外伝 ミナヅキという少女
私は月夜。皆本月夜。
今は木々が鬱蒼と生い茂る、森の中を歩いている。
「これから、どうしようか」
楽しそうに話している少女は、カンナというゲーム仲間で、今は旅の仲間でもある
私はこの世界がどういう世界か、神様から漠然と聞いている。
ゲームのようなファンタジー世界であり、魔物がいて魔法があって、魔王や勇者なんて存在がいる世界。冒険を生業とする者が、気軽に英雄になり、そして死んで行く世界。
命の価値が軽い世界。刹那に生きることが、当たり前の世界。
私が巻き込んだなんて、打ち明ける日は来ないかもしれない。それでも後悔しないよう、精一杯生きようと思う。
「私は昔から、何でも出来るような錯覚をしていたの」
学校の成績や人付き合い、何にも失敗しない詰まらない人生。
「ん? どうしたの? いきなり」
「ちょっと、私の懺悔を聞いて欲しいなって」
私より一回り年上の彼女は、この世界ではとても頼りになった。
同時に、自分がただの少女であったのだと、実感させられた。
「思い上がって、自分に与えられた課題を十二分にこなせる事で、自分は努力しなくても何でも出来るって思ってた」
例えば、ゲームも現実も。
「でもこの世界に来て、私はテントの張り方が分からない。料理はしたことがなくて、私一人だったら心細くて何も出来なかった。思い上がってた」
私の身勝手で、カンナのことを巻き込んで、この世界に来てしまった。
「いいや、こんな現象に巻き込まれても、俺よりミナヅキは冷静じゃないか」
それは、ただ知っていただけ。
きっと、心苦しいほどの葛藤があった末に、彼女は秘密を打ち明けてくれたのに。
「ねえ、カンナ。この先も私と一緒に、ゲームみたいに冒険して欲しい。色々な所に行って、色々な景色を見たい」
「それは、告白かな?」
茶化すように言う少女は、生き生きしていて、輝いていた。
「冗談は置いとくとして……」
一息おいて、カンナは真面目な表情になって言う。
「気が済むまで、この世界を見て回ろう。俺と一緒に、来てくれる?」
この前、質問で返した仕返しなのか。
カンナは意地悪く、それでいて勇ましく手を差し出してくる。
格好良いな。
やっぱり、この人は男性なんだなと、その時に思った。
例えるなら宝塚の役者のように、雄々しく凛々しいその瞳に、女性じゃ浮かべられない柔らかな表情。
女性の優しさは、絡めとるような危うさがあるけど、男性のそれは直情的でまっすぐに来る。やはり生来の違いが、あるのだろう。
「改めまして、よろしくお願いします」
隣りを歩きながら、私は神様に感謝していた。
あの時に呟いた『カンナとオフ会をしたい』という願いを、神様はこういう形で叶えてくれた。
この先に波乱があったとしても、私はその事を恨んだりはしない。
「カンナって、男性だったんだよね。何だか女の子の扱いに慣れてない? 引きこもりなのに」
「え? ああ。一時期、接客業もしてたから。人生経験の差でしょ」
笑ってはぐらかされるけど、それを嫌だとは思わなかった。
----