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第135話 《クラウ・ソラス》VSサブナック


「ヴィル、シャル、貴様達が中心となって魔術で攻めろ。余とカールが盾となる。決してお前達には近づかせはせぬから安心するがよい。セシリア、貴様はいつもの様に全体の補助だ。」


シグの指示の下、サブナックとの戦闘が再開される。

サブナックという魔族は、高い身体能力と強靭な肉体、そして魔術でさえもかなり高いレベルで使える万能型のようだ。

しかし、サブナックの動きをシグとカールさんが止め、そこをヴィルさんとシャルが魔術で攻撃している。

魔術を避けようとしても、その場所にはシグかカールさんが待ち構えていて、攻撃を繰り出してゆく。

しかし、シグやカールさんの攻撃では斬る事は出来ない。


「ふむ、やはり斬れぬか。よほど特殊な身体なのであろうな」


「はっ、当たり前だ。てめーら如きが傷つけられる訳ねーだろうがっ!!」


サブナックの特性なのか、身体を斬られる様な攻撃は無効化するみたいだ。


「残念だったな。結局てめーらじゃ俺様を殺す事は出来ねーんだよ」


「そうか?斬れぬというなら、斬らずに倒すまでよ」


再び同じ様に攻撃が繰り出される。

やはり魔術によるダメージはあるのか、そちらはしっかりとかわしてゆく。

そこで待ち構えたシグが、剣を振るい攻撃する。


「……無駄だっつてんだろうが。理解できねーんなら死ねよっ!!」


サブナックはかわす素振りも見せず、シグに拳を突き出す。

それを器用にかわしつつ、胴の中心を剣で薙いでゆく。

そのまま走り抜け、両者の距離が離れたところでサブナックが膝をつく。


「……今何しやがった?さっきのは何だっ、答えろてめえっ!!!」


「わざわざ種明かしする馬鹿が何処にいる?……その様子なら、やはり効果はあるようだな」


サブナックには解らないだろうが、あれは【透かし】だ。

衝撃を身体の表面ではなく内部に炸裂させる為、防御が固い相手には大変有効だ。

ただ本来は素手で行う技であって、間違っても剣でやるものではない。

俺も3人にやり方は教えたが、あんなでたらめが俺に実践できる訳がない。


「カール、見たであろう。ようやく奴に膝をつかせてやったわ。斬られぬ事が自慢のようだが、斬らずとも倒す事は出来る。……決着をつけるぞ」


「……人間ごときが舐めた事言ってんじゃねーぞ。決着をつける?上等だ、やれるもんならやってみやがれ」


シグの宣言に他のメンバーも気合を入れるが、サブナックの方も今の一撃で認識を改めて、《クラウ・ソラス》を脅威と認めたようだ。

ひりつくような緊張感の中、戦いが再開された。


しかし有効な攻撃が出来る様になった《クラウ・ソラス》の方が徐々にサブナックを押し始めた。

これまで魔術にだけ気をつけていたサブナックだったが、【透かし】による攻撃はかなり有効の様で、シグとカールさんの攻撃もかわさざるを得なくなっていた

そしてそこでのシグの攻撃は、サブナックにとって実に嫌な攻撃だった。


シグは最初攻撃を胴体に集中させていた。

そしてそれに慣れた頃、足を攻撃し機動力を奪いにいった。

急にパターンが変わった為、サブナックは反応が一瞬遅れその攻撃を喰らった。

機動力を奪われたサブナックは、攻撃をかわせなくなり追い詰められていった。


サブナックはシャルやヴィルさんを先に排除しようと魔術を使ったり、足を止めてカールさんを仕留めようとするが、その全てをセシリアさんが防いだ。

魔術には【シールド】に当てて威力を落とし、シャルとヴィルさんに処理させる。

カールさんを狙ってくれば、補助魔術と回復魔術でサポートした。


追い詰められたサブナックは、自身を中心に周囲に炎の壁を展開する。

青白い炎はかなりの高温で、容易に近づく事は出来ない。

少し時間が経ち、炎の壁の中からサブナックが姿を現した。

その姿は先程までとは大きく変化していた。


「……まさか俺様が人間相手に【悪竜(ファフニール)】を使うとはな。情けなくて死にたくなるぜ。……でも仕方ねえ、敗北よりはよっぽどましだ」


サブナックの身体は一回り大きくなり、魔族と竜が混じった様な姿になっていた。

全身が漆黒で、目だけが禍々しいまでに赤く輝いていた。

そしてシグ達の方を向いて、大きく息を吸い始めた。


「……まずいっ!!皆集まって全力で防御せよっ!!!」


シグが叫び《クラウ・ソラス》が集結し、全員が防御魔術を掛ける。

その直後、サブナックが口から青白い熱線をシグ達に向け放った。

熱線が防御結界に当たり、どんどん結界が削られてゆく。

《クラウ・ソラス》全員が全力で魔力を注ぎ、かろうじて結界は持ち堪えた。


「……追い詰めたかと思えばこれか。全く、上位魔族という奴は……」


「……次は耐えられそうにありませんな。陛下、ここは攻めるべきかと」


「同感ですね。私達が時間を稼ぐので、陛下が決めてください」


「それじゃカールが前に出て、アナタが魔術で牽制、シャルロット様が遊撃で相手の注意を逸らして、私が防御、回復担当。その間に陛下が切り札の準備ですね」


「……お兄様、準備にはどのくらい掛かりそうですか?」


「……1分といったところか。それまでの間、余の命お前達に預けるぞ」


こうして戦いは最終局面に突入していくのだった。

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