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私たちは家族です。

作者: 私達は家族です。



いつもの夜。

両親の怒声が聞こえて、私は、そろりと目を開けて階段を下った。

まだついていた居間の明かり

ヒステリックに叫ぶママのシルエットが見えた。

あまり、音をたててのぞいてはいけない。

のぞいてる事がバレると、怒りはパパではなく

なにうろうろしてるの!こんな遅くに!と私の方に向いてくるからだ。


ーーー


ーーーーー



扉越しだから見えなくても 想像はできる。

こんな時は

パパは不機嫌そうにずっと俯いているだけなのだ。反論すると長くなるから。黙ってる方が楽だから。そんな逃避な態度が、さらにママを苛立たせていることには、残念ながら気付いていないらしい。

ママは前髪をかき分けもういい!と叫んで、おそらく最近はずっと共にしていないだろう寝室にバタン!と閉じこもった。


喧嘩はもう終わりかな

仲良くしてほしいなあ。

私はとたとたと階段を駆け上がり、再び自分の布団の上で目を閉じた。



ーーー


ーーーーー



いつもの夜

やっぱり両親は喧嘩していた。



そして気配に敏感な私は眠れずそろりとそれに聞き耳を立ててしまう。



いつもいつも

パパとママはなにをもめているのだろう。





ーーーのせいよ!

あなたのせいよ!


またあなたのお母さんに言われたわ

はやく孫がみたい、

孫がみたいって!

そんな急かされても私一人でどうにかなる問題じゃないじゃない!



ーーー


ママはなにをいっているのだろう?

聞こえなかったわけじゃない小首を傾げた。

孫てなんだっけ

パパのママの孫は

つまりパパとママの娘か息子でしょう?

私だってお婆ちゃんには会ったことあるよね

なんでそんなこと言うんだろう。


よくわからなくて

寂しくなって

扉を恐る恐る開けると

ママは 私をにらみはやく寝なさい!と叫んだ。

とても、冷たかった。

もしかしたら私は、虐待されているのかもしれなかった。







そう思い返すと、やっぱり私へのママの態度はおかしい。

猛暑に自分は冷たい冷たい氷をいれて

汗にしみた服の胸元をぱたぱたさせながら

わざとらしくオレンジ色のジュースを飲んでいるのに、私には氷もなければ

温い温い水道水だけ。

そっち欲しいなとさりげなく訴えても

怒るから、冷たいそれを想像して喉を潤すそれは

やっぱりぬるくて、ぬるいだけならまだいいけど、時折髪の毛が浮いて

舌に絡みつく。

満足にご飯も作ってくれない

家に閉じ込めるような真似もしてくる

そしてやっぱり時折

私なんかいないみたいな顔して。




それでも、ママは私のママだった。

パパは私のパパだった。

さっきはごめんね

大好きよ、て夜中に撫でて、怖い夢みたら

たまに一緒に寝てくれる

そっちの方が本心だって、私は信じてた。



虐待されてたからなんなの

毎晩喧嘩してたからなんなの

私たち家族は、そんなのじゃ壊れない



いくつもの夜を越えても

そう信じ込んでいた。


だからー、許せなかったの。

家族でもないあいつが、出入りするようになったのが。






わざとらしい金髪は、パパの清楚な黒髪とは大違いだった。チャラチャラとしてて、絶対ママのこと幸せなんてできっこないのに

ママはメロメロで仕方ない顔をしていた。

気にくわないのが、ママを狙う、ただそれだけのためにこいつは私を気に入ってるフリをする



「可愛いじゃん 名前なんていうの?」


答えたくない。


「輪花ていうのよ」


こたえないでよ、ママ。




「お菓子持ってきたんだ 玩具も」



ちょっと気になるけど、いらない。


「ほら、優しいでしょ?もっと喜びなさいよお」


いやよ。


だってそうでしょ?

ママ狙いのあなたからしたら

私はママとパパの血を継いだ子で、面白くないに決まってるじゃない。とっとと追い出して、自分とママの血がつながった子がほしいに決まってる。

だから、そんな気に入ったフリなんてしないで。バレバレなのよ

わざとらしく丸いボーロを、いらないのよと弾くと

ころころとフローリングを転がった。

怒られる前に、二階に駆け上がってないた。


嫌いだった

この家族はもう限界なのかもしれない。






「ごめんなさいね我がままな子で」

「いやーいいよ、それより俺この時間帯にきて大丈夫?旦那さん帰ってくんじゃない?」

「大丈夫大丈夫

出張だって、いってたもの」



パパ、お願いだから帰ってきて

そんな怒られる度俯いて

私がいないみたいな発言されてもなにも返さないで

知らない男が上がりこんでも、なにもしないなんて

それじゃだめよ


大黒柱は不仲という白アリにくわれてぐらついている。でも、まだ、確かにそこにあるの




「誰だ!」



ほら、やっぱりあった。

パパは帰ってきた。覚えててよかった

だって、出張は明日からだもの



ママは驚いて叫んで、男は面倒ごとはごめんだと出て行った。


長い長い、どんな夜よりも長い怒声が聞こえた。それでもパパも叫んでた

いつもの喧嘩じゃない本心の投げ合いだった。



それは実に愛だった。




「だって、辛かったのよ

あなたなにも返さないし

輪花も最近冷たくてすぐ逃げるし、私の味方なんて家族なんて、どこにもいないの

だから欲しかったのよあんな軽そうな部外者でも家族になってほしかった」


「そんなこと言うんじゃない

俺と君、そして輪花

俺たちは家族だ 幸せだろう

もうー、傷つけ合うのはやめよう」


パパとママが抱擁しあうのを

久しぶりにみた。嬉しかった。


きっとこれで私たち家族はハッピーエンドだ。


なのに。パパは景気付けるように手をたたいて言う。

「子供のことも、考えよう!

俺と君の子供、何人ほしいかな

人の親になるのなんてはじめてだから

今からそわそわするよ!」


そんなパパに、ママはまるで女みたいな顔をして照れて言った。

「気がはやいわよ、馬鹿」



喧嘩してる顔はいやだけど

こういう顔もちょっと見づらいかな。


私とは、仲直りしてくれないの?と

ママとパパのとこに歩み寄ると

二人はぎゅっと私を抱きしめてくれた。

なんだか分からないけれど、やっぱり虐待なんかではないみたい。


だって二人の目は穏やかだ

愛情に満ちて、さっきだって俺たちは家族だ、て言ってくれたし。


それなら、いつか

私が最初の子供だって、認めてくれるだろう。



「男の子か女の子か、楽しみだな」


そうね

妹か弟が出来るなんて




私も楽しみよ。




『えー、ニュースは終わります

次は、人気の可愛いペットのコーナーです!

そうそう

犬ていうのは本当に不思議ですよね

この前なんか椅子に座って朝食を待っていて‥

人がきても普通なのに犬をみると避けたり

犬の扱いを受けるのを、なんか不思議がったりします

野生の犬とか見たことなくて、人間しか見てないから。

特に飼い犬なんかは自分のことが人間だと思い込んじゃうんでしょうね。

出かける時も普通についてこようとするし、本当可愛い

お子さんがいなくて寂しい新婚さんも

代わりに犬を飼うこともあるとか!



でも、犬ていうのは家族なんですから

可愛い、寂しい、ていうだけで飼って軽率に捨てるのはダメですよ?

ペットの責任は生涯終えるまできっちりとりましょう!



彼らは、自分の子供 そのものなのですから!』









end


読んでくださってありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 意外性があって、面白かったです。
[良い点] 好きなお話でした
2016/08/25 23:20 退会済み
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