真っ黒な心
素敵な出会いがあった翌日なのに、いつもと何ら変わらぬ朝が来た。
陽菜と優希葉と駅で待ち合わせをして、一緒に登校する。
「……それでさあ、香織ちゃんっていう舞妓さんがね」
舞妓ファンの優希葉が熱く語っているが、これはいつものこと。
三人でいる時が学校生活の中で一番楽しい時間だ。
電車とバスを乗り継いで、学校につく。
教室のドアを開けてみるとあら不思議。
確実に昨日までとは異なる空気で溢れていた。
「おい! お前がチクったんだろ?」
教室の隅に人だかりができていて、その中心には怒鳴る志水と、昨日化粧をしていた川村みほがいた。その隣には、理穂たちが。
「花奏と優希葉と陽菜! こっち来て!」
荷物を机に引っ掛け、理穂のところまで行って、尋ねた。
「どうしたの?」
「ラインで送ったじゃん」
答えた彼女の声はどこか嬉しそうだった。
「ごめん。きのうライン開いてなかったわ」
ちゃんとみてよ、と言いつつ悪口星人の一員である、なつみが丁寧に説明してくれた。
川村みほがクラスメイトの校則違反をすべて教師へ教えたらしい。
これだけ聞くと、みほの方が正しいように聞こえるけれど、問題はそこではない。
なによりもみんなが怒っているのは、彼女自身も校則を破っているのにもかかわらず、自分のことは棚に上げ、クラスのことを悪者に仕立てあげたからだ。
みほが学校に化粧をしてきているのは周知の事実として、実際、私も彼女がスマートフォンを授業中にいじっているのを見たことがある。
自業自得じゃん、と思った。
それに、みほは馬鹿だ。
よりによって志水を敵に回すというのは、クラスメイト全員を敵に回すことに匹敵する。
このままでは、孤立してしまうに違いない。
……まあ、この事件より前に友達といるのを見たことがないが。
面倒臭いことになったけど、しばらくは楽しそうだ。