プロローグ 魔王の間直前にて
初めての投稿になります。拙い作品ではありますが、気長にお付き合いいただけたらと思います。
目の前には巨大な扉。重厚で荘厳な雰囲気を醸し出している。
その奥から発するのは強大で邪悪なオーラ。
…まあそりゃそうだろう。この扉の向こうにいるのはまず間違いなく魔王なのだから。
「先生!遂にここまで辿り着きましたね!」
「…ああ、そうだな…」
俺に向かって気合十分に話しかけてくるのは、肩口まで伸ばした金色の髪に均整のとれた身体。
先月16歳になったばかりの彼女の身長は、平均よりやや低いくらいだ。
10人いれば9人は口をそろえて美少女だと評するだろうが、身長のせいなのか
その純粋すぎる性格のせいなのか、やや幼く感じられてしまう。
その身に纏うは青く輝く鎧。ドワーフの名工が彼女の為だけに造り上げた逸品だ。
そしてその手に持つは、黄金の輝きを纏う彼女のみが扱うことを許された剣。
邪悪なるものを滅し世界を救うとされる、いわゆる聖剣というやつだ。
彼女の名は、カレン・フォウ・ベテルギウス。紛う事無き勇者様である。
「…お師様。なんですか、その覇気のない返事は?」
「まあまあ、導師様にはきっと深い考えがあるのでしょう」
そういって俺に話しかけてきたのは、背中の中ほどまで伸ばした赤い髪をポニーテールにまとめたややキツ目な感じの少女と、腰にまで届く長い銀髪を三つ編みにしたおっとりとした感じの少女だった。
俺をお師様と呼ぶキツ目の少女が、ルミラ・テオ・シリウス。
導師様と呼ぶおっとりしたほうが、フィリア・イル・プロキオン。
どちらも守護騎士、聖女という二つ名をもつ勇者パーティーの一員だ。
ルミラは年齢は17歳。
女性にしては長身でスレンダーな体型だ。
目元がややキツいがカレンに劣らない程の美少女だ。ただどちらかといえば異性よりも同性に人気が出そうなタイプなのかも知れない。
白銀の鎧を纏い、大型の盾を持ち身の丈を超える槍を持つ重騎士で、その体型がらは考えられない程の力をもつ。
巨大な魔物の攻撃もその力と技で防ぎきる、守りの要だ。
フィリアは年齢は18歳。
3人の中では一番小柄だが彼女は3人の中でもっとも体型が女性的だ。
…まあはっきりいえば胸が大きいのだ。
どの位かといえば男ならまず最初に目がいく。
すれ違えば振り返る程だ。最低という無かれ、男ならあれはしょうがない。
ルミラあたりからは
「…これが持つ者と持たざる者の差なのね。…ふふふ…」
などと返答に困るセリフを聞かされたこともあるくらいだ。
そのおっとりというか穏やかな性格の相まって、一番大人っぽく包容力にあふれた美少女というよりは美人のほうに近い感じだ。
まあタイプは違えど3人とも美少女または美人に違い無い。
白を基調とした法衣と呼ばれる服装の上に金属製の胸鎧(特注品らしい)を着け、小型の盾とメイスを装備した僧侶で強力な神聖魔術を得意とするパーティーの回復役だ。
そして俺ことカインは魔術師である。
年齢は29歳。
中肉中背で黒髪を雑に切ったこれといって特徴の無い外見。
平民なので姓はなくただのカインだ。
魔術師といえばおそらく大抵の人間が、呪文を唱え火の玉や氷の矢、風の刃や土壁などを出し敵と戦う。
そんなイメージだろう。間違ってはいない。普通、魔術師といえばそんな感じだ。
…うん。ただ俺はその手の魔術は使えない。適正が低かったのだ。
俺が使える魔術は、魔力そのものを放出、変化させる普通魔術、幻を見せる幻術、そしてもうひとつ付与魔術だけだった。
付与魔術とは自分を含めた対象物にさまざまなものを付与する魔術だ。
エンチャントといえば解る人間も多いだろう。これを聞けば戦闘に向いてないのではないかと思う人もいるだろう。
その通り。向いてないのだ。
普通魔術は魔弾などで攻撃出来るが、威力の面で火風水土を使う元素魔術に劣るし、幻術はその名の通り幻を見せるものなので直接的な攻撃力は無い。
付与魔術はさまざまなものを付与するけれど、一般的には火風水土光闇といった属性付与、攻撃力防御力精神力といったものを強化または弱体化する身体付与などがある。
なんだ付与魔術なかなか使えそうじゃないかと思った人もいるだろう。
確かにサポート役としては汎用性も高く使いどころも無くは無いのだが、正直魔術師に求められるのは広域殲滅型か一撃必殺型のダメージディーラータイプが多い。
俺の場合たとえば魔弾に火の属性付与をつければ火球の魔術の代わりにはなる。
ただ魔弾+火の属性付与分の魔力を消費するし手間もかかるから効率が悪い。
なら最初から火球の魔術を使え、そっちのほうが手っ取り早いという話である。
そもそもパーティーとしても一般的な元素魔術師と付与魔術師のどちらかを入れろとなれば100人いれば99人は元素魔術師を選ぶだろう。
俺でもそうする。
付与魔術師の役どころは完成したパーティーを更に強固にするといった+α、おまけなのだ。
そんな俺が何故勇者パーティーの一員になり、魔王と対峙する直前まできているかといえば、何だろう…正直乗るつもりもない船に乗ったらとんでもない勢いで沖まで流され、帰る為には必死で漕がなきゃいけなくなった様な感じといえばいいのだろうか?
本音を言わせてもらえれば俺には、世界の為に命を懸けて魔王を倒そう、等という高尚な志など無い。
降りかかる火の粉は払うが、世界の為、平和の為にこの身を犠牲にして…というのはやりたい奴だけやってくれといった感じなのだ。
結局の所こうなった一番の原因はあの時(…絶対に厄介ごとだ、関わるな)という警鐘に従わなかったせいというか、もうあの時点では避け様が無かったというか、ほぼお前のせいじゃねーか覚えてろよコノヤローというかそんな感じだったのだ。
本来読む専門のつもりでしたが、ここで様々な作品に触れることで自分の中に
(こんな話はどうだろう)という気持ちが芽生え筆をとりました。至らぬ所も多いと思いますが忌憚のない感想など頂けたら幸いです。
初めての投稿ですので自身の更新ペースが掴めていません。まずはなるべく週1回を守りながらペースが上げられそうなら上げていこうと思います。