表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/224

第38話 私だけの呼び方を


「ペンダントの飾りの部分を握り、変身後の姿を想像し使用者制限(キーワード)を唱える」


と、フィリアに魔道具の使い方の説明が終わった後


「それで、使用者制限(キーワード)はどうする?」


そう尋ねたところ、


「それでは、《リア》にして頂けますか?」

「了解。それじゃ【条件式】を付与するぞ」


こうしてフィリアにペンダントを渡した。

渡されたフィリアがペンダントを見て、不思議そうに尋ねた。


「あの、カイン様。もしかして、この赤い石は魔晶石ですか?」

「ああ、魔晶石を真銀(ミスリル)で囲んでるんだよ。…石の質が悪そうなのが不満か?」

「い、いえっ。…ただこの石の質で、付与が複数かけられているのが不思議で…」


まあ、そうだろうな。この魔晶石は透明度が低い赤色で、質が悪そうに見える。

本来、魔晶石は透明度が高いほど、質が高く魔力量も多いとされている。

色は魔力量によって変わり、少ない方から順に黒、青、緑、黄、赤になる。

つまりこの石は、質はイマイチだが魔力量は多い石となるのだが…


「心配するな。それは表面を覆ってるだけだ。本体の石は特別製だ」

「…特別製、ですか?」

「ああ、実はな…」


こうしてフィリアに説明してやった。


俺は大量に買ったクズの魔晶石を、まず【精錬】で不純物を取り除き質を高めた。その後、大量に出来た小さい魔晶石を【結晶化】で1つに纏めた後、【圧縮】して今の大きさにする。最後に【加工】を施しペンダントの形にした。

本体の石は一目で特別製と解るので、偽装の為、質が低そうに見せている。


「…【圧縮】をかけたのは何故ですか?」

「以前作った時は【結晶化】したものを、今の大きさに【加工】したんだけど、

付与したとたん壊れたんだ。かといって石を大きくしすぎると身に着けづらい。

それで、【圧縮】することで問題解決したわけだ」

「…解りました。…魔晶石も、かけられた付与魔術も特別なのですね」

「ああ、だから知り合いに、魔道具をあまり作るなと言われてる」

「…でしょうね。私でもそう言いますよ…」


眉間を押さえながら、首を横に振りながら言う。

……揃って酷い事言うよな。人を何だと思ってるんだ、コイツら…


「まあ、王都に帰ったら使ってみろ。2人にも同じもの渡しとくから」

「……私だけでは無いのですね」

「…なんで不満げなんだよ?お前だけだと、一緒に出かけられないだろ?」

「…それは、そうですが…」


…人が気を利かせて3人分作ったのに。…何が気に入らなかったんだ?


「…はあ、もういいです。カイン様がそういう方なのは解っていましたし…」

「…本気で訳がわからん。…どうしろってんだよ?」


俺がそんなことを言うと、少し考えた後、悪戯っぽく笑い


「それでしたら、カイン様の事を、導師様とお呼びしてもいいですか?」


と、言ってきた。


「…何だそりゃ。呼び方変えるのに、何か意味があるのか?」

「……だって、2人だけずるいじゃないですか。特別な呼び方で…」

「特別って、先生と、お師様ってやつか?」

「そうです!ずっと私だけ仲間はずれみたいで…」


そう言って頬を膨らませ、不満をアピールしている。


…まあ、少し前のフィリアでは考えられない態度だ。

こういうのも息抜きになるのなら、呼び方ぐらいは好きにさせていいだろう。


「…解ったよ。好きに呼んでいい」

「……はいっ、導師様っ!」


そう言って、少し照れた様な微笑を、俺に返すのだった。




「思ったより長く話してたな。そろそろ戻るか?」

「ええ、それでは行きましょう。導師様」


広場まであと少しというところで、フィリアはいきなり腕を組んできた。

その顔は明らかに楽しんでいるのか、とてもニヤニヤしていた。


「…何をやってるんだ、お前は…」

「いえ、今日のお礼をと思いまして…嫌でしたか?」


一層強く腕に力を入れ、その豊満な胸を押し付けてくる。

…俺も男だ。嬉しくないわけは無い。けどこの状況を2人に見られるのはまずい。


「…いいから離せ。2人に見つかるとうるさいだろ」

「ふふっ、困ってる導師様を見るのも、なかなか楽しいですねっ」


(…コイツ、完全に調子に乗ってやがるな…)


どうするべきかと考えていたら、広場の方から2人が歩いてきた。


「ああ~!やっと見つけた、2人とも~!」

「…ううっ、私たちを置いて、どこかに行ってしまったのかと…」


…まずい。今の状況を見られたら、何言われるか解らない。

…そう思っていたが、2人の様子を見ると明らかにおかしい。

顔が赤く、ふらふらしている。……そして、酒臭い。


「…お前らっ!酒飲んだのかっ?」


「えへへ~、今日はめでたい宴だからって~、ちょっとだけって~」

「…ぐすっ、最初は、断っていたのですが、ずっと断るのも悪くて…」


…どうやらカレンは良い感じに酔って、ルミラは泣き上戸のようだ。


そうしていると、俺の腕を抱えているフィリアを見つけ


「…ああ~!フィリアだけずるい~!私もする~!!」

「…ううっ、私だけ仲間はずれはいやです。お師様ぁ~~~!!」


そう言ってカレンが反対の腕に、ルミラは俺の身体に抱きついてきた。


「…えへへ~、先生~。先生~!せんせいっ~~!!」

「…ぐすっ、置いていってはいやです、お師様ぁ~~!!」

「ふふふっ、楽しいですねっ、導師様っ!!」


3人に抱きつかれるという、混沌とした状況の中で


「…コイツらに酒飲ませたの誰だっ!!出てきやがれ~~!!!」


俺の叫びが空しく、夜空に木霊するのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