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MISSION 5

MISSION 5



 オルフェは手持ちカードをチェック。

 ブリザードリボルバーはブランク状態=再使用まで時間を有する。

 現在は使えない。

 だが、もう1枚。最初に使ったカードはしっかりとイラストが描かれている。

 クリアーブルーの結晶で作られた巨人、Bペルセウスが勇猛なポーズを取っているカード。

 このカードを見つめ、オルフェは心強そうな笑顔となる。

「ラストスパート……。頼みますよ」

 獰猛な口を広げ、強襲するHシーサーペントの目前に位置するオルフェは豪勇に地を踏み締め、カードを翳し、輝かせた!

「カードアクション、ブルーペルセウス!」

 雄雄しき巨人、Bペルセウスが上昇するように召喚!

 迫り来るHシーサーペントに氷結の霧を吹き付ける!

 突進する海蛇は苦しみ悶え、ペルセウスから離脱。更に上空へ舞い上がった!

 

 所変わって、何も無い平地。

オルフェの居る崖と近隣都市との間。

 上空を見やり、BペルセウスとHシーサーペントの開戦を把握したセレドニオはブラックのカードを構える。

「よし、俺達も続くぞ! Bギガンテス!」

 クリアーブラックの結晶巨人Bギガンテスが出現! 戦場である天空へ駆け上がる!

 まずは海水海蛇の身体にアッパーをキメる!

 が、水で形成されたボディには何の意味も持たない。

 セレドニオはそんな事は承知済み。

 本当の意図はBギガンテスの存在を相手に確認させる事であった。

 事実、己の身を通過したブラックき巨人にHシーサーペンとは反応を示す。

 結晶巨人の中でも一際マッシヴな肉体デザインのBギガンテスが子憎たらしい笑みで、人差し指を内側へ回し、挑発を仰ぐ。

 Hシーサーペンターは咆哮し、ターゲットをブラックの結晶巨人へ変更。

 猛突進! 

「よし来た! Bギガンテス、メタルボックスメイキング!」

 セレドニオがコマンドを吼える。

 Bギガンテスは巨大で極太の両手を突き上げ、その掌から金属を出現させる。

 その金属はぐにゃぐにゃと形を変えていき、真正面のみが開いた、金属箱を完成させた!

 突進して来たHシーサーペントは箱の中へ飛び込む!

「掛かったな!」

 ニヤリ。口を不敵に歪ますセレドニオ。

 Hシーサーペントが突っ込んだ金属箱は〔Hシーサーペントを包み込むように〕伸び進んでいく!

 伸びていく上下左右の金属板が海の災害獣を覆い隠していった。

 ……が、一定の長さ・Hシーサーペント本体の3分の1までの地点で金属板の伸びは停止。

「む、伸びの限界か……。ここでシャットダウンだな。ギガンテス!」

 Bギガンテスは御意し、伸び切った金属板の先の箱の入り口を新たな金属を出現させる事で蓋をする。

 これにより、Hシーサーペントの頭部より3分の1を異様に長い金属箱に封印させた。

「お~い、マッチョにーちゃ~ん」

 あどけないというか、能天気そうな声。

 アリサがYヘリオスの肩に乗っかり、セレドニオの下へ飛んで来た。

「来たかアリサ。後は頼むぞ! メタルボックスに電熱を流し、内部の海水……Hシーサーペントを完全蒸発させるんだ!」

「うん、まっかせるおー!」

 アリサはYヘリオスの肩からひょいと降り、クリアーイエローの結晶巨人・Yヘリオスは長い金属箱へと飛翔!

 Yヘリオスは両平手を翳し、雷を金属箱へと放った!

 途端に電気に包まれる金属箱!

 高電熱が内部へと伝わっていく。

 内部の海水=Hシーサーペント頭部は電熱を受けて苦しみ、悶える。が、出口の無い箱の中。

 もがく以外の事は出来ないのであった。

 高圧電流の放出を続けるYヘリオスを横切るBペルセウス!

 ペルセウスの右肩には主であるオルフェの姿が有った。

 その姿を確認する。セレドニオとアリサ。

「あ、オルにーちゃんだお!」

「オルフェ……残りはお前らに頼むぞ……」

 オルフェは「そちらは頼みます。後は任せて下さい」と、思い、セレドニオ・アリサを横切った。

 次第に疾走するブルーき結晶巨人の姿は小さくなり、セレドニオ・アリサらには見えなくなってしまった。

 ペルセウスが突き進む平行線上の海水で出来た蛇の体……。

 Hシーサーペントの残り3分の2がうねうねと動き出し、先程の3分の2の長さの新たな形態となる。

 その一連の流れをオルフェは目にした。

「縮小再生ですか……。ですが、勝つのは僕達です。どんどん追い詰めますよ!」

 オルフェの向う側より来るグリーンの存在。

 それはGキルケーとその主であるローラだ。

「オ~ルフェっちぃ~」

「ローラさん。では、次の作戦に移りましょう」

「おっしゃ!」

 オルフェとローラはひょういと巨人から飛び降り、近くの屋根へと着地。

 続いて、ローラはカードを天へ向ける。

「カードアクション、サイクロン!」

 風音轟く! 大嵐が招来!

