表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/224

第116話 帝国での昔話


「初めまして勇者様方。私は帝国で宰相を務めております、グスタフと申します。以後お見知りおきを」


「初めまして、グスタフ殿。私は王国の勇者で、カレン・フォウ・ベテルギウスと申します。こちらこそよろしくお願いします」


「私は勇者の仲間を務めております、ルミラ・テオ・シリウスと申します。本日はお会いできてとても光栄に思います」


「同じく勇者の仲間を務めております、フィリア・イル・プロキオンと申します。お会いできた事をとても嬉しく思っております」


そういって自己紹介と握手を交わしていた。

まあ、グスタフさんは人格者なので何の心配もいらない。

今も3人と和やかに話をしている。


「ねえ、グスタフさん。再会できて嬉しいけど仕事が忙しいんじゃないの?」


「いえ、面会希望の中にカイン殿のお名前がありましたので、せめて一言挨拶だけでもと思いまして……」


「そっか、ありがとう。でもあまり長居をしても迷惑だろうし早めにお暇するよ。詳しい話はまた今度にしよう」


「お気遣いありがとうございます。ですが1点だけ確認をさせて下さい。カイン殿は何故勇者様とご一緒されているのですか?」


「……あ~、言ってなかったね。今俺は王国で勇者指南役代理人をやってるんだ。だからこの3人を指導してるって訳なんだよ」


「……なるほど、そういう理由でしたか。解りました、ありがとうございます」


その後、もう少し会話をしつつ今日の所はお開きとなった。

王宮を出て帰る途中に、グスタフさんの事を質問されたので説明しておいた。


「今の皇帝の補佐をずっとやってた人で、解ってるだろうけど滅茶苦茶有能だぞ。そして、俺が冒険者側の被害者なら向こうが王宮側の被害者だ」


当時アイツがやった事の尻拭いを俺を含めた他のメンバーでやっていた頃、王宮内でアイツが不在である事による問題を解決していたのがグスタフさんだった。

何しろ皇帝が1年の半分も王宮にいないのだ。

それで国をまわせるのだから、グスタフさんをはじめとする官僚達がいかに優秀か語るまでもないだろう。


その後、街を見て回り食事も済ませ宿に帰った。

俺が部屋で1人でいると、カレンが部屋を訪ねてきた。


「……あの、先生。昨日仰ってた《最巧》って呼ばれてたお話を聞かせて頂ければと思ったのですが……」


……あ~、そうだった。多分思い出したくなかったんだろうな、俺。

それでも約束はしたのだからと、3人の部屋に行き話す事にした。


「つっても、面白い話でもないぞ。どこの国でも名の通った人物は称号で呼ばれる事があるだろう?お前達だって《勇者》、《守護騎士》、《聖女》って呼ばれてる訳だし……」


「……まあ、私の《勇者》は称号というよりも役職なんでしょうが……」


「それはさておき、《クラウ・ソラス》のメンバーも当然称号を持ってたんだよ。《剣帝》《一騎当千》《大賢者》《聖母》そして《最巧》ってな……」


「確かにどの方も有名な方ばかりですね。……ですが、私達はお師様が《最巧》と呼ばれていたとは知らなかったのですが……」


「まあ有名なのは《クラウ・ソラス》だからな。7年前に抜けた奴の名前なんて、お前らが知らなくても無理ないだろうし、俺も積極的に名乗りはしなかったしな」


「……でも、導師様ならパーティーを抜ける時に引き止められなかったのですか?それほどの実力者なら、導師様の実力が解らない訳では無いでしょうに……」


「……いや、すげー揉めたぞ。静観が1人、やや反対が1人、反対が1人、そして大反対が1人で特に大反対の1人はいまだに納得してないはずだ」


正直なところ、アイツに会う以上にその人に会うのが精神的にきつい。

結局納得はして貰えなかったし、最後は家出みたいな形で出て行ってしまったから俺に対して相当怒っている事だけは予想がつく。

戦力としてではなく、仲間として、家族として引き止めてくれてた分だけ、あんな形で別れた事に罪悪感がある。


「……俺が我儘言って抜けた形だからな。正直顔を合わせ辛い」


「あの、どうして先生は《クラウ・ソラス》を抜けようと思ったんですか?」


「……師匠を探したかったんだよ。ここで調べられる事はもう無かったからな」


「何か手掛かりが見つかったのですか?」


「逆だ。何も見つからなかったから他の国を巡って手掛かりを探そうとしたんだ。《剣聖》とか《森の王》《鉄の王》と知り合ったのはその為だな」


「……でも、今現在でも手掛かりは無いのですよね」


「……ああ。実力的には上位魔族以上だし、大魔族が噂通りの性格なら師匠である事は考えづらい。外見的にも目立つから姿を見せていない可能性が高いしな」


隠遁した生活を送りたいなら、あのまま俺といても良かったはずだ。

でも、師匠の手紙の内容からはそれが出来なくなった事が書かれていたし、何らかの事情があるとも記されていた。

結局、他の国にも手掛かりは無く現状手詰まりな事には変わりがないという訳だ。



その後も質問攻めにあったが、適当なところで切り上げて就寝する事となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