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第3話 赤の弓亭


「…ああっ!!このお肉、口の中で解けてゆく…素材の良さを存分に引き出す為、あえて味付けは塩コショウのみ、それなのに、いえだからこそのこの味!素材が喜んでいる…」


(…お前は何処の美食家だ…)


などと心の中でツッコミをいれつつ、俺とミュシャは赤の弓亭で食事をしていた。

流石に限定コースは無理だったので、普通のコースメニューを頼んでいた。

…しかし知り合って3年になるが、まだまだミュシャの知らない面があるのだな、等と思いつつ食事を進めていた。

…いや、まさかこんな面だとは夢にも思わなかったが…


まあ、それでも喜色満面で美味しそうに食べているミュシャの姿などなかなか見れるものでもない。

貴重な機会だろうから俺も食事を楽しもう。


「しかし、ここの料理は相変わらず美味いな。どちらかといえば高級料理はあまり口に合わないんだが、ここの料理は本当に美味い」


「ですよねっ、ですよねっ!!他のお店の料理も美味しいですけど、このお店のように素材の良さを十二分に引き出すお店ってあんまりないんですよ!!素材の良さを信じ、あえてシンプルに。それゆえにごまかしがきかないっていうか…」


「お、おう…」


目の前で料理について熱く語り続けるミュシャに、若干引きつつそれでも


(まあ、これだけ美味そうな食ってくれたならオゴった甲斐もあったってもんだな。)


そんなことを思いつつ俺たちは食後のデザートまで楽しむのだった。


「…はあー…美味しかったー…幸せだよー…お仕事がんばってきて良かったよう…」


「満足して貰えたようで良かったよ。さて、俺のセンスの採点はどうかな?」


「文句なしっ!!百点満点!!花マルまであげちゃいます!!よっカインさん男前!!」


うん、こういうノリも良さもミュシャの良い所だろう。

一緒に居ると楽しい気持ちになれる。

流石に赤の弓亭といえど、限定コースでない普通のコースはそれなりのお値段がする。

しかし普段見られない貴重なミュシャも見れたし、料理そのものにも満足している。

この金額を払う価値は十分にあったと言えるだろう。

それに他の料理店では、服装がどうの、マナーがどうのとうるさいのだが、この店はその辺りがかなり緩い。

それもあって俺はこの店が気に入っているのだ。


「それじゃ、カインさんご馳走様でした。そろそろお店を出ましょうか?」


…ああ、こいつ食事に夢中になりすぎて、伝言ある事忘れてるな…


「…いや、俺に伝えなきゃいけない事があるんだろ?」


生暖かい目を向けてそう言ってやると、ミュシャは、ハッと思い出したようで目を泳がせながら


「え、ええっ、そうですっ、覚えていますよっ、忘れるハズないじゃないですか…」


などとのたまった。


「…フーン…」


と俺がジト目を向けていると、ダラダラと汗を流しだした。

しかし覚悟を決めたのか俺に向けて、片目を閉じ舌をちょっとだけ出し、自分の頭をコツンと叩き


「…てへっ…」


「うん、可愛い。でも伝言忘れてたのはマイナスな」


「ごめんなさーーーーい!!」


などと見事なオチまでつけてくれた。


「…えっと、それで伝言なんですが、ギルドマスターから戻ったら至急マスターの部屋に来る様にとの事です」


「…帰って早々、何が悲しくてあの筋肉ダルマに会いにいかにゃならんのだ…」


…あー、聞かなきゃよかった。

せっかくの楽しい気分が一瞬にして台無しだ、どう考えても厄介事だろコレ。


「…聞かなかったことにしていい?…」

「駄目です」


ソッコー斬り捨てられる。


「ほら、先延ばしにしても問題は解決しないんですから。私もギルドに帰るところですし一緒に行きましょう?」


ド正論を叩き込まれ、俺は憂鬱な気持ちを抱え、ミュシャと一緒に冒険者ギルドへと向かうのだった。

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