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第26話 迷いの森へ


俺たちはミュシャから薦められた依頼を受け、向かった先は


「…あの、先生、ここって…」

「乗り合いの馬車で行くのでは無いのですか…」

「…立派な馬車ですね。馬も良い毛並みですし…」


そう、実は今回クローディアとも相談して、専用の馬車を購入した。

乗り合いの馬車では余計なトラブルが起きかねないし、移動範囲も制限される。

何より、俺がいるのなら移動速度も、範囲も段違いに出来る。


「これからは移動にはこの馬車を使う。3人とも乗り込め」


俺は御者席に着いて3人を促す。


「先生、馬車の運転が出来るんですか?」


「…昔、冒険してた時に知り合いに習ったんだよ…」


「…何故、そんな遠い目をされているのですか?」


「…いや、あんまり良い思い出じゃないんでな…」


「…お聞きしない方がよろしそうですね。…まあ!車内も立派なつくりですね!」


…俺が御者が出来るのは、筋肉ダルマにも負けない疫病神のせいだ。

あいつは俺にとって、確かに利益にはなるが被る不利益の方が遥かに大きい。

係わり合いになりたくない人間の内、3本の指に確実に入る。


(…でも今後の事を思えば、確実に絡んでくるんだよな…)


…いきなり憂鬱な気分になったが、気持ちを切り替える。

馬車は2頭立てで車内もしっかりと作られている。快適に過ごせるだろう。

本来なら相当目立つが、そこは幻術の出番だ。

馬車の外観も馬も幻術で平凡を装い、出発の準備を整える。


「それじゃ、出発するぞ。街道に出たら飛ばすから注意しろ」


そう言ってまずは街道を目指す。

目的地は迷いの森。王都から乗り合い馬車で2日の距離だ。

それを1日で往復しようというのだから、他人が聞いたら呆れるだろう。


街道に出た後、まずは馬車に【衝撃吸収】【転倒防止】を付与し、

馬に【疲労軽減】【頑健】【持久力上昇】【脚力上昇】を付与した。


「さあ、出発だ!しっかり掴まっておけよ!」


走り始めた馬車が、数瞬後にとんでもない速さで走り出す。

鍛えられた馬の全力並みだ。


「「「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」」」


まさかこんな速度が出るとは思わなかったのだろう。

3人が仲良く悲鳴をあげていた。

…一応馬車にかけた付与魔術の為、馬車が大きく揺れる事は無い。

馬の方も付与魔術のおかげで、快調に飛ばしている。

これなら目的地には予定通りに到着出来そうだ。


…昼前には無事迷いの森に到着したのだが、3人はやたらとぐったりしていた。


「…お前ら、しっかりしろよ。これからは毎回こんな感じだぞ」


「…毎回、こうなんですか…先生…」

「…帰りもこうなのか…慣れるしかないのか…」

「…流石に死ぬかと思いましたね…生きた心地がしませんでした…」


「ほら、そろそろしゃんとしろ!遊びに来た訳じゃないんだぞ!」


そう言って3人に今回の依頼を、再度確認させる。


「今回の依頼は、フォレストウルフの群れの討伐…」

「推定で20頭前後。その内の一頭ボスと見られる個体が存在…」

「特徴は素早く集団で攻撃してくる。警戒心も強く弱い所から狙ってくる…」


…事前に教えた特徴も忘れて無いようだ。

俺は馬に【睡眠】を、そして馬車を中心に【防御結界】を付与しておいた。


「よし、それじゃ探索から始めるんだ。俺は手を出さないから自分達でな」


「はい…えっと、フォレストウルフは迷いの森の中心部が縄張りで…」

「…この森では最高のCランクの魔物。群れになると更に危険度が増す…」

「縄張り意識が強く、踏み込んだものには容赦が無い、でしたね…」


…うん、これなら油断しない限りは大丈夫そうだな。

ちなみに3人にかけた幻術は、ここに着いた時点で解除した。

3人の感覚に狂いを生じさせない為だ。

そして俺は【認識阻害】と幻術で姿を隠し、3人から少し離れた。


途中出てきた他の魔物を狩っている内に、森の中心部に辿りついた。

すると、周囲の茂みから複数の魔物の気配を感じた。

離れた所から遠吠えも聞こえる。


「…います。…姿は見せませんね…」

「…仲間が集まるのを待っているのだろう…先に仕掛けるか?」

「…森の中では相手が有利です。…少し開けた場所へ移動しましょう」


そう言うと、まずはカレンが牽制の【ライトアロー】を茂みに打ち込んだ。

その後、急いで後退。開けた場所まで移動した。


待ち構えた3人の前へ、5頭のフォレストウルフが姿を現した。

先ほどの【ライトアロー】が当たったのか、1頭負傷していた。


「ぐるるるるぅぅぅ!!」


唸り声をあげながら、フォレストウルフが連続で襲い掛かって来る。


カレンはその内の1頭を切り捨てた。

ルミラも2頭の攻撃を捌きつつ、1頭を槍で貫いていた。

そしてフィリアは1頭を【シールド】で防ぎ、もう1頭をメイスで倒した。


残った2頭が距離を取り唸っていると、奥から新しく4頭が加わった。

それを見て、カレンとルミラを前にした逆三角形の陣形をとった。


再び襲い掛かろうとしたが、その前にフィリアが【マッドプール】を唱えた。

途端にフォレストウルフ達の足元が泥に変わり、足を取られた。

そこへ貫通力の高い【ホーリーランス】【フレイムランス】が飛んできた。

一気に残りを殲滅した所で、再び奥から15頭ほど現れた。

その中には一回り身体が大きく、明らかに格の違う狼がいた。


「…あれが、この群れのボス!」

「…先ほどとは空気が違うな…」

「…2人とも、油断しないで!他の狼も雰囲気が変わりました!」


…フォレストウルフはボスが率いてこそ真価を発揮する魔物だ。

いよいよ本当の意味での戦いが始まる。

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