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MISSION 3

MISSION 3



 現在の食料庫に居る、オルフェとセレドニオはこれまでの経緯を振り返っていた。

「へぇ~。そういう流れを経て、今があるんだなぁ~」

 取っ付きのいい、快活な青年の声。

 それに反応するオルフェとセレドニオ。

 声の主=ドミニクと幼き少女=アリサが地下階段からこちらへ降りて来る。

「やぁ、ドミニク君に、アリサさん、何か食べたくなったのですか?」

「うん、アリサ、オレンジが食べたくなったおー」

 向日葵のような笑顔を常時しているこの少女アリサはハキハキと大きな声でそう言った。

「そうですか……。オレンジは4つほど残っていましたよ」

「わーい、4つもあるんだー♪」

 歓喜の余り、両手を挙げ、高揚するアリサ。

「全部は喰うなよ。2つほどにしとけな」

 ドミニクの柔和ながらも、的確な注意を受け、アリサはキュートなシュートヘアーを揺らし、首肯。

「うん、分かったおー」

アリサはトテトテと歩み、食料庫へ手を伸ばす。

「お前は何も要らないのか?」

 セレドニオは「やれやれ」と保護者的目線でアリサを眺めるドミニクへ問う。

「あぁ。ただの付き添いさ。放っとくと全部喰っちゃいそうだしさ」

「そうですか……」

 蜜柑の皮を剥き、アリサはそのまま1粒千切らず、口を大きく開け、放り入れる。

「うほぉ~。マイウーだお~♪」

 美味という快楽の閃光にアリサは包まれるのだった。

 ―――しかし、ここでまったりとした空気が粉砕される。

 アリサが首にぶら下げている大きなペンダントの宝玉が唐突に輝く。

 オルフェ、ドミニク、セレドニオ、途端に真面目な表情となる。

「! 早速、またか……」

「おいおい、今度は何処だぁ~?」

 顔を険しくしたセレドニオとドミニクはアリサの持つ宝玉へと駆ける。

 アリサは宝玉の反応に今気付き、ペンダントを掴み、宝玉を覗く。

「んん~? ここは……」

 宝玉にはある映像が浮かび上がっていた。

 ―――それはとある雪山中にて雪山遭難している人間の、命の灯が消えかけている状況を映していた。

 この映像は過度のエマージェンシーに反応し、その現場風景を通達するものである。

 それをこの宝玉は可能にする稀有なアイテムである。

「雪山っつても、何処にでもあるからなぁ~」

「……何処か、調べてください」

「検索するお」

 アリサはその大きな宝玉の付いた、大きな宝玉を握り、両目を閉じて念じる。

 現場についての詳細を調べていく。

 宝玉はイエローからオレンジに色が変貌。検索モードに入った。

 調べ終わるまで、黙々と待つオルフェにセレドニオ。

 ドミニクはイライラと足踏み。

「……まだかよ……」

「終わったお」

「うぉ!? 何処だ?」

「スイルデン国・北部・バギン山・地上より上5000メートル地点だっておー」

「よし……。いつもながら、的確なサーチング、有難う御座います」

「えっへんだお!」

 鼻息を噴出し、アリサは胸を張った。

「……メンツはどうする? リーダー?」

 ドミニクはリーダー=オルフェに指示を仰ぐ。

「そうですね……。場所は雪山ですから、氷雪除去に特化したメンツがいいでしょう。ドミニク君、アリサさん、セレドニオ君。君ら3人で頼みます」

「おっしゃ、俺のレッドデッキの力、魅せてやるぜ!」

 ニカッとドミニクは笑み、拳を握り締める。

「現場指示はセレドニオ君、頼みます」

「任せろ」

 凛々しい顔のセレドニオはハッキリと首肯。

「ではアリサさん、ゲートを……。今回は現場が近場ではないので、ワープする必要があります」

「分かってるお! 任せるお!」

 アリサは腰ベルトに掛けられたカードデッキホルダーからカードをドロー。

 彼女の引いたカードはイエロー色の縁取りのカード。

 このイエローデッキ。以前、カリーネが所持して、後にアリサへ譲渡したものである。

「カードアクション、ライトニングゲート!」

 イエロー色のカードがフラッシュを発し、光が放射され、その先へ光輝く門=ゲートが形成されていく………。

「アリサ、繋がったか?」

 ドミニクはアリサへ訊く。

「う~ん、もうちょい………。あ、繋がったお!」

「おし、でかした!」

「行くぞ!」

 現場リーダーを担ったセレドニオの号令の下、光輝くゲートを潜りに3人は駆け込んだ!

