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第28話 ルミラの不調


初の実戦を終え王都に帰還し、ギルドへ報告に行く。


「…3人とも落ち込むな。最初の実戦にしては戦えた方だぞ」


「…いえ、ですが模擬戦ならもっと上手く立ち回れていたのに…」

「…情けないです。あんなに鍛えて頂いたのに…」

「…良い所もあったのですが、反省点も多いですから…」


…まあ、本来の実力が発揮できればBランクの魔物でも勝てるだろう。

ただ、その本来の実力が発揮する、というのが実戦では難しい。

結局は数をこなし、経験を積む事でしか解決されない問題だ。


「…気にするな、と言っても無理だろうけど、気持ちは切り替えろよ。

明日以降も依頼をこなしていくんだからな」


そう言って、冒険者ギルドに入っていく。

受付に向かい、ミュシャに報告をする。


「よう、ミュシャ。依頼の報告に来たぞ」

「…あの、カインさん?何でここにいるんですか?」

「だから依頼の報告。フォレストウルフ退治してきたぞ」

「…迷いの森まで片道2日は掛かりますよね?依頼受けたの今朝ですよね?」

「…まあ、色々あってな。これが討伐証明部位。確認してくれ」


疑いの目を向けながらも確認作業を行う。


「…ほんとに討伐してる。…あの、後ろの3人は何で落ち込んでるんですか?」

「ああ、初の実戦だったんだが、結構な失敗をしてな…」

「…ああ、洗礼を受けたんですね。…ていうか初実戦でフォレストウルフ退治?」

「…いけると思ったんだけどなー」

「…いけるいけないじゃなくて無茶ですよっ!何考えてるんですかっ!!

…はあー、もうっ、そういう大事な事はちゃんと言って下さいよ…」


ミュシャが怒り半分、呆れ半分の声をあげる。


「実力的には足りてるんだけどな。…まあ、経験不足だな」

「…色々突っ込みたいところはありますが、…そんなに酷かったんですか?」

「んー、全体的には良かった。けど最後にやらかしてな…」

「…初実戦でフォレストウルフ相手なら十分凄いと思いますよ、それ…」


そんな話をしている内に精算が終わった。

ミュシャに別れを告げ、3人の所に戻る。


「ほら、今回の報酬だ。必要経費は取ったから後は3人で分けろ」


「…こんなにあるんですか。…でも先生の分は?」


「俺は今回、ほとんど働いてないから要らない。3等分しろよ」


「…私は受け取れません。…2人で分けるか、私の分はカイン様に…」


「…アホか。お前らがパーティーとして戦って得た報酬だろうが…」


「…そうですよ、ミラ。自分1人で失敗を背負わないで下さい…」


…ルミラの落ち込みようが酷いな。正直あのミスは叱られて当然だったし、

反省する必要があるが、ある意味それを忘れる図太さも必要だ。

そういう傾向は見えていたが、ルミラは気持ちの切り替えがまだ下手だ。

…今回の事が尾を引かなければいいのだが…


…その懸念は残念な事に当たってしまった。

翌日の依頼で迷いの森と同じくらい離れている、風の丘に向かった。

ここで飛竜(ワイバーン)を退治するのだが、とにかくルミラが精彩を欠いた。

昨日のミスが原因である事は明らかだ。

探索でも単純なミスを繰り返していたが、重症なのは戦闘時だった。


「っ!ルミラ!!防いでばかりじゃなく反撃しないとっ!!」

「…解ってるっ!…けど…」

「…ルミラは防御に専念して下さい。魔術での遠距離戦でいきましょう…」


飛竜(ワイバーン)は空を飛び、火球を吐いて攻撃してくる遠距離タイプの相手だ。

3人なら遠距離戦でも押し切れるが、距離を縮めるのが飛竜(ワイバーン)戦の基本だ。

いかに地面に近づいた時、決定的な攻撃を加えられるかが鍵となる。


本来であれば、ルミラが接近してきた飛竜ワイバーンの攻撃を受け止め、止まった一瞬の隙を

3人で攻撃するのが最善なのだ。

しかし、今のルミラは飛竜(ワイバーン)の攻撃を防いだ後、素早く攻撃に転じる事が出来ない。

どうしても防御の後、一瞬躊躇って攻撃が遅れてしまっていた。

結果、効率の悪い攻撃となってしまっていた。


それでは消耗が激しいと判断したフィリアは、遠距離戦に切り替えていた。

カレンも攻撃を機動力を奪うものに切り替えていた。

2人は昨日の反省を生かし、ちゃんとルミラのフォローをしていた。

…ただルミラだけが、昨日のミスをいまだに引きずっていた。


飛竜ワイバーンを倒したのは、俺が想定した時間を1時間以上越えてからだった。


「…ルミラ…」

「………ごめん……私……」

「…誰にだって調子の悪い時はありますよ。次、頑張りましょう?」


…フィリアの言葉も、今のルミラには届かない。

昨日以上に、苦痛に満ちた表情をルミラはしていた。

このまま続けていても、状況が改善することはないだろう。


(…やりたくは無いけど、荒療治が必要かもな…)


俺は覚悟を決めて、ルミラの問題を解決するとそう決意するのだった。

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