜め、腹を抱えて笑っていた。


3人は怪訝そうな顔をしているが、魔族の習性を知らなければ仕方ない。

基本、魔族は個人主義で強さが全てだ。一部の例外を除き魔王への忠誠心も薄い。

同族でさえ弱ければ虐げられる。他種族など、よほどでなければ気にも留めない。

あいつから見ればリッチが人間に負けるのは、獅子が猫に負けた感じなのだろう。


「~~はあー、笑った、笑った。こんなに笑ったのは何年ぶりだ?腹いて~。

アイツ『我はリッチ、死霊の王なるぞ。我を従えようなど思い上がるな』

なんて言ってさ~、生意気だから殺そうと思ったのに上に止められてさ~。

そしたらこうなってる訳だろ?…そりゃ笑うだろ、人間相手にこれじゃあ。

あんだけでかい口叩いておいて、マジうけるわ~」


魔族の男は、よほどリッチが嫌いだったのか、やたら饒舌で上機嫌だった。


やたら軽い感じに見えるが、油断は出来ない。

魔族は下位魔族なら、少々強い魔物程度に過ぎない。

しかし、中位魔族の中にはAランクの魔物を超えるものもいる。

話を聞く限り、コイツもそういう類なのだろう。


(コイツの上ってのは上位魔族か。…数は少ないけど、化け物揃いだからな)


……しかし見た目通り馬鹿だな、コイツ。余計な情報与えてどうすんだ?


今までの会話から、ここのリッチは魔族と直接の関係は無い。

コイツはリッチを倒せる力があり、上には多分上位魔族がいる。

本人の性格から考えて、ここには何らかの命令でやってきた。


この程度は推察できる。


(…そうなると、捕まえて情報を吐かせた方がいいか…)


そう判断した


「…なあ、上機嫌なとこ悪いが、お前もリッチと大差なさそうだよな?」

「……ああん。…今なんつった、人間?」

「お前ぐらい俺1人で倒せるって言ったんだ。いいからかかって来いよ」


俺はそう宣戦布告した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