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ペアルックってやつだろうか?
バンダナ以外同じ服を着た3~5歳くらいの男の子が、多種多様の花が咲き誇る美しい庭に居た。
赤色いバンダナを着けた男の子が、庭の隅に体育座りをした白いバンダナを着けている男の子に、元気よく声をかける。
「ねぇ!隠れんぼしよ?」
その声に一瞬びくりと肩を震わせてから振り返った男の子は、赤いバンダナをつけた子と同じ顔茶色の髪、同じ茶色い目の色をしていて、瓜二つ。白いバンダナをつけた男の子は、赤いバンダナをつけた男の子の顔を見ると
「うん……お兄ちゃん。」
嬉しそうにはにかみながら、赤いバンダナの子の差し出した手を握って、ゆっくり立ち上がる。
……そんな微笑ましい姿を、何故か私は疎ましく思いながら、2階の窓辺から見下ろしていたのでした。
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…………ナ……
誰かの声が聞こえてきた。しかし、誰だろう?静かにしてくれないかな、まだ眠いの。そう思っていても、私の気持ちを無視して、誰かは大きな声を出している。文句を言いたいけど、体が重くて動けなかった。
「……ナ、……ユウナ!起きなさい。もう着くわよ。」
「……っは!え!?どこに!??」
お母さんの声に目を開けると、ルームミラー越しにお父さんが苦笑いしている姿が見えた。
急に動くようになった体を持ち上げようとしたが、シートベルトで座った位置に固定されていたので、起き上がる必要がないことに気がついた。
寝すぎて頭痛がする事を不快に感じながら窓の外を見ると、見覚えのない町並みだった。
そりゃそうか、確か住んでいる所から高速道路で5時間走りっぱなしで着くと昨日聞いた。そこにもう着くということは、最後の記憶は家から出て10分くらいした時車酔いをした事だから。
(かなり寝ていたなぁ……私。)
冷房で冷やされて冷たくなった窓に手を当てながら外を見ていると、お父さんが運転している車がゆっくり速度を落としていき、大きな門の前で止まった。
その後、お母さんが車を降りて、塀に設置されていたインターホンを押す。すると、押しても引いても開かなそうな、黒光りしている鉄で出来た門が、誰も触っていないのに横に動いて開いた。
私は、なんとも非常識なその光景に、息を飲んで眺めていた。
おかしい。普通のお爺ちゃんの家と言ったら木造平屋で、庭に柴犬を飼っている又は三毛猫を飼っているものだと思っていた。
私の両親は共働きであり、私達は普通のアパートに住んでいて、私は一人っ子で、希望した私立高校に金銭的にも何とか入学できている。
今年は夏休み両親とも同じ日に取れて、お爺ちゃん家に御呼ばれしたから、たまには皆で行こうという話になって……と、なんとも平凡な日々を送っていたので、平凡な夏休みを送るのだと疑いもせず思っていたのだ。しかし……
顔を右に動かして窓の外を眺める。すると、しっかりと整理された生垣、花壇で美しく咲いているバラの花が見える。
視線を運転席の方に戻すと、車3台分くらいの大きさの、車庫と思われる物が、自動で白いシャッターを開けていた。シャッターが開くと予想通り、車が止まっていた。私の友達の中に、女子なのに車が大好きな子がいる。その子が言っていたのを見て覚えていたが、その止まっている車は確かトヨ● MIR●I!!……つまり、高級車が2台止まっていたのだ。
「お……お父さん!?ここ、本当にお爺ちゃんの家……お父さんが住んでいた家だよね!?」
私が混乱しながら尋ねると
「そうだぞ?あぁ、そう言えばユウナを連れて来たこと無かったな。父さん、この家には嫌な思い出があってな。はははっ。」
呑気に笑いながら、車庫の空いている部分に車を入れたのでした。