1【始まりのLIAR】
嘘つき。
【liar】[名](特に常習的な)うそつき
英語の辞書を引くと、こう出てくる。
嘘つきな人って、人に好かれないよね。
だって、嘘をつくんだもの。
例えば、学生の間で
『課外の課題で、提出日いつだっけ?』なんてやりとりがあるのは日常的。
メールで皆夜にやりとりしてるんじゃないのかな?
例えば、その課題の提出日が水曜日の授業だとしよう。
その課題は水曜日に出すはずなのに、『木曜日の放課後だよ!』
なんていわれたら、水曜日の課題提出日には間に合わないし、単位とられちゃうよね。
そう思うと腹にこない?
きっときちゃうだろうね。
だけどさ、嘘つきは嘘つきでも、『誰かを守るための嘘つき』て、素敵だと思わない?
誰かのために、自分自身を犠牲にして嘘をつくんだから。
でもそんな人・・・本当にいるのかな?
そんなことを、僕は今、授業の真っ最中に考えていた。
当たり前の日常の中で、勉強をして、成績を出すこの競走社会ともいえる学校生活の中で、ぶっちゃけ僕は少々飽き飽きしていた。
最近なんだか物足りないんだ。
あまりにも普通に日々が過ぎて行って、いつもなんとなく時間だけが進み、もうあっという間に一年が過ぎ去った。
もうすぐ俺は高校二年生になる。
だけど・・・残り二年間を、このままなんとなく過ごしてしまうのは、とてもじゃないが、俺はそのままにしておきたくない。
勿体無いじゃないか。
折角の一度しかない高校生活を、このまま『なんとなく』過ごしていくなんて。
何か・・・何か起こしたいんだ。
「おーい佐倉!聞いてるのかぁ?」
「へ?」
ちなみに只今情報処理の授業中。
先生が、10進数と2進数について俺達に計算の仕方を再度説明してくれているときだった。
情報処理室の前に置いてあるマスターPCの後ろの馬鹿デカイホワイトボードに、小学校の頃に計算した覚えのあるような計算の仕方を書き表している。
「・・・スミマセン聞いてませんデシタ・・・。」
「いいからこの計算しろ!」
ばんっ!ってホワイトボードを叩いて俺に計算するように言った数式は、
1110
これは2進数から10進数への変換をする計算だ。
だから、こうやって解く。
「えーと・・・多分・・・。
1 1 1 0
× × × ×
8 4 2 1
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
8 4 2 0=8+4+2+0=14
だから2進数1110の10進数は14じゃないんですか?」
疑問系に回答すると、先生は、「お前実は聞いていたんだろ・・・」とか呟きながら、俺に座っていいって言った。
席について俺は今度はホワイトボードを見ながら、さっき考えていたことの続きを考えた。
嘘つきだけど・・・それでも誰かを守れるというのなら・・・それって・・・やっぱりなんかカッコイイかも。
悪い嘘をつくよりは。
その日、俺は滅多に行かない図書室に向かった。
なんとなくだったんだ。
何読もうか迷っていると、ふと、一冊の本に目を引かれた。
その本のタイトルは・・・
「【Liar×Liar】?」
うそつき×うそつきって一体どうゆう意味だ。
かなり意味不明なタイトルだけど、俺は本を開いて冒頭の内容だけを軽く読んだ。
1人の魔法使いがいました。
彼は、『嘘つきな魔法使い』として、人々に嫌われていました。
最初は、彼も何故自分が嘘つきな魔法使いと呼ばれるのか自分にも分かっていませんでした。
でもある日、彼はやっと気がつきました。
それは、雨上がりの夕暮れ時のことでした。
嘘つきな魔法使いが道端で、大きな水溜りをなんとなく覗いたときでした。
彼の顔には、ピエロのような仮面がつけられていました。
次の日鏡をみると、今度はファントムの仮面でした。
また次の日は、狼の仮面でした。
つまり、彼は気がつかないうちに、自分の顔を教えない嘘つきだったのです。
「なぁにこれぇ!これが本だっていうの?意味不明な始まり方・・・!」
その時は、ここまでしか読まなかったため、内容までは入ることなく、本棚に戻して、俺は学校を出た。
いつも通りに、いつもの通学路を寄り道しつつ帰っていると、もうあっという間に夕日は沈んでいて、街の街灯がちらほら点きはじめていた。
流石にもう帰ろうかな・・・そう思って、今日はいつもは通らない近道の公園を抜けて、行こうとしていた。
その公園では、街灯がたったひとつしか置かれていなかった。
その街灯は、公園に入る前までは、しっかりと電気がついていたのに、俺が公園に入ると、カチカチと点灯し始めた。
「おかしいな・・・昨日あの街灯誰かが電球変えてたはずなのに・・・。」
不思議に思いながら、俺はその街灯を通り過ぎようとした。
すると、街灯の電気がぱっと消えて、辺りが見えなくなった。
「うわっ?!」
突然街灯が消えてしまったので、俺は驚いたが、すぐに街灯はついた。
しかし、街灯の下には、誰かが腕を組んで寄りかかっていた。
先ほどまで誰もそこにはいなかったのに・・・。
「あ・・・。」
俺がその人が現れたことに驚いて気をとられていると、その人は俺の方を長い前髪の下の仮面から見ているのか、小さく微笑んだ。
街灯に手を置いて、クルっと街灯を一周すると、その人は仮面の下から微笑みながら、俺を指指した。
「・・・アンタ・・・一体・・・?」
「Liar」
「リアー?」
聞き返すと、彼は頷いてまた微笑んだ。
そして、俺に向けていた手を下ろすと、ゆっくりと近づいてくる。
頭の上に乗せている小さなシルクハットについているフリルが揺れる。
スカートのような部分がはためく。
白い厚底のブーツは音を立てることはない。
「貴方も、Liar。そして、私もLiar。」
「うそつき・・・?」
「そう。でも、悪いうそつきじゃない。世の中に広がる邪気を消し払うためのうそをつく。そうすれば、あるべき者達も、あるべき場所へ帰るの。」
「・・・なんなんだよ!!もう!!俺に関わるなよな!!!」
俺は、Liarに背を向けて走り出した。
その時俺は、Liarが一体なんのことをいっているのかよくわかっていなかった。
それに、Liarの話をまともに聞こうともしていなかった。
兎に角、怪しくて、俺は警戒していたんだと思う。
だけど、Liarは確かに見た目は怪しいかもしれないけど・・・
そう警戒するほどの人じゃなかった。
本当は、いい人だったのかもしれない。
それは、後の話で分かること。
まったり更新します。
まったりと。