 大回転しながら突っ込む嵐は海水のボディを分断する。

「今ですペルセウス、前半分を凍らせるのです!」

 Bペルセウス、メデューサの盾を突き出し、冷凍ガスを放射!

 海水を凍結させていく……。

「よぅし、Gキルケー、あんたも援護だよっ!」

 Gキルケーは首肯し、自身を回転。

 嵐と化す。

 先程発動されたサイクロンと共に、ペルセウスの冷凍ガスをより広範囲に分布させていく!

 そして最後の、Hシーサーペントのボディがまた新たな縮小ボディのサーペントを作っていく。

 その時、スモーククリアーホワイトの膜=バリアーが再生しようとする海水ボディを包み込む。

 これはホワイトのアースカードの力……。

 カリーネが発動させたバリアコーティングである。

「今です、ドミニクさん!」

 カリーネはドミニクの隣に居た。

 そのドミニクは2つのレッドカードを輝かせている=使用している。

 ドミニクとカリーネの目の前に、バーニングバズーカを構えた、クリアーレッドの結晶巨人・Rアレクサンダーが発射体勢を取っていた。

「おっしゃぁ! ブッ放てー、Rアレクサンダー!」

 レッドの特性……火炎の力を全てバズーカに集中させ、溜め込んだエネルギー弾……。

 その溜め込んだ超光熱火炎を発射!

 隕石並みの迫力で火炎弾は真っ直ぐ突き進み、バリアーで回避が出来ないようにされた最後のHシーサーペントの海水ボディへ叩き込んだ!

「蒸発しやがれっ!!!」

 溶岩に落とされた物体の如く、轟炎に包まれたHシーサーペントは見る見るうち、蒸発。

 超高熱により、失われていく水分。

あっと言う間に散華した。

 胸郭を張り上げ、ガッツポーズするドミニク。

「うぉっしゃあ!」

 ドミニクはいつにも無く、歓喜していた。

 憧れのヒーローとして、被害を極力出さず、沈静化させる。

 自分はヒーローを演じるだけの存在ではないんだという喜びで一杯だった。

 敵が蒸発していった様子を遠目で確認したオルフェ。

「ドミニク君、カリーネさん……やりましたね。さて、ローラさん、そろそろ僕達も決めますよ!」

 ニカッと歯を見せ、サムズアップするローラ。

 オルフェは新たにブルーのアースカードを構え、翳す。

「カードアクション、ブリザードリボルバー!」

 巨大な冷凍銃=ブリザードリボルバー光臨!

 トリガー及び、ガングリップはBペルセウスの盾を持っていない手によって握られた!

「フィニッシュです! ブリザードショットォ!」

 Bペルセウスは狩人の如く、容赦ない連射の豪雨を撃ち放つ!

 休む間も無い乱射!

 その上でのメデューサの盾より、美女の口と蛇髪の蛇口腔より放たれる冷凍ガス。

 MAX凍結化攻撃の応酬!

「こっちも忘れて貰っちゃ困るよぉ!」

 Gキルケーの旋風が更に冷凍ガスを飛び散らす。空間を冷凍攻撃で満たす。

 逃げ道など……存在しない。

 海水が……Hシーサーペントの身体が凍結していく……。

 恐ろしく巨大だったあの海蛇が氷の彫刻と化していく。

 まるでそれは彫刻のような美しい造形……。

 動かなければ、暴れなければ美しいと言ったものか、海蛇の氷像が光沢を反射し、天を彩る。

「う~ん、美しい造形ですね……それだけに葬るのは勿体無い。ですけど……」

 オルフェはローラへアイコンタクト=打ち合わせ通りの作戦指示を送る。

「あいよ! Gキルケー・サイクロン、地球の外へ葬りなっ!」

 Gキルケーとサイクロンは左右並び、突風を発射!

 氷の彫刻と化したHシーサーペントを更なる上空へ飛ばす!

 雲を突き破っていき、成層圏へと突入していく………。

 宇宙空間は寒い。と、いうのが現実だが、オルフェ達の時代の文明では宇宙・天体の存在は望遠鏡にて確認されてはいても、まだ誰も宇宙そのものの性質までの事は解明されてはいない。

つまりは、知らない。

 だが、二度と戻って来れない彼方へ葬れると、あながち間違いでも無い予想の元、氷漬けにされた海蛇災害獣を地球外へと放り出す。

 天空の彼方を見やるオルフェ。

 これで戦いは……津波・Hシーサーペントとの戦いは終わった。

 オルフェは涼しい顔で肩の力を抜き、ある人物の事を思い出す。

(有難う御座います……ジェノーラ婆さん。貴方のお陰で、僕はアースカードと手にし、レスキューウィザードとして災害・ハザードクリーチャーから人々を守れています)

 


