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第24話 新しい関係


2人が泣き止むまでしばらくかかったが、泣き止んだ後


「…勇者さま、ごめんなさい。もう父さん達が悲しむような事はしない。

…僕も父さん達のように優しくて、強い人間になるんだ」


そう、憑き物が落ちたような顔でアルトは言った。

…これならもう大丈夫だろう。今のアルトならそう思えた。

そんなアルトをカレンは嬉しそうに見ていた。


アルトと別れ、カレンを家まで送る途中、少し前を歩くカレンが振り向き


「…先生、私、頑張りますね。あの子に言った事を嘘にしたくないから…」


俺の方を真っ直ぐ見据え、強い瞳でそう言った。


「…ああ、頑張れ。…つーか、それより先生ってなんだよ?」


「自分で言ったんじゃないですか。…私の先生だって…」


そう言って不満げに唇を尖らせる。


「…先生みたいなもの、だろ。…まあ、お前がいいならそれでいいけどな」


「はい、それではこれからはこうお呼びしますね、…先生…」


「はいはい…」


俺はカレンと話をしながら、ゆっくりと家路に着いた。


「…あの、先生?…こんな事を聞くのは無神経かもしれないのですが…」


「…俺の過去の事か?」


「…はい、私が聞いて良い事ではないかも知れませんが…」


「…聞いて面白いものでもないぞ?」


「それでも、聞きたいんです。…もっと、先生の事知りたいんです…」


「…何処にでもある話だよ。争い事なんてめったに無い小さな田舎の村がいきなり魔族に襲われたってだけだ。…気を失ってた俺が目を覚ますと、村は跡形も無くて人も、建物も何も無い荒野になってたんだ」


「…先生…」


「1人生き残った俺は、師匠に拾われてそこからは師匠と2人、修行の日々だ」


「…先生のお師匠様って、どんな方なんですか?」


「…詳しいことは内緒だけど、一言で言えば鬼だったな…」


「…鬼、ですか…」


「ああ、当時5歳で戦う方法なんて知らない俺に、いきなりナイフだけ渡して

森に放り込んで一週間生き残れ、ってやるような師匠だぞ」


「…それは、なんと言いますか、凄い方ですね…」


「…まあ、師匠からすればお荷物でしか無かったろうからな。その程度で死ぬならそこまでだって考えだったんだろうな。

生き残ってからは……あれ?そんなに扱いは変わらなかった様な気が…」


「せっ、先生っ!も、もう十分ですからっ!思い出さなくて良いですから!!」


そんな事を話していると、あと少しで家に着く所まで来た。

家に向かおうとした俺を、カレンが呼び止めた。


「…先生。…もう少しだけいいですか?」


「…どうした、カレン?」


「先生にお礼を言いたかったんです。今日は誘って頂きありがとうございました。私の知らないたくさんの事教えて頂きました。それにこんな素敵な贈り物まで…

本当にありがとうございます」


「…あー、好きでやった事だから気にしなくていいぞ…」


「…それでもです。…それに、アルト君との事です。先生が居て下さらなかったら

きっと私は今でも、思い悩んでいたでしょう。…本当にありがとうございました。

…私もアルト君も、今こうしていられるのは、全部先生のおかげなんです」


「…大袈裟だよ。俺はお前の背中を少し押しただけだ」


「…私には、たったそれだけの事がとても大きかったんですよ。…ねえ、先生。

もしも私がどうしても助けて欲しいことがあったら、また助けてくれますか?」


「…ああ、もしそんな事があれば、絶対に力になってやる…」


「…約束、ですよ、先生…」


そう言って嬉しそうでいて、泣きそうな顔で微笑んだ。


そうして家までたどり着き、今日の出来事は終わるのだった。




…となれば良かったのだが、最後に一騒動あった。

家の前ではクローディアはともかく、ルミラとフィリアも揃っていた。


「…何してんだ、お前ら…」


「そろそろ帰る頃かと思って、出迎えをな…」

「…その、今日の事が気になりまして…」

「お二人にお話を聞かせて頂ければと…」


…コイツら暇だったんじゃねーだろーな…


「…問題なかったよ。出かけて気分転換したし問題も解決した。なあ、カレン」

「…はいっ、先生のいうとおりですっ!」


「「「…先生?」」」


「…あー、なんかそう呼ばれるようになったんだよ…」

「そ、そうですっ。べ、別に変な意味じゃ無いんですっ!」


顔を赤らめ、ドモるカレン。…それ、絶対勘繰られるぞ。


「…なにか出かける前より、距離が近くなっているような…」

「…昨日までとは、明らかに雰囲気が違う、違いすぎる…」

「…カレン?その帽子、今まで見た事が無いのだけどどうしたのかしら…」


「ちっ、違うの!そうじゃないの!本当になにも無かったの!

こっ、この帽子は、先生が贈ってくれたものだけど、深い意味はないのっ!!」


…カレン、お前、それは何かありましたと言ってるも同然だ…


「「「………」」」


無言でジト目を向けてくる3人。

そこにテンパったカレンが更に油を注いだ。


「…そうだっ!みんなにお土産があったの!とっても美味しい蜂蜜パイでね…」


そう言って持っていたバッグから取り出そうとした時、


「「…あっ…」」



俺とカレンがハモる中、バッグの中から腕輪(ブレスレット)が落ち、3人の方へ転がっていった。


「…うん?これは、腕輪(ブレスレット)、か…」

「…あれ、このデザインって、まさか…」

「…連理の枝、ですね。…2人とも、説明して頂けますか?…」


…終わったな…知らない事を祈るばかりだったが、届かなかった様だ。


…その後、俺とカレンは説教と言う名の事情聴取を2時間ほど受けた。

…懸命に事情を話した結果、有罪は免れないが情状酌量の余地あり、

執行猶予が妥当との判決を受けるのだった。

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