 3人がゲートの先へ飛び込むと、その光り輝くゲートは消滅した。

 オルフェ1人、椅子に座って、ただただ結果を待つ事になる。

「皆さん、頼みますよ………」



 吹雪が激しく吹き荒れる……。

 ここはスイルデン国・北部・バギン山・地上より上5000メートル地点。

 そこへ光のゲートが出現し、その中から2人の青年と1人の幼女が到来。

「ぃよっとぉ」

 ズシリと雪積もった地に足を踏み締めるドミニク。

「か~っ、寒ぃなぁ~。どんな環境にも対応出来るよう設計されたハズの、このレスキューユニフォームですら寒さが伝わって来るぜぇ~」

「吹雪が凄いお……」

 冷静に周辺を見回すセレドニオ。

「ここの左右真っ直ぐの何処かに要救助者が居るのか………」

「マッチョニーちゃん、作戦はどうするんだおー?」

「マ、マッチョ……」

「プッ」

 笑い堪えるも、噴出すドミニク。

「笑うなよ……」

「笑い堪えたよ……」

「む……」

 いつも言われている通称であるのだが、どうも気分的に慣れないセレドニオ。

 確かにメンバー六人のうち、自分が最も長身・巨漢ではあるのは認めるが、改めてその点を指摘されるとどうも調子が狂うのであった。

「う、うむ……。そうだな。ドミニクとアリサは左右2手に分かれ、氷雪を除去しながら突き進んでくれ。俺は雪崩が来そうになった際、アイアンシールドなどで防御する」

「分かったおー」

「お前は待機するって事か?」

「お前らの姿が見えなくなっても、お前らの居る場へカードを発動出来るからな、付いていく必然性は無い」

 ドミニクはどうにもすっきりしない、酸っぱい顔をする。

「……お前、アリサの方へついていってくんねぇか?」

「……アリサ、お前本人はどうなんだ?」

 セレドニオは本人=アリサについて行って欲しいかを訊ねる。

「どっちでもいいおー。好きにするおー。どの道、アリサはレスキューして魅せるお!」

「……そうか。なら、1人で行け。お前は一人前のレスキューウィザードなんだからな」

「ちょ、おま……」

 鼻息を噴出し、自信に満ち溢れた顔でアリサは敬礼。

「任せるおー!」

「おい、セレドニオ、どういうつもりだよ」

「お前は過保護過ぎだ。彼女を信じてやれ」

 セレドニオはポンとドミニクの肩へ手を置く。もとい、身を乗り出そうとするドミニクを押さえた。

「……分かったよ。でも、何かあったら、頼むぜ。俺よりお前の方が早く対応出来るからな。あ!」

 何と、会話している内、いつの間にか吹雪が止んでいた。

 実に唐突である。

「吹雪が止んだお」

 ドミニク、嬉しそうに指をバチンと鳴らす。

「お、ラッキー! これで要救助者を探し易くなったな」

「ドミニク!」

「セレドニオ……何だよ」

「俺は均等に助けるさ。よし、ミッションスタートだ!」

 セレドニオの号令を受け、ドミニクとアリサは御意。左右へ散開した!



