第191話 カレンとの時間
結局3人と話し合って、今後はもう少し女性として扱う事が決まった。
別にこいつら相手に手を出すと言う事ではなく、弟子としてではなくもっと1人の女性としての扱いを増やすという事だ。
そしてカレンとは以前、帝国軍の手助けが終わった後個別で時間を取ると約束していたので、これから3国の軍が合流するまでは、2人きりで話す時間を設ける事となった。
王国軍は進軍速度が最も速かった為、合流地点で他の2国の軍を待つ事となった。
それぞれと連絡を取り合った結果、皇国軍が2日後、帝国軍は5日後に合流する事が解った。
いくら女性としての扱いを増やすと約束したと言っても、3人が俺の教え子である事実は変わりない。
それまでの間俺は3人を、これまでと変わらず厳しく訓練した。
それに女性としての扱いを増やすと言っても、正直どうすれば良いのか解らない。
そもそもそれが自然に出来るなら、あいつらがそんな事を言ってくる筈が無い。
そして、弟子に手を出したと言われないラインが何処なのかも解っていない。
そんな事を考えていたら、いつの間にかカレンと話す時間になっていた。
安全を考えれば俺かカレン達のテントで話すのが1番なのだが、俺の所だと教え子を連れ込んだと言う噂が立ちかねないし、カレン達の所だと2人きりと言う条件が満たせない。
結局2人で夜の見回りを行うと言う事にして、その間に話をする事になった。
待ち合わせ場所に行くと、既に待っていたカレンが俺を見て嬉しそうに笑った。
「先生っ!……良かった、待ち合わせ場所を間違えたのかと思いましたよ」
「いや、まだ10分前だぞ。お前何時から待ってたんだよ?」
「……えっと、大体30分前からですね」
「本当だな?これ終わったら、後でルミラとフィリアにも確認するからな?」
「……ごめんなさい。本当は1時間前くらい前からいました」
「……お前な、時間決まってるんだから遅れなきゃそれでいいだろうが……」
「う~、でも先生を待たせるのは失礼ですし、その、テントで待っていたら楽しみ過ぎて待ちきれなくなっちゃったんです」
「いや、それでも早すぎるだろ。ルミラとフィリアは止めなかったのか?」
「……その、実はテントの中で『どうしよう?先生と何を話そう?』ってルミラ達と話してたんですけど、あまりにも私が浮かれすぎてて鬱陶しいって追い出されたんです」
「……ちょっと待て。お前1時間前から待ってたって言ってたよな?追い出されたってどのくらい2人と話してたんだよ?」
「えっと、夕食が終わってすぐですから2時間くらいです。2人共酷いですよね」
「……いや、そんな事に2時間付き合わせたお前の方が酷いぞ」
「えー、そんな事ないです。女の子にとって2時間のお喋りなんて普通ですよ」
恐ろしい事に、男の俺には理解出来ないがカレンの言ってる事は間違いじゃない。
以前ヴィルさんのお宅にお邪魔した時もそうだったが、女性同士の会話と言うのは男からは考えられないほどの長話が基本なのだ。
しかも人数が増えるほどその時間が長くなるのも、俺は経験上理解している。
「……まあここで話すのもなんだし、そろそろ見回りに行こうぜ」
「そうですね、それではしばらくの間よろしくお願いします」
そう言って俺達は見回りを開始した。
まあ、見回りと言っても俺が結界を張って【拡大】【探査】を付与しているので、本来は必要ないものだ。
だから気を張る事も無く、実際にやってるのは散歩に近い。
しばらく雑談しながら歩いてそろそろ戻ろうかという時、意を決したようにカレンが話し掛けてきた。
「あの、先生?昨日話して頂いたシャルロット様の件なのですが……」
……いきなり嫌なところを突いてくるな、こいつは……
一応俺が別れ際にシャルを抱きしめた事について3人から追求があったので、シグに言われた事を3人にも話しておいた。
「あー、昨日も話したけどあくまでシグが言ってるだけで、シャルから言われた訳じゃないからな?」
「それは良いんです。シャルロット様に確認する必要はありませんから」
「だったら何でそんな事を聞いて来るんだ、お前は?」
「……あの、先生はシャルロット様と結婚されるのでしょうか?」
少し泣きそうな、訴えかけるような表情で俺に問いかけてきた。
「……正直解らん。シャルに不満なんてないし、俺には勿体無いくらいの相手だと思うけどな」
「……どうしてですか?シャルロット様だったら、先生にとっても良い事ばかりに思えるのですが……」
そう言ったカレンの目を見て真剣な顔で話す。
「俺に好意を寄せてくれてるのがシャルだけじゃないからな。そいつ等の気持ちを無視してシャルを選ぶなんて事はねーよ。まあ、シャルも含めて随分物好きな連中だとは思うけどな」
最後の方は照れくさくて、目を逸らしながら言った。
しばらく無言だったので、カレンの方を見ると
「……ありがとうございます、先生……」
嬉しいのか、泣きそうなのを我慢しているのか解らない表情で俺にそう言った。




