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第202話 《君主》との対面

残り7話です。


扉を開きガミジンに促され、部屋の中へと入ってゆく。

かなり広い部屋の奥の方に、一段高い玉座に座っている魔族がいた。

そしてその左右には、4人の魔族が(かしず)くように控えている。

4人は明らかに上位魔族で、それを従えている玉座の魔族がベリアルだろう。


「ご主人様、ご命令通りお客人をご案内させて頂きました」


ガミジンが玉座の魔族に一礼しながら、そう告げると


「まあ、お前ならそれくらいは当然だろう。もういい、下がっていろ」


ベリアルは労いの言葉も無く、ガミジンを自分の斜め後ろに控えさせる。

そんな扱いにも関わらず、ガミジンは不満そうな顔もせず素直に従っていた。

そのやり取りが終わった後、左右に控えていた上位魔族の1人が俺達に話しかけてきた。


「ご苦労であった。貴殿らの奮闘は配下の者から聞き及んでいる。故に人間の身でありながら、こうして主に目通りが叶ったのだ。感謝するが良い」


と、思いっきり上から目線で言ってきた。

外見的には20代の後半の男で、しっかりと鍛え上げられた身体と身に纏う空気で只者じゃない事は解る。

他の3人も中年っぽい男、20台前半の若い男女といった感じだが、男と同じ様な空気を纏っていた。

そしてそいつらは、どう見ても俺達を歓迎している雰囲気じゃなかった。


まあ、普通明らかな敵を迎え入れてご機嫌な奴はいないだろう。

そういう意味ではベリアルは、よほど自分の力に自信があるのか、それともただの馬鹿なのかのどちらかだろう。

後者なら楽なのだが、ベリアル本人の雰囲気とガミジンを含めた5人がどう見ても馬鹿に従う感じじゃないので、間違いなく前者だろうな。


しかしこれだけ広い城なのに、俺達が出会ったのはこの6人だけだ。

すぐに戦うような雰囲気でもないので、その辺りを聞いてみた。


「はいはい、お招き頂きありがとうございます。ところでこれだけでかい城なのにあんたらの姿しか見てないんだが、他の連中ってどうしてんだ?」


とまあ、敬意の欠片もない口調で話すと、若い男の魔族が詰め寄ってきた。


「この場所に入れるのはベリアル様に認められた者だけだっ!貴様等野蛮な人間共が本来立ち入って良い場所では無いっ!!城の者は貴様等に危害を加えられぬように、他の場所に隔離してあるのだっ!!解ったか、人間っ!!」


「ああ、ご丁寧な説明どうも。でもその理屈なら招かれた俺達は、あんたらの主に認められたって事だろ?その相手にそんな態度じゃ、あんたが主を貶めてるぞ」


俺の指摘に若い男の魔族が言葉を詰まらせる。

ガミジンを除く4人の上位魔族から、殺気を込めた視線を頂いたが気にしない。

ここで手を出せば俺の言葉を肯定するに等しいし、自らの手で主を貶める様な行為はこいつらにしてみれば、何よりも耐え難いものだろう。


それに万が一襲ってきたなら返り討ちにすればいいだけだ。

開き直ってそんな風に考えていたら、玉座のベリアルが俺を見て静かに笑っていた。


「くっくっくっ、なるほど。確かに肝が据わっているな。こやつ等を前にそれだけの口を利ける者はそうはいないぞ」


「そっか?ちゃんと見極めが出来てれば、手を出すか出さないかぐらい解るだろ。まあ、あんたの前じゃなきゃ出来ない芸当だけどな」


「ふっ、本当に面白い奴だ。これから殺さねばならんのが少々惜しいくらいだ」


「気にしなくていいぜ。こっちはあんたが死んだらすげー嬉しいからな」


互いに見合って不敵に笑いあう。

……あー畜生、こいつ全然落ち着いてやがるな。

他の連中みたいに感情を出してくれれば、こっちも色々仕掛けやすいんだがな。

まあ、ガープが本当にヤバイって言ってた相手だし、この程度の挑発に乗ってくるほど安くは無いか。


「で、どうする?まずこいつらを倒して、あんたと戦う資格を示せってやつか?」


上位魔族達を見てそう言ったのだが


「いや、その必要はない。ガミジンは下げるが他は私と共に戦ってもらうからな」


そう言ってベリアルは玉座から立ち上がった。


「……おいおい、人間如きを相手にそんな真似するのか?大魔族としての誇りとかねーのかよ」


「不要だ。わざわざ貴様等に勝ち目を与えてやる必要はないし、仮にも他の大魔族を打ち破ってきたのだ。それなりの敬意は払うべきだろう。これでも私は貴様等をそれなりに評価したからこそ、ここに招いたのだぞ」


……畜生、本気でやり辛い。

これが他の連中なら、まず俺達と上位魔族を戦わせてその様子を楽しむ。

4人の上位魔族と人間なんて、どうあがいても人間に勝ち目が無いからだ。

そのもがき苦しむ様子を見て、優越感に浸るってのが魔族というものだ。


しかしベリアルにはそれがない。

合理的でないと判断したら、安い誇りなんてあっさりと捨てやがる。

今までは人間如きと見下していた隙を突いて、こちらを優位にしてきたんだがな。

その手が使えないとなると、そこそこ厄介だ。


「……まあ厳しくはなったけどやるしかねーな。どっちにしろ倒さなきゃいけない相手なんだから」


気分的には先手を取られた感が強いが、こうして戦いへと突入していった。

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