表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

満月が見る

作者: 稲見晶

月が空から落ちてきた

受止めたなら目になった

下が幾分(ひず)んでいるのは

何処かにつけてへこんだらしい


右の眼窩に月を嵌め

見慣れた景色が知らぬ色

花の香りに家族の円居まどい

眠りの数と音の波

万事は光の水彩画


彼処此方の隔てなく

月光が照らす朧道

ふと満天の星を仰げば

右目が郷里を思い出す


月は夜空を乞い焦がれ

歪んだ身では飛べもせず

思いは黒く渦を巻く

脳を抉って胸を食む


いつの間にやらこの身の中は

宇宙のようにがらんどう

冷たい虚無は劫劫と

鳴るばかりで響かない


遂に空ろが皮膚を割り

乾いた塵への崩壊の時

亡き国のモザイクタイルを近く見ゆ


渇望の穴地に落ちて

何一つ叶えられぬまま

這いずり悶え

物に触れれば飲み込まずにはいられない


煮え滾る闇に地球が覆われ

ごぷりごぷりの音も止み

後には空があるばかり

誰も見ぬ月が浮くばかり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