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第158話 大規模戦闘 中盤


序盤は人間側優位で進んでいるがこれからが本番だ。

俺が空を飛ぶ魔物と大型の魔物を倒したおかげで、兵士と冒険者達は小型と中型の魔物を相手すればいいのだが、今まで戦ってきたのはゴブリンやコボルトなど弱い魔物が中心だ。

ざっと見た限りでもオルトロスやマンティコアなどの強力な魔物や、コカトリスやカトブレパスといった厄介な能力を持つ魔物も多数いた。


単純な数で言えばこちらが大きく有利なのだが、強力な魔物に対してこちらの犠牲が多く出れば士気が下がるのは明白だ。

それらの魔物へは高ランクの冒険者が対処に当たる。

兵士達は数も多く強さも一定以上ではあるが、それだけでは倒せないのが高ランクの魔物という奴だ。

相手の特徴や弱点を把握し優位に戦う事は、冒険者の方が優れている。


これからは冒険者が高ランクの魔物の相手をする間、兵士達がそれ以外の魔物達を押さえるという役割分担だ。

だが、その間も俺達は本陣で待機していなければならない。

この戦法では確実に犠牲も出るし、俺達が戦えばその犠牲も最小限に抑えられる事も十分理解している。

出来るのならば今すぐにでも飛び出して、俺達も戦いたい。


しかし、もし上位魔族が現れたら俺達以外には対処できない。

ここで消耗したら、上位魔族相手に不覚を取る可能性が高くなってしまう。

兵士や冒険者の皆も自分の役割を理解し、犠牲になる覚悟も出来ている。

だからこそカレン達は必死に歯を食いしばりながら、苦しげな表情で今のこの状況に耐えている。


現在の戦況は一進一退といったところだ。

最初は序盤の勢いのまま人間側が押していたが、強力な魔物達が出現した事でその勢いも止まってしまった。

更に石化などの特殊能力を持つ魔物によって、兵士達に少なからず被害が出た。

その都度冒険者達が対処に当たるが、戦況が膠着し始めて一気に押し込めない。


その上、魔物側は人間側と違い味方に被害が出てもお構い無しで暴れている。

これは魔物にとって同じ種族ならともかく、他の魔物はただ同じ場所にいて暴れているだけのもので、決して協力しあう仲間ではないからだろう。

おかげで弱い魔物達も巻き込まれているが、それ以上に制約なしに暴れられている事の方がよっぽどきつい。


双方に被害を出しつつ戦況が進む中、俺は魔弾に【俯瞰】と【遠見】を付与しそれに魔力糸を繋いで上空に設置した。

魔弾からの情報で戦場の全体図を把握し、後詰めの魔術部隊に通信石を使い大規模魔術を撃ち込む場所を指示させる。

魔術部隊が連携して殲滅型の魔術を準備し、約20分後敵陣の指定した場所に投下した。


放たれた魔術は、爆発系の大規模殲滅魔術【メガエクスプロージョン】だ。

持続効果を狙うなら火系、足止めなら氷系、即効性なら雷系を選ぶべきなのだろうが、それぞれに耐性を持つ相手には効果が薄い。

その点爆発系なら、耐性を持つ魔物は殆どいない。

これにより魔物側に多大な被害が発生して、戦局が大きく動いた。


魔物側の前線の一部が孤立し、そこから人間側がなだれ込む形で押し込み始めた。

先程の【メガエクスプロージョン】による被害は大きく、爆発により多くの魔物が倒され、負傷し戦闘が行えない魔物も多くいる。

弱い魔物の一部は逃げ出すものもいるくらいだ。


こうして戦局は人間側に大きく傾いたが、こちらの被害も決して少なくない。

特に前線の兵士達は押し込まれるのを防ぐ為に、かなり無理をしていたようだ。

石化され砕かれ再生できなくなったものや、戦えないほどの大怪我を負ったものもいる。

そして勝利を信じ、その命を散らしていった人達が多くいる。


その人達を無駄死にさせない為にも、この戦いで負ける訳にはいかない。

人間側が押し込み始めた箇所を中心に、魔物側を押し込んでいく。

総大将もここが勝負どころと見て、後詰めの部隊を投入して勝負を決めに行く。


後詰めの部隊は、基本遠距離戦を得意とする者を中心としている。

各部隊の指揮官同士が通信石で連絡を取り合い、魔物達に弓矢や魔術を撃ち込んでゆく。

後詰めに配置した冒険者も、高ランクの魔物に向かい次々と倒してゆく。

魔物側の戦線は崩れ、大規模戦闘としての勝敗はほぼ決したといってもいい。


しかし、それでもこの戦局をひっくり返せる存在がまだこの場には存在している。

先程【俯瞰】した時に魔物側の奥の方に、明らかに空気の違う相手がいた。

上位魔族と思われる相手が4人、しかもその中にはっきりと格が違う奴がいた。

誰だか解らないが、大魔族の1人である事は間違いない。


上位魔族だけでも十分戦局を変えられるが、あいつが出てきたら俺達以外では相手にもならないだろう。

俺は自分達の出番が近い事をカレン達に伝え、大魔族らしい相手の事も話した。

3人は力強く頷き、戦いに向けて気持ちを高めていた。

皆が掴みかけたこの勝利を逃すまいと、俺も戦いに向けて集中するのだった。

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