第188話 ベレト戦
残り2話です。
(……【呪い】を打ち消すにはただの【解呪】じゃ足りない。もっと強力なものか別の方法じゃなきゃ駄目だ)
だがその前に、この部屋自体に【解呪】【継続】を付与しておく。
理由はベレトが垂れ流している黒い靄のせいだ。
あれが移動後も漂うせいで、こちらの行動範囲が制限される。
常に【解呪】状態を作る事で、黒い靄による【呪い】の蓄積はなんとか解消する事が出来る。
だが普通の【解呪】では当たった場所が一瞬薄くなるだけで、元に戻ってしまう。
この部屋に【継続】する様に付与した【解呪】では、効果が薄れてなおさらだ。
一応考えたのが【移動不可】を付けた後、周りに結界を張って【解呪】を【増幅】する事で効果を高める方法なのだが、多分これを行うと俺も【移動不可】になる。
【呪い】というのは要するに、自分が受けたものを相手にも返すものだ。
この場合俺が【移動不可】を付与した時点で【移動不可】が俺に返ってくる。
更にこの【呪い】の性質が相手の動きを奪った上で激痛が走るものなので、それも加わる。
結界は直接攻撃じゃないので問題ないし、【解呪】は【呪い】そのものを打ち消すものなので俺に返ってくる事は無い。
(【解呪】しても痛みは残るけどこれしかないか?【移動不可】も解いておかないとまずいしな……)
「ヴィルさん、今から奴に【移動不可】を付けます。その後結界を張って【増幅】した【解呪】で【呪い】を解きます」
俺がそう言って【移動不可】を付けようとすると、ヴィルさんに肩を掴まれた。
「待ってくれ、カイン君。あれを試してみてくれないか?」
ヴィルさんの話を聞いて『なるほど、その手があったか』と感心させられた。
俺がこういう部分で頼れるのは、この人ぐらいだから本当に助かる。
俺はヴィルさんの提案通り、魔弾にあれを付与してベレトに放った。
放った魔弾であれを付与したが、効果が出るまで少し時間がかかるはずだ。
それまでは、俺も痛みを我慢する覚悟で【移動不可】を付けておこう。
魔弾に【移動不可】を付けて放ち、ベレトに命中する。
同時に俺とベレトが【移動不可】になり、俺には【呪い】も加わった。
正直叫びたいほど痛いが、ベレトを抑えてくれてた連中も似たような感じだろう。
さっさと【解呪】して【移動不可】も解いておいた。
「皆、距離を取れ。後は時間が解決してくれる」
俺の言葉を皆疑う事も無く、ベレトから距離を置く。
ベレトは【移動不可】の為、その場から動く事が出来ない。
少し待っていると、ベレトに明らかな変化が生じ始めた。
「っ!!なんだこれはっ!!貴様、一体何をしたああぁぁぁ!!!」
ベレトの身体を覆う全身鎧と手に持つ大剣の色が、漆黒から純白へ徐々に変化していく。
後は全て純白に染まれば、もう攻撃を仕掛けても大丈夫だ。
俺がヴィルさんに言われて付与したのは【性質反転】だ。
これはかつてヤヨイさんを救う為に、ヴィルさんと共に開発した術式だ。
色が漆黒から純白になったのは【性質反転】によりベレトの持つ【呪い】が反転し【呪い】としての効果を失ったからだ。
俺が考えていた【解呪】の結界は【呪い】が尽きるまで攻撃出来ないし、僅かでも【呪い】が残れば与えた攻撃分、より強い【呪い】が発動してしまう。
しかし【性質反転】なら【呪い】が全て反転してしまえば、もうそれ以上の心配は無い。
俺はそれをシグ達に説明し、止めを任せた。
「まあ、たまには余らに見せ場があっても良いだろう」
「ふざけるなっ!!この儂がこの様なところでええぇぇぇ!!!」
喚くベレトだが【移動不可】の為逃げる事が出来ない。
そんなベレトにシグの【光帝剣】が炸裂して、核を残しベレトは消滅した。
「そんなっ!!ベレト様!!ベレト様っ~~~~~!!!!」
ただ1匹残された小悪魔が甲高い声で叫んだ。
まあ、あいつ1匹だけじゃもう何も出来ないだろう。
そう思っていたのだが、シグは違っていたようだ。
「カインっ!!あの小悪魔を逃がすな、すぐに【拘束】しろっ!!」
シグの顔を見るが、至って真剣だ。
この顔のシグの言う事なら、疑いを持つ必要は無い。
俺は【高速】【追尾】【拘束】を付与した魔弾を放ち、小悪魔を捕まえた。
捕まえた小悪魔だが
「許してください。もう悪い事はしません。見逃して下さい~~~!!!」
と、泣いて命乞いをしている。
その様子に俺も妙な違和感を感じた。
どこかこいつの言う事に、嘘吐きが持つ独特の雰囲気を感じたのだ。
シグの方を見ると
「……何故かこやつを逃がしてはいけないと、直感が働いてな。こやつには間違いなく何かあるはずだ」
こうして小悪魔への尋問を始めるのであった。
本日確認しましたら10万PVを達成していました。
これも目標の1つでしたので非常に嬉しいですね。
しかしこうして投稿してみて、ようやくランキング上位の方々が異次元の存在なのだと痛感しますね。
PVが数千万だとか億だとか想像も出来ません。
これからも背伸びしないで、コツコツやっていけたらと思います。




