第109話 目的達成
残り2話です。30日、1回目の更新になります。
俺は2人から話を聞いて
「あ~、それだと下手すりゃ1年は掛かるぞ。とても期間内には済まねーよ」
と、俺なりの見解を述べる。
すると2人が凄く必死な声で
『先生っ!!何か良い方法は無いんですかっ!!何でも良いんですっ!!』
『お師様!!お願いですから何か方法を考えて下さいっ!!』
と、言ってきた。
……2人共かなり精神的に追い込まれている様だ。
精神面を鍛える良い機会なのだが、それをすると本気で泣きかねんな、これは。
仕方なく現在の状況と、自分なりの解決方法を分析する。
「……まずは、無くさない大きさの青鋼と緋緋色金の欠片を2つずつ持ってこい。そうしたら今度はそっちの通信石から掛けてこい。俺のはもう魔力が切れそうだ」
そう言って、1度通信を切る。
通信石は内蔵した魔石の魔力により動いているが、魔力が切れると使えなくなる。
だから俺は魔力の消費を、通信した側のみに限定した。
受けた側が消費しなければ、今回の様に掛けなおす事で長く使えるからだ。
……決して以前に通信石を作った時、酔っ払いの愚痴を両方の魔力が切れるまで、延々聞かされたから改造した訳ではない、本当だぞ。
しばらくして向こうから通信があったので、俺の考えた方法を教えておいた。
……時間が過ぎて、あれから1月が経った。
私とルミラは、今日の採掘分をドヴェルグ殿に確認してもらう。
「……驚いたな。まさか1月半で集めちまうとはな……」
「「……やったああああぁぁぁ!!!!」」
私とルミラが抱き合って喜びをかみ締める。
……長かった、本当にここまで長く辛い日々だった。
いくら掘っても青鋼も緋緋色金も出ない日もあった。
いつまで経っても終わりが見えない事に、絶望しそうになった。
しかし、私達はこの難題をやり遂げたのだ。
ああ、これでようやく毎日つるはしを振るう日々から解放されるんだ。
もう朝起きて採掘して寝るだけの生活は終わるんだ。
身体を離しルミラの顔を見ると、少し涙ぐんでいたが、気持ちは一緒だ。
2人で過ごしたこの1月半は、今まで以上に私達の絆を深めたのだった。
「しっかしお前ら、最初は全然駄目だったのに途中から凄い勢いで掘り当てたな。……なあ、物は相談なんだが……」
「駄目です。……それにあの方法は、私では長持ちしませんから」
「そうですね、お師様ならずっと使える物も出来るでしょうが……」
1年は掛かると言われた作業が、こんなに早く終わったのは先生のおかげだった。
あの時、先生は
『いいか、カレンが純魔力を使えた時、試しに付与魔術を使ったのを覚えてるか?出来は良くなかったけど、今回はそれを使う』
「あの、先生?私じゃ、先生みたいには出来ませんよ」
『解ってる、だから付与は1つだけだ。どれでもいいから欠片を1つ手にしろ』
先生に言われた通りに、青鋼の欠片を手にする
「……先生、言われた通りに青鋼の欠片を持ちましたけど……」
『そうしたら、その欠片ともう1つの青鋼の欠片を近づけた時、鈴の音が鳴る様にイメージしろ。距離が離れれば小さく、近づけば大きく鳴るようにだ。イメージが出来たなら付与してみろ』
私は、先生の言う通りに付与してみた。
すると何とか、先生の言っていた効果が付与されていた。
それを先生に報告すると、緋緋色金でもやるように言われた。
同じ付与をしたそれぞれの欠片を、もう一方に近づけては離すを繰り返した。
実験の結果、2メートルまでなら反応する事が解った。
『十分だ。明日また同じ付与をして壁に近づき、音が大きく鳴る方を掘ってみろ』
翌日言われた通りにやってみると、作業効率が圧倒的に上がった。
当たり前だろう。今までは掘ってみなければ解らないものが、確実にあると解った状態で掘っているのだし、音の大きさで大まかな方向まで判別出来るのだから。
先生に喜びと共に報告すると、
『もし可能なら、同じ付与したものを他のドワーフにも渡してみろ。向こうだって希少金属が見つかるんだから悪い話じゃないだろう?』
と、提案された。
まずは何人かのドワーフに欠片を渡してみると、翌日にはもっと多くのドワーフと様々な金属の欠片を持参して、付与するように頼まれた。
私達は、青鋼と緋緋色金を私達の装備に優先してもらう事を条件にお互い納得して交渉を終えた。
こうして一気に採掘ペースが上がり、僅か1月半で目標を達成したのだった。
ちなみにこの方法を使って1人で採掘した場合、採掘を終え帰る時には常に大きな鈴の音が鳴り続けてうるさいと文句が出た結果、最低2人以上での採掘が推奨されそれぞれが欠片が対応しない方をまとめて持ち帰る事で、無事問題は解決された。




