表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居合いスキルで少女は無双する  作者: 冷水
第一章:竜ノ産声
7/13

ドラゴンの産声、その先にある未来


 歴史を見ると、残虐な殺戮を行ったのは、常に敗戦国だと語り継がれる。

 政治家や為政者、独裁者や貴族、或いは世襲国家の頂点に座る存在が、そんな妄想を作り出す。


 最も怖いのは、同じ人類であるはずの隣人が、国家理性や国益と称して、昨日まで100円で売ってくれたパンを、今日から1000円積んでも売らないと拒否されることである。

 その陰湿なところは、倍の値段を払うと言っても、三軒先のパン屋も、更に遠くに足を運んで小麦粉を買おうとしても、事前に示し合わせて誰も売ってくれない所にある。

 そこに、人類の残虐性が隠れている。


 

 では、国家にとっての国益とは何か。

 あの国は、存在していて欲しい。

 だけど、あの国は消えて欲しい。


『商売の邪魔だ、目障りだ、私の取り分が減ってしまう』

 最初は、そんな些細な動機から経済的な戦争に発展し、物理的な殺し合いに至るのである。



 では、ドラゴンの卵を売った勇者達はどうであろうか。

 彼らは、祖国で王家の人間である。

 何よりも、国益を優先する人種である。


 幼少の頃より英才教育と政治を学ぶ彼らは、例え身分を平民に落としても、祖国以上に優先すべきことは存在しない。

 ドラゴンの卵にどれ程の価値があるのか、分からない程の愚者(ぐしゃ)ではない。


 歴史上、存在を確認されていない未知に出会ったならば、国家の理性としての在り方は、持ち帰り調査する事の方に利益を見出すはずである。

 だが、彼らはそれをしなかった。


 それは『知っていた』からだ。

 ドラゴンの卵がどのような結果を生み出すのか。

 

 貴族や王家、宗教などに共通するのは、存続させる上で知りえた『膨大な知識』を、誰の目に触れることなく蓄えている所にある。

 その中で『ドラゴンの卵』とは、孵化(ふか)すればどのような結果になるのか。

 それを勇者が知らない訳ではなかった。


「あの商都、地図から消えてしまえばいい」


 どんな情勢下でも、誰にでも商品を売る『パン屋』など、国家にとって邪魔でしかない。

 大軍(たいぐん)で攻めても意味が無いなら、その懐に爆弾を(しの)ばせれば良い。

 壊せなければ、壊れてもらえば良いだけの話だと。



----

 ある日、商都の一角でドラゴンが孵化した。

 

『ピギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ』

 商都に響き渡る、ドラゴンの産声。

 その声は魔力を(まと)い、遠く離れた親鳥にまで響き渡る。


 だが、その時は誰も、本当の恐怖に気付かない。

 一体でも、数万の軍勢と渡り合うドラゴンが、群れを成して近づいていることに。

 

 国家の斜陽(しゃよう)か、英雄の誕生か。

 生き残る道は、諸行無常の理から外れない。



 一つだけ、この世界において確かなことがあった。

 神様が全ての行いを見ていること。


 森羅万象、未来も過去に至るまで。

 この世界の神は、人類の神。

 人類に繁栄を願う神だからこそ、一つの(さい)を振ったのだ。



----

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