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第1話 3年前 街道脇にて

思ったより早く書けましたので掲載しました。


「…これで最後っと」


付与された魔弾がオークの胸に大穴を開ける。


「グウォ、オォ…」


小さな呻き声を上げ息絶える。確実に仕留めた事を確認し辺りを見回す。魔物の気配はない。


「…15体か…王都から4日程度の所でこんだけいるって事は、やっぱ魔王の影響って事なのかねぇ…」


俺は街道から離れた森の中で最近の魔物の活発な活動について考えていた。


なんでも大昔、大賢者と呼ばれた爺さん曰く


「これからおよそ千年後、魔王は封印を破り蘇る」


などという物騒な予言を残していたらしい。流石に当時はまだ危機感もあり様々な準備をしていたらしいが、時代が経つにつれ予言そのものも忘れかけられていたのだが、およそ30年ほど前に本当に魔王が復活した様なのだ。

何故それがわかったかといえば明らかに魔物の出現が増え、それまでは物語の中だけでしか見たことの無い”魔族”が北の端の魔王領から現れたのだ。


復活した魔王は人間領に侵攻。魔王本人は姿を見せたことはないが、配下の魔族が人間達を襲った。侵攻初期は魔族側は優勢で、人間領の3分の1を支配下に治めたが中盤にかけ人間達も反攻に出た。

各国が共闘し有力な冒険者達の協力もあり、魔族を押し返す事に成功。現在は人間領の5分の1程度支配に留まっている。

しかしこの戦いで双方に多大な被害が発生し、お互いに攻め込む事ができなくなった。最近では小競り合い程度戦闘のみで比較的平穏に過ごせてはいる。


しかし魔王が復活してから一度も姿を見せないことに関しては様々な憶測が飛び交った。


「魔王領から出てこれないのでは?」

「実は魔王はもう亡くなっており、魔族の侵攻は各自の独断では?」

「魔王の力が衰え派閥をまとめるのに必死なのでは?」


等である。しかし最近最も有力視されている説がある。それは


「魔王は封印の影響が残っており、完全に復活するまで時間がかかっているのでは?」


というものである。

この説が支持されだしたのも最近魔物の活動が活発になっており、これまであまり魔物がみられない地域での魔物の報告が増えたり、これまで魔物が見られた地域でもよりも多くの魔物が出る様になっていた。そしてその魔物そのものも禍々しさがふえていた。


本来Aランク冒険者である俺がオークをわざわざ討伐には来ない。

オークの適性ランクは群れの討伐ならCランクパーティー相当が妥当なところだ。

ちなみに冒険者ランクは


Aランク 一般的な冒険者の最高位。ドラゴン退治や高レベルダンジョンの攻略などを行う。

Bランク 熟練者。レベルの高いパーティーならAランクにも見劣りしない。中規模の町や地方の町では実質的な最高ランク。

Cランク 一般的な冒険者。世間的に冒険者といえばここをイメージする。町で出される依頼の大半はCまたはDランクが行っている。

Dランク 駆け出し。初心者を卒業して本格的に活動しはじめた冒険者。まだ心もとない。

Eランク 初心者。受けられるのは薬草採取や低ランクの危険の少ない依頼のみ。いくつかこなした後ギルドから許可がでればDランクに上がる。


といったもので一応更に上にはSランクが存在するが実質なるためには、国の危機を救う、高位魔族を討伐する、古代竜を討伐するといった無茶なことをしないとなれない。

現在現役のSランクは世界に5人しかいなかったはずだ。

…ああ、ただ例外で勇者は無条件にSランクだ。


話を戻すが何故俺がオークの群れを討伐したかというと、ぶっちゃけ人手が足らなかったからだ。

言ったように魔物の活動が活発になって田舎の村などにも魔物が出るようになっていた。流石にそこまで強い魔物は出ていないのだが、数も増えていて最近は人手不足なのである。


基本的に高ランクの冒険者はランクの低い依頼を受けたりはしない。

これはプライドの問題もあるが実際は冒険者の棲み分けの意味合いもある。

高ランクの冒険者が低ランクの依頼を受けてしまうと、低ランクの冒険者達は稼ぐ機会を奪われてしまい生活が苦しくなるので、なるべくランクに合った依頼を受ける様にギルドからも推奨されている。


今回の場合はBランク以上がダンジョン攻略等に向かいたまたま留守で、Cランクは何人かいたのだが依頼が終わったばかりで受けられるような状態じゃなかった。そこでちょうど暇していた俺に白羽の矢がたったのだ。

Aランクである俺なら単身討伐も出来る。まあ、急いでしなければいけない事もなく、ちょうど実験と練習も兼ねてしたいこともあったので受けることにしたのだ。


「まあ、実験は成功したし、簡単とはいえ練習にもなったんだが…」


しかし実際戦ってみればやはりはっきりと感じる。


(…俺は弱くなっている…)


技術的、身体的なものはむしろ向上している。昔の俺では出来なかったことが今の俺には幾つも出来る。

今の俺が昔の俺と戦ったとすれば、負ける確率はほぼないだろう。

だが無事でいるイメージが全く出来ない。下手をすれば重傷、もしくは相打ちまであり得る。

逆に昔の俺が今の俺を相手にすれば勝ちの目はほとんどないだろう。

しかし昔の俺なら自分の持てるもの全てで、いや持っていないものですらつぎ込んで無理やりにでも勝ちを奪い取りにいっただろう。

…つまりはそういうことなのだ。

俺が弱くなったのは気概の面だ。そこだけが弱くなり、しかしそれこそが俺の強さの本質でもある。


「…はあ…師匠が見たら殺されかねんな…」


(帰るか…)


依頼を達成した俺は討伐証明になる部分を回収し、死体を処理してから王都へと帰還するのだった。

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