 その頃、レスキューステーション。

 オルフェは地下階段を登り、居間へと移動。

「おや?」

 彼が目にしたもの。

それは息が上がってぐったり臥しているローラとカリーネであった。

「喧嘩は終了ですか………。状況を察するに、体力消耗により、中断したようですね」

「ち、違いますわ……。先にローラさんが倒れて、その後私がお情けで彼女が回復するまで休んであげているのですわ……」

 如何にも苦し紛れな言い訳をのたまうカリーネ。

「騙されちゃダメだよ、オルフェっち~。最初にこいつの方がバテたんだから」

 ふぅ。と、爽やかな失笑を吹き出すオルフェ。

彼は本棚から伝記を一冊選び取り、ソファーに腰をかけ、読書に入る。

「まぁ、結果は自己補完して下さい。その方が気分いいでしょうから……」

 そう言い残し、書物へと改めて集中。

 オルフェはレスキューウィザードとして活動して経済的余裕を得た為、その資金を書物集めに費やした。

 アースカードやアリサの持つ宝玉について暇さえあれば、調べているのである。

 先急いでいた為、ジェノーラ婆さんには細かい話を訊けなかった。

 だが、改めて冷静に考えてみれば、アースカードの起源を知る事は必要かもしれない。

 アースカードは量産不可能なのだろうか?

 そもそも、アースカードは本当に6つ・6種類しかないのだろうか?

 真実が知りたい。

 また、アリサの持つ、あの謎の危険察知・災害現場を察知するあの謎の宝玉………。

 こちらに至ってはアリサがある日拾ったものである点以外何もかも不明。

 今迄目を通した伝記や魔法図鑑には無かった。

 まだ、調べ足りないだけかもしれないが、一番謎の存在を解き明かさんとオルフェはページを捲っていった。

「……それにしても、中々分からないものですね……。アリサさんの持つ、あの宝玉の情報は………」

 その呟きに寝転がっているローラとカリーネは耳をピクリと立てる。

「あぁ、あの子のアレねぇ~」

「衝撃でしたわね。ドミニクさんとアリサさんが現れ、あの宝玉を見せつけられた時は………」

「そうですね……。あれは僕ら4人だけでレスキューウィザードをやっていた時でした………」

 ドミニクとアリサとの出会いを振り返るオルフェ達3人……。



 数ヶ月前。レスキューステーションが創設され、そこに居住・勤務するようになったオルフェ達。

 場所はレスキューステーションのある町より、南へ進んだ隣の隣町。

「皆さん、こっちから逃げて下さい!」

 カリーネはバリアーのカードを使い、完全防御を張った上で、万に一つも住人へ被害が及ばぬよう、避難ルートを確保し、避難経路伝達を行っている。

 剛腕を振るい、拳を突き出すブラック色の結晶巨人・ブラックギガンテス。

「行けー! Bギガンテスッ!」

 ブラック色の巨人が放った一撃はイエロー色く輝くユニコーンへと叩き込まれる!

 このイエロー色のユニコーン・雷の災害化身=Hユニコーン。

 こいつは落雷により、町を破壊しようとしていた。

 それを阻止・鎮圧せんと、オルフェ達人はアースカードを駆使して、激闘の真っ只中に居た。

 ストレートナックルを喰らったHユニコーンは悶えるが、反撃せんと、体内から雷撃を放出! その雷撃は周辺の住宅街へと押し寄せる!

「フン、甘い! カードアクション・ロックウォール!」

 セレドニオは新たにカードを発動!

 町周辺に岩石の盾を複数個所出現させ、雷轟から町を見事ガード!

 Hユニコーンの攻撃を無効化させた!

