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第2話 王都へ帰還 


近くの村から馬車に乗り、王都へと戻ったのは5日後の昼前時だった。

丁度昼メシ前だった事もあり、冒険者ギルドに向かう前に腹ごしらえをしておこう。


(うーん、今日は何食べるかな?久しぶりに屋台でがっつりいくか?それともアロン亭の日替わり定食にするか?あー、でもたまには豪華に赤の弓亭の限定コースもいいかな…)


王都での食事といえば自分で作るか、そうでなければ主に屋台か、庶民的な食事処か、高級料理店、あとは酒場などでの外食が一般的だ。


屋台は食材を売っている所もあれば、調理済みの料理や甘味、果物などを売っている所もある。

値段は総じて安めで懐にも優しい。

ただ、店によってあたりはずれが大きく、同じ料理なのに別物にしか思えない味のところもある。


食事処は平民向けの料理を出す所だ。

屋台が一品料理なのに対し、メインとなる一品にパンやスープが一緒に出て来る定食などがある。

値段も屋台よりは高めとはいえ、パンやスープもつくとなればお得感はある。

味も屋台よりも本格的な所が多いし、酒も飲める。

特にアロン亭の日替わり定食は、この値段でこの味と量を出す店はなかなかない。

庶民からは大人気の名店だ。


料理店は、なかなか庶民が気軽にとはいかない場所だ。

値段も高く庶民からすれば、たまの贅沢として気合を入れていくような所だ。

しかし味のほうは、全ての店がとは言わないが流石に美味い。

そもそも材料からして違うのだろう、それを高い技術で調理するのだからそれは美味いはずだろう。

と言ってもこんな所を頻繁に利用するのは、貴族様か金持ち連中ぐらいだ。

そんな中で赤の弓亭はやや変わった店で、味は確かなのに昼食時のみだが数量限定で、本格的な料理をかなりの格安で提供していた。

これが庶民からは大人気で、本来はもっと高額なはずの料理がこの値段で食べられるとあれば、それを求めて行く人間が多いのも納得である。

それにあの店は、他と違って気取ったところがないのも人気の理由だろう。


Aランク冒険者である俺は、正直そんなに金に不自由はしていない。

料理店に毎日通うぐらい、なんでもない位には稼いでいる。

ただなんというか、あの雰囲気が苦手というか、格式ばった所が嫌いというか、メシぐらい好きに食わせろと思ってしまうのだ。

そういう意味では、屋台や食事処でのほうが俺の性には合っているのだろう。


(さーて、どうすっかねー?)


などと考えていたら、前方に見知った顔を見つけたので声をかけた。


「おーい!!ミュシャー!!」


呼びかけられた女性がこちらに顔を向け、俺を見つけると笑顔でこちらに駆け寄ってきた。


「ああっカインさん。王都に戻られていたんですね」


「ああ、ついさっきな。そんでギルドに行く前にメシでも食おうと思ってたら、ミュシャをみつけてな…」


「そうだったんですか、お帰りなさい、それで依頼のほうは…?」


「いや、流石にあのレベルの依頼は失敗しようがないだろ…」


「ですよねー、流石はカインさんですね!」


俺と話しているのは、ミュシャという女性で冒険者ギルドの受付嬢だ。

たしか年齢は23歳だったと思うが、以前確認しようとしたら


「…あははー、カインさん?女性に年齢を問うのはマナー違反ですよー…」


などと、なかなかに怖い笑顔を向けられたので定かではない。

狼の獣人で、結構な美人さんなのでギルドでは看板娘のような扱いだ。

野郎の冒険者達からの人気は高く、笑顔が可愛く心が癒されるそうだ。

ギルドにおける俺の担当でもあり、この王都を拠点にした3年前からの付き合いである。


「それじゃカインさんもお昼まだなんですね。…もし良かったら一緒にどうですか?」


「…俺はかまわないけど、いいのか?」


「はいっ!丁度お伝えしたい事もありましたので」


「じゃあ行くか、…ちなみにミュシャは何を食べるつもりだったんだ?」


「ふふっ、内緒です。ここはカインさんにお任せします。センスの見せ所ですよ?」


そう言って笑顔を向けてくるミュシャ。

ああ、これは完全に俺のおごりコースだな。

流石にいつも冒険者を相手にしているだけあってなかなかにしたたかだ。

…まあいっか、いつも世話になってるし、ここで断るのもかっこ悪いしな。


(んー、ミュシャだったら屋台やアロン亭でも文句は言わないだろうけど…ここはちょっと気張りますか。限定コースがあればよし、なければ普通のコースだな)


こうして俺はミュシャと一緒に赤の弓亭へと向かうのであった。

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