 ―――その頃、ジェノーラ婆さんの家。

「ありがとうジェノーラ婆ちゃん、絵本読んでくれて」

「バイバーイ!」

 7歳そこらの少年と少女が手を振り、婆さんの家を後にした。

「いやいや、暇になったらまたいつでもおいで。ババアで出来る暇潰しならいつでもやってやるさ」

 とてとてと帰宅していく少年少女を柔和な目でジェノーラ婆さんは見送る。

 1人になった婆さんはやかんに沸かした紅茶を注ぎに台所へゆったりと歩き向う。

 その際、写真立てに張られた写真……。

若き魔法使いだった自分と今は亡き夫に、2人の仲間が楽しそうな表情で写っている写真に目がいく。

「爺さん、マック、エレン、カトレア、ハインツ……。アースカードは今頃、どう使われているのかのぉ……」

 やかんを持ち上げ、婆さんはカップへ熱い紅茶を注ぐ。

 ふと、自分と自分の魔法使いの仲間とでアースカードを造った経緯を振り返る。

 魔法は使えれば助かる事は多いが、発動・呪文・条件が面倒であり、魔法文化が廃れ、機械産業が発達していった時代。

 ジェノーラ達は魔法文化が消える事と財力で機械・兵器といった便利な力を得るようになる時代に対し、どうも悲しく思い、より便利な方法で誰でも魔法を使えるにはどうすればいいかを考えた。

 それが、〔アースカード〕。

カードという、コンパクトな媒体へと進化させた。

ついでに被害探知機である宝玉をも作った。

だが、これらを国へ売り込もうとはしなかった。

その代わり、各国の遺跡・神殿などに隠し置き、更に「伝説の魔法カードがある」という噂をユーロップ全土へ情報を流した。

理由は財・富の無い者へ力……出来れば正義を行使可能にする力を与える機会を設けたかったからだ。

噂として発信し、散策へと仕向けたのは苦労して探してまで欲しいと思う人物にこそ与えたいと思ったからである。

一部は一旦貴族・富裕層へと回ったデッキもあったが、結局の所、権力者ではない者へと渡った。

 事実はそうだが、ジェノーラ婆さんや他国で隠居し、存命中の魔法使いだった老人・マック、エレン、カトレア、ハインツは知らない。

 他界し、天へ召されたジェノーラの夫・ラルフはどうだかは分からないが。

 だが、信じておきたい。

 心正しき者が良き事にカードデッキと化した魔法を活用してくれている事を……。

 しゃがれた声で感慨耽る婆さん。

 カップが紅茶で溢れる前に、注ぐのをストップする。

「そういや、あのキザな感じの小童、今頃どうしているかねぇ~」

 ぼんやりとオルフェの事を思い起こしながら、ジェノーラ婆さんはホット紅茶を啜った。

 

 

 文字通り、氷の海蛇彫刻は星となった……。

 暗雲が身を引き、太陽の輝きがこの地へ祝福の光を注いだ。

 眩い光を嬉しそうに浴びる人々……。

 誰もが等しく光の祝福を受けていた。

 住人も、軍人も、そしてレスキューウィザードの6人も………。

 6人は屋根上に集結し、ミッションクリアに歓喜する。

「やったおー、災害鎮圧だおー」

「あぁ、太陽の光が最ッ高に気持ちイイぜ!」

「フッ……」

 カリーネは屋根上より、地上を見下ろす。

 水浸しにはなっているが、海水そのものは退いており、まともに地上を歩けそうな雰囲気であると確認し、ホッとする。

「良かった……特に甚大な被害は無さそうです」

 首を回し、疲れを解すローラ。

「あ~終わった、終わったぁ。これでギャラ、どんぐらいになるんだろ?」

「ちょっと、ローラさん、こういう時に打線的な話、止めて下さる?」

 カリーネの一瞥に、ローラはへらへらと笑う。

「いいじゃん、いいじゃん」

「そうですね。別に構わないでしょう」

 この爽やかな声。

 オルフェの方へ5人は注目する。

「自分の身について考える……。とても大事な事じゃないですか。僕達は自分達自身も、他人も建造物も守る……。それこそが、レスキューウィザードじゃないですか」

 指をパチンと鳴らすローラ。

「おっ、流石は我らがリーダー、オルフェっち、分かってるぅ~」

「フ、その通りだな……」

 セレドニオはニヒルに口元を歪ませた。

「もう二度と御免被りますからね。落ち着く場など無いと思って恐怖して生きていくのは………。余裕はあるに越した事はありません」

 オルフェは顔を上げ、天へと囁いた。

 そう、自分自身も他の命も建造物も守り通し、そこから悠々とした生活を再び送る。

 それこそが、レスキューウィザード。

 ハザードクリーチャーを倒す逸材。

 未だにハザードクリーチャーの発祥原因は不明だが―――災害自体、発祥原因が不明なものだが、彼らがいる限り、悲惨な災害被害が罷り通る事はないであろう………。




                      MISSON COMPLETE


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