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第183話 上位魔族戦


3人の上位魔族の内1人は右腕に大きな火傷を負い、1人は顔の一部を含む左半身が焼け爛れ、最後の1人は身体の前面を焼かれ瀕死の様子だった。

流石にあの熱線を喰らえば、上位魔族といえどもただでは済まなかったようだ。

しかし逆に言えば、この程度の傷で済んだとも言える。


並みの奴はおろか、かなり強力な魔物でさえ消滅させる程の熱線だ。

正直身体の一部が欠損していてもおかしくは無かったのだが、そこは流石上位魔族と言ったところだ。

連中は激しい怒りを視線に乗せ、こちらをもの凄い目つきで睨んでいた。


だがその怒りをこちらに向けるのは筋違いだ。

その火傷はお前達が後ろに引っ込んで、ここなら安全だと高をくくっていたつけを支払ったに過ぎないのだから。


俺はまず他の魔物の邪魔が入らないように、周囲に結界を張った。

これで結界内には上位魔族と《クラウ・ソラス》、俺とフィリアとドウェルグのみが立っている状態だ。


「……貴様等っ!!人間の分際でよくも我等に傷を負わせてくれたなっ!!」


「この苦しみ、百倍にして返してくれるっ!!覚悟しろっ!!」


「……許さぬ、許さぬぞっ!!人間共めがああぁぁぁぁ!!!」


上位魔族が何かほざいているが、それを丁寧に聞いてやるつもりは無い。

俺は極小の魔弾に【隠蔽】【痛覚倍増】を付与してこっそり打ち込んだ。

怒りで目の前しか見えていない相手は、俺の攻撃に気付く事も出来なかった。

俺の魔弾が命中した瞬間、


「「「ぐおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」


と、上位魔族達は痛みに耐えかね叫び声を上げた。

相手の様子を見て、俺が何かやったのを察したのだろう。

素早く全員が動いて上位魔族を分断してゆく。

その際に


「ルミラ!!」

「解っています、お師様っ!!」


との、短いやり取りながらもルミラは俺の意図を正確に汲み取った。

【痛覚倍増】と言う事は、負った傷が大きいほど痛みも大きくなるという事だ。

ルミラは一瞬も迷う事無く、前面を焼かれた相手に向かい【ファイア】を充填した《緋槍プロミネンス》を突き込んだ。


それを察知した他の上位魔族が防ごうとするが一方は《クラウ・ソラス》が、もう一方は俺が魔弾で防いでやった。

ルミラの攻撃に気付いた上位魔族だったが、痛みの為反応が遅れ避ける事が出来ず防御するのが精一杯だった。

しかしルミラの《緋槍プロミネンス》の突破力は半端無い上に、【痛覚倍増】の為防ぐだけでも凄まじい痛みが上位魔族を襲う。


「いっけえええぇぇぇ――!!!」

「……っ!!ぐっ、おおおぉぉぉ、ぐわあああぁぁぁ――ッ!!!!」


痛みで集中が乱れ《緋槍プロミネンス》にその身を貫かれる。

元々のダメージに加え、貫かれた傷とそこを焼かれ続ける痛みが重なり、上位魔族は息絶えた。


よし、【変身】させずに1人倒せたのは大きい。

後は残りの上位魔族を倒すだけだ。


「ドウェルグ!!あんたはこっちだ!!シグ、そっちは任せたぞ!!」


俺、ルミラ、ドウェルグで右腕を火傷した相手を担当して、《クラウ・ソラス》にもう一方を任せる。

俺達がこちらを担当したのにもちゃんと理由がある。

本来上位魔族が【変身】する為にはかなりの集中力と、多少の時間が必要になる。

だが少なくとも左半身を焼かれた奴は【痛覚倍増】の為、【変身】に必要な集中力を維持する事が出来ないだろう。


右腕だけの奴なら頑張れば【変身】出来るかも知れないが、その隙を与えなければ良いだけの話だ。

そしてそういうのが得意なのが俺な訳だ。

ルミラとドウェルグに近接戦闘で押さえ込んで貰っている間、俺は【追尾】を付与した威力を抑えた魔弾をちまちま相手の右腕に撃っていた。

【追尾】している以上確実に命中するし、威力を抑えているのは嫌がらせの意味が強い。


【痛覚倍増】状態で火傷を負った場所を攻撃されれば、集中力を維持出来ないのも当然だ。

本来目の前のルミラとドウェルグに集中しなければならないのに、俺の魔弾によりそうする事が出来ず僅かづつではあるが傷を負い始めた。

負った傷の痛みも倍増されて動きが悪くなったところに、【追尾】【麻痺】を付与した魔弾を放てばこれで詰みだ。


今までの魔弾と同じだと思って痛みに耐えようとするが、意識していないところに喰らった【麻痺】は効果抜群だった。

上位魔族相手に状態異常系の付与は効果が薄いのだが、集中力を欠いた状態だったのと完全に想定外の【麻痺】を使ったのがこういう結果になったのだろう。

本来なら一瞬動きが止まる程度の【麻痺】が、今回は決定的な隙を生み出した。


そしてその隙を見逃すほどルミラもドウェルグも甘くない。


「はあああぁぁぁぁぁっ!!!」

「どりゃあああぁぁぁぁっ!!!」


「うおおおおぉぉぉぉ――!!!馬鹿なっ!!人間ごときにっ……」


2人の攻撃が止めとなって、無事こちらの上位魔族も倒したのであった。

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