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第129話 謁見からの昼食会


翌日の午後、王宮から使いが来て謁見が3日後に決定した事が伝えられた。

時間は昼前からで、その後昼食会も開かれるそうだ。

規模はそれほど大きくしないとの事で、出席者は俺達と《クラウ・ソラス》以外はグスタフさんと官僚が幾人か参加するらしい。

まあこちらも挨拶ばかりされても困るし、その申し出はありがたい。


それまでの間は、シャルを含めた4人に【概念】の指導を行いつつ、ヴィルさんと一緒に術式の解析を進めていた。

心配されたヴィルさんの機嫌だが、セシリアさんとクレアの説得のおかげで何とか変わらぬ協力を約束してくれる程には回復していた。

一応どの様な説得だったのか聞いてみたら


『……全く、何してるんですかアナタは。大人気ないにも程があるでしょう?』


『い、いや、これには事情があってね……』


『……?どうしたの、パパ。ママと喧嘩してるの?』


『ち、違うんだよ。パパとママは仲良しだから心配しなくても大丈夫だよ』


『……クレアがカイン君に抱きついたから拗ねてるのよ、この人は……』


『……そうなの、パパ?……ごめんなさい、私お兄ちゃんができて嬉しくて、つい甘えちゃって。でもそんなにパパが嫌なら、私お兄ちゃんにはなるべく甘えない様にするね?』


『……いや、クレア。そんなに悲しそうな顔をしないでおくれ。……良いんだよ?カイン君に一杯甘えても。彼はクレアのお兄ちゃんなんだから……』


『パパ、本当にいいの?……ありがとう、パパ。大好きだよ……』


……それ、本当に納得してるのかな?

ヴィルさん血の涙とか流してませんでしたか、セシリアさん?


……まあ、後でお礼の品を贈る事にしよう。

ただ残念な事にせっかくクレアが懐いてくれたのに、俺の方は術式の解析でかなり忙しく一緒にいる時間が取れない。

寂しそうなクレアを見るのは俺も心苦しいし、なによりヴィルさんの無言の圧力が本気できつい。

今度時間を取って街に出かける約束をしたら、クレアはとても喜んでくれた。

……大丈夫です、ヴィルさん。2人っきりじゃなくて皆で出かけますから……



そうこうしている内に謁見の日になった。

謁見が始まりどんな無茶振りしてくるかと思っていたが、意外にもシグはごく無難に謁見をこなしていた。

……まあ、つまらなそうな顔してたから、多分グスタフさん辺りに悪巧みがばれたのだろう、ザマーミロ。

俺が視線を向けると、グスタフさんは僅かに微笑み頷いた。

……いや、流石グスタフさん格好良い。やっぱ出来る男は違うな~。


無事に謁見も終わり、昼食会へと移った。

本来は、贅の限りを尽くしたコース料理をマナーを守りつつ頂くのだろうが、今回はこちらの希望で立食形式のものにしてもらった。

料理は手軽に食べられるものばかりだったが、そこは流石に皇帝が食す料理だ。

一見普通の料理だが食材と調理技術は1級品で、どれも唸るほど美味かった。


周囲を見ると、特に帝国の若い官僚達がカレン達に挨拶している。

それを淀むことなく優雅に対応するあたり、やはりこいつらは貴族なのだと再認識させられた。

俺の方にも挨拶に来たが、相手が30手前のおっさんと見目麗しい美少女では対応に差が出るのはしょうがない。

早々に立ち去っていったが、その分俺が《クラウ・ソラス》の相手を多くする事となった。


まあ勝手知ったる相手だし、正直シグ以外の相手は気安いと言っても良い。

しかし俺はまた、ある人物の意外な一面を知る事となった。

《クラウ・ソラス》のメンバーがいるという事は、当然シャルもいる。

そしてそのシャルは、普段の様子からは想像も出来ないほどお姫様だった。


カレン達に負けないくらい官僚達から褒め言葉を貰っているし、それに対し穏やかに対処する姿も様になっている。

立食形式という事で服装もあまり本格的なものでは無いが、それでもなお人の目を惹きつける何かがあった。

俺が感心した様子で眺めていると、気がついたシャルが俺の方に近づいてきた。


「ごきげんよう、カイン様。楽しまれていらっしゃいますか?」


「……ええ、この様な場を設けて頂いて感謝しております」


「そうですか、生憎とこの様な質素な昼食会となりましたが、楽しんで頂けている様でなによりです。よろしければ、あちらでお話をさせて頂けないでしょうか?」


言葉使いは丁寧だが目で、解っているでしょうね?と言っている。

ここで断ったら面白いのだろうが、2度も追いかけっこをする趣味も無い。


「……ええ、私でよろしければ是非……」


そう答えて少し離れた場所に移動する。

その際に若い官僚達から憎しみの籠もった視線を頂いたが、言っておくけどそんな良いものじゃ無いからな、これ。


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