 攻撃が妨げられた事に動揺し、唸る雷の災害一角獣。

「おし、今だっ! Gキルケーッ!」

 主であるローラの命令を受諾し、グリーンの結晶巨人・Gキルケーは蔦状ウィップをHユニコーンへ振るう。

 雷のボディに接触し、蔦が電気を吸収……Hユニコーンのボディを磨り減らしていく。

「ようし、植物による、電力拡散作戦、上手くいっていますね……」

 セレドニオらの後ろ隣で、戦況を眺めるオルフェ。

 今回の敵は電気。水氷を操るブルーデッキ使いのオルフェに活躍の場は無い。

 だが、事前に立てた戦略考案という立場で貢献している。

 Gキルケーの蔦に繋がれたHユニコーンは見る見るうちに電力を奪われ、身体が縮み、やがては4足が消えていく……。

 蔦ウィップを通し、電気が拡散していく結果としての身体崩壊。

 もはや、虫の息となる。

 その様子を一、町人として観戦している2人が居た。

 ドミニクとアリサである。

 2人は手を繋いでいる。一緒に逃げようと思ったが、エキサイティングな戦闘に思わず目を釘付けにしてしまい、立ち止まって眺めていた所である。

「ス、スゲェな。これが最近組織されたっていう、レスキューウィザード……。伝説のアースカードでハザードクリーチャーを倒す存在かぁ……」

「ドミにーちゃん、直接見るのは初めてだね」

「そうだなアリサ。ようし……」

 ドミニクはある事を決意。

 同時にHユニコーンの駆逐が完了するのだった。

 オルフェ達4人は我が家にして、基地であるレスキューステーションへ戻らんと足を動かす。

「あ~、終わった、終わったぁ~」

「セレドニオ君、ローラさん、2人とも見事でした。カリーネさんも、見事な避難指示でした」

「ま、当然っしょ!」

「随分調子いい事ですこと。全体の指示・戦略はオルフェさんによるものだと言うのに」

 カリーネ、ローラへ冷笑を贈呈。

「実際そうだけど、あんたに言われると何か、無性に苛立つわぁ」

「奇遇ですわね」

 双方、歯軋りし、例の如くいがみ合う。

「下らん……。またか」

 額を抱え、呆れるセレドニオ。

「もはや日課ですね………」

 オルフェは肩の力を抜いて、失笑。

 するとそこへ、ある人影が……。

 オルフェ達4人の前に青年と幼女が燦然と並び立つ。

「? 君達、何か用ですか?」

 真っ先に気付いたオルフェは立ち塞がった2人に疑問を投げる。

 オルフェらと対面したドミニクは緊張という息を呑み、胸を張って用件を告げる。

「俺の名は、ドミニク。ストレートに言うぜ。俺、あんたらの仲間になりたいんだ!」

 真摯な眼光に、凛々しいヒーローフェイスのドミニクと名乗った青年は堂々と志願。

 流石にカリーネ・ローラも喧嘩を中断し、思わず、ドミニクに注目する。

「そうですか。嬉しいですねぇ~」

「マ、マジでか!?」

 ズンと顔を突き上げ、オルフェへと迫るドミニク。

 向こうも歓迎モード。

ドミニクは興奮せずには居られなかった。

「オルフェ、こいつにレッドかイエロー色のデッキを渡すんだな?」

「そうですよ、セレドニオ君。デッキを分散すれば、個人の負担が減り、より余裕のあるレスキューが出来ますからね」

「僕達も仲間が欲しかったところだったのですよ。広告を出して志望者を募っていたのですが、生憎既に持っている職業を抜けられない等の理由で誰も来ませんでした……」

「へぇ、そうだったんだー。でも、良かったね、ドミにーちゃん、アリサが加わって6人だおー」


「「「え?」」」


 一同、仰天硬直。

オルフェ達はてっきり、付き添いの子なのだと思っていた。

「ちょ、アリサお前もか?」

