闇夜の出会い
一分後…
「ブッハー!! 死んだじゃねえかよ、あの男!」
直前まで意識を失っていた俺は、跳ね起きて叫んだ
説明しよう、俺は特殊な体質を持っている。それは、死んでも生き返る…というより、死なない。そんなゾンビみたいな体質だ。だがゾンビとは違い、痛覚はあるし、太陽の下でも活動できる。
どこぞの不死者のようだが、これにも欠点がある。
それは、蘇生、もしくは再生に1分ほど時間がかかるという制約付きなのだ。
他は……長いから省く
「全く、酷いもんだ」
「ふわあっ!?」
声が聞こえた。しかも女の子のだ。とりあえず周りを見渡してみる。
視界に映ったのは、俺と同じくらいの年の少女だ。線は細く、髪は肩まで、後は暗くてよく分からない。
「な、なんで…生きているんですか…?」
なんだよ、その「自分が殺しました」的な言い方は…。もっと他に言葉あるだろ。
しかし、マズイな。ホントにマズイ。
もしかしたら、死んで意識がなかった間のことを見られていたかもしれない。
「なんのことですか?」
「なんのことって、さっきまで死んでいましたよね?」
「死んでいた? いやいや御冗談を」
「いえ、しっかりと脈と呼吸と瞳孔を確認しました」
どんだけ律儀に死亡確認してんだよ。だけど、そこまでされるとヤバイぞ
「ど、どうしてなんですか」
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ、どうすんだよ俺! オレェェェェェエエエエ
「クッ、こうなれば」
こうなった場合の手段は
「富岳三十六計逃げるが勝ちだぁー!」
そう、逃げる。思いっきり、例えるなら、100mで世界新記録出すくらいの速度で…
これが実際に出るのだから怖いことだ。8秒だって7秒だっていけちゃうぜ?
どうしてそんなに力が出せるかだって? 俺は何度か死んでるから、脳が筋肉にかける制限が緩くなって居るのだ。
回りくどいから、はっきり言うと火事場の馬鹿力に近い。脳のリミッターが外れかけているから、ある程度は人間の限界を超えられる。だが、俺自身の肉体は、少し鍛えられた程度のものなので、限界を超えた分、負荷に耐え切れずに自壊する。
俺の体は、その自壊したぶんもしっかり再生するから、多少の無理は利いてる。むしろ、破壊と再生を繰り返すからこそ、人間の限界を超えた力が出せるのだろう。
そうやってどこかの誰かに説明しているうちに、少女の姿がみるみる内に小さくなっていく。追いかけてはこないようだ。
完全に見えなくなったところで、走るのをやめた。
「何なんだ、さっきの女の子」
少しだけ気にはなったが、すぐに頭から切り離した。
「もう会うことなんてないだろう」
それと同時に、通り魔のことが気になった。
「俺のことを知ってたわけじゃなさそうだし…、無差別って考えるのが正しいよな。それに、あの体捌き、どこかで…」
考えながら、夜の道を歩く。そうしているうちに家についてしまい、何も得ることなく、その夜は終わった。