第199話 《青鎧アイギス》の秘密
魔王軍編その4の話数が確定しました。
今日を含めて残り10話の全19話です。
誰だ、15話ぐらいなんて言った奴は(泣)
弟子達に負けてはいられないし、俺も少々飛ばしていく事にしよう。
まず空中に【俯瞰】と【遠見】を付与した魔弾を浮かべて魔力糸を繋いだ。
次に道具袋から2つ魔石を取り出し、左右の手に握る。
右手の魔石の魔力を開放して、【自動防御】【消滅】【超高速】を付与した魔弾を5つ生み出す。
すると俺の周りを、5つの黒い魔弾が浮かんで回り始めた。
そして左手の魔石の魔力を開放して、【貫通】【超硬化】【超高速】【遠隔操作】【条件式】《魔弾に触れたものを遅延爆破する》を付与した魔弾を1つ生み出す。
すると俺の目の前に、白く輝く魔弾が1つ浮かんだ。
俺は【分割思考】の1つを、空中に浮かぶ魔弾と白い魔弾に繋いだ。
そして白い魔弾を、空中の魔弾の視点から見える上位の竜であるアンフィスバエナの頭に向けて放った。
アンフィスバエナは双頭の竜なので、両方の頭を連続で狙う。
その間にも俺を食い殺そうとする竜がいたが、黒い魔弾が自動的に動き出し竜の頭に触れた瞬間、そこが【消滅】して黒い魔弾と頭の無い竜の死体だけが残った。
そして俺の白い魔弾が、アンフィスバエナの頭を続けて撃ち抜いた。
これだけでも十分致命傷だが、数秒後に両方の頭が【爆発】した。
その巨体が力なく倒れてゆき、周囲の竜が下敷きになる。
下敷きでは死なない奴も多いだろうが、足止めくらいにはなる。
【爆発】したのは【条件式】のせいで、あの魔弾が触れた部分に魔力を付着させる事でその魔力を【爆発】させているという訳だ。
なぜこの様な真似をしたのかと言うと、竜の中には高い再生能力を持つものも多く且つラドンのように凄い数の頭を持つものもいる。
そんな連中は魔弾で貫いただけでは死なないので、追加で【爆発】する事で止めを刺しているという訳だ。
【爆発】なのは、火だろうが氷だろうがほぼ全ての属性に対し有効だからだ。
ただ、この白い魔弾にも欠点がある。
付着した魔力を【爆発】させるのだから、当然魔弾の魔力は削られてゆく。
通常の【貫通】の魔弾なら壊れない限り使い続けられるが、白い魔弾は使いきりで当てるたびに消耗してゆく代物だ。
これは黒い魔弾も同様で、こちらは注ぎ込んだ魔力が尽きれば消えてなくなる。
だから魔石で魔力を補い、長く持つようにしたという訳だ。
強力なのは間違いないが、魔石を使わないと消耗が激しいので滅多に使わない。
奥義程ではないが、俺の中でも強い手札の1枚ではある。
アンフィスバエナを倒して、次を狙う前にカレンの様子を探る。
俺の付与のおかげで、カレンが聖剣を振るうたびに竜が死体へと変わってゆく。
並みの竜ならそのまま斬るだけで十分だし、強い相手には【錬気法】と【魔闘術】を使い分けてなるべく長く戦えるよう、工夫しながら戦っている。
それを支えるのが、カレンが身に着けている《青鎧アイギス》だ。
高い防御力に自己修復機能もつく逸品だが、何よりありがたいのが自然回復力強化がついている事だ。
この自然回復力強化は怪我や病気、毒や麻痺といったものにも効果があるが、俺が重要視しているのは闘気や魔力、そして体力の回復も高められている事だ。
本来闘気や魔力は自然に回復するのを待つしかない。
魔力はまだ魔石や魔力回復薬などで回復が可能だが、闘気に至っては自然回復しかない。
そして、治癒魔術で癒せるのは怪我であって体力ではない。
体力は強化する事は出来ても、回復は自然に任せるしかないのだ。
これらの回復力が高まると言うのは、地味なように見えるが非常に大きい。
何しろ俺の知る限り、この効果を持つものは《青鎧アイギス》以外に存在しない。
青鋼製の防具は他にも存在するのだが、どうもそれらには備わってないらしい。
ドウェルグに理由を聞いたら
『多分使われている青鋼の量が違うからだろうな。嬢ちゃんの《青鎧アイギス》程大量の青鋼が使われた防具は存在しない筈だ』
と、言っていた。
そのカレンは兵士達には荷が重い竜を中心に戦っている。
そして自然回復力が強化されているといっても、人は無限に戦える訳じゃない。
俺は白い魔弾を操りながら、カレンが一息吐けるようにフォローしていた。
その度にこちらを見ては笑顔になってるが、いいからおとなしく休んでおけ。
帝国も皇国も《クラウ・ソラス》や《剣聖》が上位の竜を倒しているみたいだが、それでもやはり竜が相手となると兵士達の被害が大きい。
なるべく兵士達が倒しやすいようにフォローもしているが、これまでとは敵の強さも数も比べものにならない。
前線に目をやれば数え切れない程の敵味方の屍が横たわり、この戦闘がいかに過酷なものなのかを物語っていた。
相も変わらず長くなりました。
下手すれば6月中旬にかかるかもです。
なるべく長くならないように気をつけます。




