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「相変わらず凄いわよユウナ。早くみなさい。」
「ユウナ、降りるぞ。」
「……あ、はい!」
私は、お父さんとお母さんに促されて車から降り、約6時間ぶりに地面に脚をつけた。そして、あまりにも非現実的な光景に一瞬頭がクラりとした。
(ここ……本当に日本?)
トレニア、ルピナス、ニチニチソウ、クレマチス等の植物が、一見不規則に植えられていた。しかしよく見ると、背丈が小さい植物から、奥にかけて大きな植物になるよう、奥行きが出て庭が広く感じられるように、考えてられて植えられているみたいだ。また庭の左奥には、立派な赤バラのアーチが作られていてお金がかかっているのが分かる。
そんな花たちが咲き誇る美しい庭には、私が今立っている車庫から家のドアにかけて、アーチの潜る様な形で、レンガで出来た車が1台通れるくらいの広さの道があった。
テレビ番組で一度見たことが有るだけなのだが、今見える立派な庭は、イングリッシュガーデンというものに似ている。いや、もしかしたらそれなのかもしれない。
そんな立派な庭の向こうには、今通っている校舎と同じくらいの大きい建物が一件、建てられている。クリーム色の壁、窓はシンプルだが縁が上品。右半分にはガラス張りの場所がある等、本当に意味が分からない。とりあえず、お金がかかっているとしか分からない。
門をくぐって直ぐに抱いた印象は、日本離れした庭と家……と言う事だった。
(ソウ、ニホンチガウ。ココハ、ガイコク……。)
あまりにも非現実すぎて、飛んでしまいそうになっている意識を保たせるために、どちらにしても非現実的なのだが、(あの、さっき通った重々しい門は、青い猫耳のない猫型ロボットがポケットから取り出す“ど○でもドア”のような働きをしていて、日本じゃない何処かに行ってしまったんだ。)と、現実逃避をすることにより、何とか意識を保つことに成功していた。
しかし、そんな私の気持なんかは無視して、非現実は歩いてやって来た。
「やぁ、久しぶりだな。イサム。」
初老くらいの男性が、私達にそう話しかけながら、目元にうっすらと優し気なシワが刻み、ほほ笑みながら歩いてきた。それに対して、お父さんは若干嫌そうに苦笑いを浮かべる。
「父さん……。」
(へっ?お父さんのお父さんって事だから……おじいちゃん!?)
お父さんから、おじいちゃんはもうすぐ59歳だと聞いていた。しかし、髪は染められているのか白髪1つも見つからない。むしろ、背筋が綺麗に伸びているせいか、どう見ても40代前半くらいにしか見えなかった。
正直言うと、お父さんとおじいちゃんを交互に見比べても、兄弟にしか見えなかった。
「あはは……相変わらずお変わりなさそうで。」
私が戸惑っている中、お父さんは感じ悪く返事をする。しかし、おじいちゃんは不快そうな表情は見せず、お父さんを一瞥してから、そのままお母さんの方に声をかける。
「セナさんも元気そうで。良かった良かった。」
「お久しぶりですお義父様。はい、お蔭様で。」
そんな感じに、お母さんと軽い挨拶を交わすと、今度は私の方へ体を向けた。そして、私と目を合わせると先ほどより微かに笑みを深めた。
「君がユウナかい。よく来たね。」
「え……あ、はい。」
「今日はもう疲れていると思うから、お昼を食べたら部屋でゆっくりと休むと良い。部屋には家政婦のアマネに案内させよう。」
そう言うと、おじいちゃんの後ろにいた50歳くらいのお婆さん、アマネさんに声をかけていた。
アマネさんは「畏まりました。」と返事をし、おじいちゃんがお母さんの方へ向き直って再びお話を始めた時、惚れ惚れしてしまうほど綺麗なお辞儀をして、彼女は微笑んだ。
「アマネです、よろしくお願いいたします。それではユウナ様、ご案内いたします。」
何と返事を返せばいいのか分からなくなっていた私は、取りあえず会釈をしてから、アマネの後について行ったのでした。
週刊にするとか言いながら、遅くなってしまってすいませんでした!!