「うん! アリサもレスキューやるおー! だって、アリサには……」

 満面な笑みで、アリサは首にぶら下げているペンダントに埋め込まれたイエロー色の宝玉を掴み、オルフェ達へ見せ付けた。

「……これは何ですか?」

「これはねー、困っている人を見つけ出すものなんだおー」

 オルフェら4人は「そんなバカな?」と怪訝な表情に曇る。

「そうなんだよ。これ、5年前に2人で旅行した時、偶然拾ったモンなんだけどな……」

 ドミニクが顔を渋くして詳細説明。 

 説明し難いものを何とか噛み砕いて表現したような様子であった。


 ―――以上までの流れを経て現在。

 ドミニクとアリサはオルフェ達の仲間=レスキューウィザードの一員として活動をしていった。

「あの宝玉は非常に便利です。あれのお陰で、要救助者・災害を察知出来るようになりました。更にイエロー色カードの瞬間移動を使えば世界各国の災害現場に急行出来ます」

「いやぁ、都合のイイモン下げて来てくれて良かったってもんだよぉ~」

「下品な言い方、止めて頂けます? 仲間に対し、失礼極まりませんわ」

「チッ、へいへい………」

 ローラとカリーネ。両者、顔を苦くし、またもや睨み合う……。



 吹雪の止んだ雪山。

 火炎を纏った大剣が主=ドミニクに遠隔操作され、雪を掻き分けて進行。

「う~ん、まだ見つかんねぇな。でも、このラインに絶対要救助者が居るんだよなぁ。ファイヤーセイバー、くれぐれも人間は切らないようにしろよぉ」

 ドミニクは自身の前方で溶雪&除雪を行う火炎剣にそう、念じ、一歩一歩探し進む。

 反対側ではアリサが使用したエレクトロアームという、雷で形成された巨大な手が雪を左右へ投げ飛ばしながら、要救助者が居るとされるラインを歩んでいく。

「中々、見つからないお……。んん?」

 目の前はホワイト一色=雪だらけであったのだが、ここに来て、異なる色を発見。

 イエローグリーン色のジャケットらしきものがアリサの目に入った。

「あ! もしかして!」

 アリサはとてとて駆け出し、そのイエローグリーン色のものへ目を近づける。

 次いで、ポンとそのイエローグリーン色のものを叩き、声をかける。

「あのー! もしもーし!」

 アリサは大きな声を発した。

 にも関わらず、反応らしいものは来ない……。

「こりゃ、大変な状態なのかもだお……。こうなったら!」

 くるりと後ろを向き、アリサは声を張り上げる。

「ドーミに~ちゃ~ん、マッチョに~ちゃ~ん! 要救助者、発見したおーっ!!」

 まずは仲間を呼ぶ。

 自分一人で出来ない場面があった場合の次策として当然のアクションである。

 大声程度で現実、雪崩など起きないし。アースカードで電光を飛ばし、味方へ伝える手段はあるが、必要時に使えないと困るアースカードは極力温存しておきたい。

 だからこそ、堂々と声を発した。

 そのあどけない少女の招集音を受け、別箇所に居たセレドニオとドミニクは声の方角へと疾駆。

 その途中、セレドニオとドミニクは合流する。

「見つかったらしいな」

「あぁ……。アリサの奴、ちゃんと処置出来てんかな?」

 もどかしい顔になるドミニクをセレドニオはニヒルに嗤う。

「フ、随分と心配性な従兄弟だなお前は」

「保護者としての責任感と言ってくれよ……」

 ドミニクは目をジトッとし、苦言する。


 アリサは自分に出来る通達をした後、肝心要の救助を仲間の到着までに自分が出来る範囲ですべく、新たなカードをドロー。

「カードアクション、イエローヘリオス!」

 イエローのカードが眩い光を焚き、イエロー色の結晶巨人をこの雪山へ光臨させた!

