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第20話 カレンとデート?


なんとかカレンを連れ出し街へ向かう。

昼食前に商店街でも見て回るつもりだったが、いきなり予定が狂った。

まずは腹ごしらえをして街を見て回ろう。


「…ああ、そうだカレン。今日は俺を呼ぶ時は様を付けないように。

後お前が勇者だってばれたら騒ぎになるからお前の事はレンって呼ぶぞ。」


「…ええっ!ど、どうしてですか?」


「いや、様付けなんかしたら平民じゃないってばれるだろ」


「で、ですが、どうお呼びしたら良いか?」


「…普通にカインでいいだろ。まあ、無理ならカインさんで…」


「…それでしたら、カインさんとお呼びしますね…」


「よし、それじゃまずは昼食だ。行くぞ、レン」


「はっ、はいっ!カインさんっ!!」


こうして俺達は街へと向かっていった。

俺が向かった先は、料理店でも食事処でもなくまさかの屋台だった。


「あ、あの、こちらですか、カインさん?」


「ああ、お前は初めてだろ、こういう場所は?」


「…はい、来たことはありません」


「よし、じゃあ気になったものから食べてみるか。何が良い?」


「…え、えっと、じゃああの大きなお肉のお店に…」


そう言ってカレンが指差したのは、俺もよく行く人気店だった。

焼いた肉の塊を削ぐように切り落とし、野菜と一緒にパンに挟む料理だ。

こいつ、なかなか見る目があるな。


店の前に並び、親父さんに声をかける。

馬鹿な掛け合いをしながら、2人前の料理を注文し受け取る。

久しぶりだがやっぱり美味そうだ。


「ほら、買ってきたぞ。レン」


「あ、ありがとうございます。あの、お幾らでしたか?」


「今日は俺が誘ったんだからいらない。…まあ、食べてみろよ」


「は、はい、頂きます。……っ~~!!カインさん!!美味しいですっ!!」


公爵家では絶対に出ないような味付けの料理だが、口に合ったようだ。

昨日までの沈んだ顔じゃなく、カレン本来の明るい表情だった。


「そっか、良かったな。…どうだ、まだ食えそうならお勧めがあるんだが…」


「お願いしますっ!!」


「解った。じゃあ食い終わったら買いに行こう。」


「はいっ、楽しみにしてますね!!」


その後、俺のお勧めの焼きたての蜂蜜パイを食べさせたら、随分と気に入ったのか御代わりした上にお土産分まで買っていた。

…それは、本当に久しぶりに見るカレンの笑顔だった。


「よし、腹ごしらえも終わったし、商店街にいってみるか」


「…商店街ですか?あの、何か必要な物でもあるんですか?」


「いや、目的も無くぶらつくだけ。結構変わった物もあって面白いぞ」


「…そうなんですね。…解りました、行きましょうカインさん」


こうして俺達は、商店街を目指し歩いていたのだが


「…あの、カインさん?何故かやたらと視線を感じるのですが…」


…うん、これは俺が悪かった。カレン程の美少女が注目を集めないはずが無い。

せめて、少しでも顔を隠せる物があれば、そう思っていたら


「っ!!レンッ!丁度いい、あの店に入るぞっ!!」


「えっ、ちょ、ちょっと、カインさん?」


カレンの手を引きながら、俺は偶々目に入った服屋に入っていった。


「いらっしゃいませ、お客様。本日は何をお求めでしょうか?」


店に入って、直ぐに店員が声をかけてきたので、


「ああ、この娘に似合う帽子が欲しいんだ。お勧めを見せてくれるか?」


「…これはお美しい。こちらの方に似合う物となれば…少々お待ち下さい」


そう言って、店員は帽子を取りに行った。

店員を待っていたら、隣のカレンが恥ずかしそうに声をかけてきた。


「~~っ、あ、あのカインさん、…その、手を…」

「…ん?手って…ああっ、悪いっ忘れてたっ」


この店に入るのに、カレンの手を引いたのだが今まで忘れて繋ぎっぱなしだった。

慌てて手を離し謝った。


「すまんっ、本気で忘れてたっ。嫌な思いをさせて本当にすまないっ」

「い、いえっ、大丈夫です。平気ですから。嫌な思いなんてしてません」

「…いや、でも…」

「本当に平気です。…でも、男性にあんな風に手を引かれたのは初めてなので、

少し胸がドキドキしています…」


少し照れながらはにかみ、そんな事を言ってくるカレンが大人びて見えた。

そうしていると店員が、帽子を持って帰ってきた。


「お嬢様には、こちらがお似合いかと思います」


そうして差し出したのは少し大きめの麦藁帽子。青いリボンが飾りについている。

上品な仕上がりで、今日のカレンの服に確かによく似合いそうだ。


「…レン、この帽子を被ってみてくれ」

「…はい。…あ、あの、どうでしょうか?」


帽子を被り、こちらを向いたカレンは少し不安げに問いかけた。

…俺の目には、そこに一枚の絵画があるように感じられた。

結局、俺は


「…すごく、よく似合ってる…」


なんていう、捻りの無い事しか言えなかったのだが、それでもカレンは


「っ、ありがとう、ございますっ。…凄く、嬉しいですっ…」


なんて恥ずかしげに、でも嬉しそうにお礼を言うのだった。


当然、この麦藁帽子はカレンにプレゼントした。

もはや俺には、この帽子がカレン以外が被っている姿が想像出来なかったし、

何より帽子を贈った時の、カレンの幸せそうな表情が俺の行為は正しかったのだと確信させた。

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