高校初の友達ができました。
なんだか体の力が抜けて、膝から崩れ落ちる。
「ねぇ、今、なんか聞こえなかった?」
「うん、そうだね。」
また聞こえた。幻聴、なのかな。私、とうとうおかしくなっちゃったのかもしれない。
「ねぇ、さっき叫んだのってアンタ?」
「え? 私、です。」
近くで声をかけられ、顔をあげてみる。すると私と同じ制服を着た2人の女の子が不思議そうに、驚きのあまり目を見開いた私を見ていた。
「あ、本当にアンタだったの。ねぇ、なんでこんなことになってるか知ってる?」
私が話そうとして、「あの、えっと…。」とどもっていると、
「待って、自己紹介とかしないと。」
黒い髪を後ろで一つに結んでいる少女が冷静にツッコミを入れる。
「面倒くさいから後でいいでしょ。で、何でこんなことになったか知ってるの?」
ミディアムくらいの茶髪をいじりながらぶっきらぼうに答える。
マズイな、怖い人に絡まれてしまった。この人達も止まった時間の中で動けてるのか。私がやったって言ったらどうするだろう。怒るかな。やっぱり信じてもらえないのかな。
「知らないんじゃない? 無理に問い詰めちゃだめだよ。」
私がしばらく考えていると、一つ結びの少女がたしなめるように言う。
言うしかないよね。
「ごめんなさい。たぶん、私がやったんだと思います。」
一瞬眉間にしわを寄せたかと思うと、ゆっくり息を吸って「説明して。」と、目の前の少女が髪をいじっていた手を止める。
「その、私が魔法をかけてしまって。あ、いや、信じれないですよね。ごめんなさい。はは。」
どうしよう、とてつもなく恥ずかしい。痛い人じゃん。
「ふうん。だってよ。琴。」
「信じていいと思うよ。困ってる時はお互い様でしょ。」
「琴がそう言うなら。ほら、立ちなよ。」
手を差し伸べてきた少女の表情はさっきより柔らかい。
差し伸べてきた手をつかんで立ち上がると、その少女は軽く微笑んで言う。
「あたし、藤宮レイ《ふじみやれい》。よろしく。レイでいいから。」
「えっと、私、夏海冬李。冬李でいいです。よろしくお願いします。」
「タメ口でいいのに。」
「すいませっ…、ごめん。わかった。」
恥ずかしい。コミュ障全開じゃん。
「私は、青樹琴葉。琴葉とか琴って呼んでね。よろしく。冬李。」
「よ、よろしくっ。」
一つ結びの琴葉は少し真面目そうな印象を受ける。
一気に2人も友達ができた。私、意外とやればできる子なのでは!?