「ここに埋もれている人が居るお。掘り起こすんだお」

 イエロー色の結晶巨人は時間切れで撤退したエレクトロアームに代わって、巨大な手を主が示した先へ突っ込む。

 雪を掻き分けていく……。

 そして、イエローグリーンの服を着た男を掴む。

 次いで、その隣に伏していたレッド茶の服の男を空いたもう片方の手で救出。

 取り敢えず、雪に埋もれている状況を脱した。

「おうし、電熱で暖めるんだお、Yヘリオス」

 イエロー色の結晶巨人は両手に握る2人に電熱を発して、凍えている2名を暖め始める。

「そのまま、下へ降ろしてー」

 アリサの指示を受け、Yヘリオスはしゃがみ、そっと雪上に巨大な手の甲を落とす。

 アリサは近付き、患者の様態を観察。

「う~ん、もう死んじゃったりしてないかな………?」

 硬直していたイエローグリーンの服の男―――。彼が僅かに動いていく。

「あ!」

 ピクリと動いた。つまり、生きている―――。

 表情が緩むアリサ。

「おーい、アリサッ!」

 アリサが見やった先……。ホワイト銀の地に2つの人影が段々大きくなっていく。

 ドミニクとセレドニオが駆けつけて来た。

「どういう状態だ?」

 セレドニオはアリサの隣に停止し、目の前のイエローグリーンの男へ視線を向ける。

「イエローグリーンの人はさっき、少し動いた。生きているお」

「そうか……」

 ドミニク、猛ダッシュのまま、もう片方のレッド茶服の男へ向う。

「こっちは……どうなんだ?」

 凝視するドミニク。

 しかし、こちらのレッド茶服の男は何の動きも見せない。

 隣にアリサが現われる。

「この人、死んじゃったのかな?」

「いや、待てって」

 ドミニクはレッド茶服の男へ近付き、男の袖を捲り上げて脈に指を触れさせる。

「……どうだ?」

 険しい表情で、ドミニクは相手の生死の確認に入った。

「ドミにーちゃん……。どうだお?」

「……むっ?」

 ピクッと、血流の動きを察知。

 間違いない。レッド茶服の男は生きていると看破。

「安心しろ。脈が動いた。こいつは生きている」

「はぁ、良かったおー」

 アリサは萎んだ風船の如く、安堵の脱力に入った。

 ドミニクは冷静にここからどうするか思案。

「……まだ、暖め足りネェのだろうか? なら!」

 ドミニクの腰にあるデッキケースより、一枚カードが抜き取られる。

 カードを掴んだその手は天へと上昇! 

 翳されたレッドのカードが発光!

「カードアクション、ミニマム・サン!」

 ドミニクの叫びと共に西瓜ぐらいの大きさの太陽が出現。

 まだ意識の回復しないレッド茶服の男の真上に立ち、暖め照らす。

 ……しかし、それでも意識が戻る様子はない。

「これでもダメか………。こうなったら、アリサ!」

「分かってるおー! 電気ショックだね。Yヘリオス、頼むおー」

 Yヘリオスは現在掌で軽く電熱を発し、凍結した男を温めていたが、電気ショックを放ち、ショック療法を試みる。

「レッツ、ショック療法だお……」

 細い雷が患者の身に迸る。

「う、うぅっ………」

 ぴくりと腕から動き始め、今まで微動だにもしなかったレッド茶服の男は唸り声を上げる。

「おっ!」

「ドミにーちゃん、意識取り戻したみたいだお」

「おっしゃ、やったな!」

「うん!」

 ―――再起したイエローグリーンとレッド茶服の男2人は魔法カードにより作られた極小太陽に暖まりながら、救出してくれた恩人と会話をする。

「……成程。ここにしか存在しない鉱物を求め、出向いたところ、大雪に包まれてしまったと」

 セレドニオはレッド茶・イエローグリーン服の男らの事情説明を噛み砕いた。

「えぇ。戦争に必要な物資を国に命令されて………」

「という事は兵器開発に携わる人なのか、あんたら」

 ドミニクは己が浮かべた推論をぶつけた。

「はい……。工場の物資調達係です」

「……で、目的のものは手に入ったのか?」

「それはまだ……」

 ドミニク・セレドニオは表情を酸っぱくする。

「……じゃあ、ここから帰るつもりはないのか?」

 セレドニオは問う。答えによっては、自分達の行動も変わって来るからだ。

 調達員の2人は互い見合わせ、苦悩。

「いやぁ、こんなトコすぐに帰りたいのは山々なんですけど……」

「任務だからなぁ~」

 あぁ、やっぱり。と、言わんばかりの返答。

 ドミニクらも難しい顔をする。

「だよなぁ~。どうしたモンかなこれ?」

 ザザザッ。音が聴こえる。

「んん?」

 アリサはふと音のする方へ顔を向ける。

「ねぇ、ドミにーちゃん」

「んあ? 何だアリサ?」

「雪崩……来てるお」

「な、何ぃ~っ!!」

 さらっと言われた言葉だったが、ドミニクのリアクションは激しいものであった。

 既に何かが迫る音は聴こえているので、嘘では無いのは承知。

だが、一応この目で確かめんとアリサと同じ方向へ見やるドミニクとセレドニオ。

 波打ち、純ホワイトの氷粒の塊が一丸となって、流れて来る!

 上からドミニクらの居る、下へと物凄い勢い・速さで滑り落ちていく!

「どうするセレドニオ? ゲート潜って戻るか?」

「……いや、この程度俺達のカードで凌げる! まずは俺に任せろ!」

 セレドニオはカードをドローし、ブラックアースカードを発動!

「カードアクション、アイアンシールド!」

 巨大な金属盾が光臨!

 セレドニオ達と雪崩の間に降り立った!

「こいつの後ろへ固まれ!」

 セレドニオの指示に御意し、疾駆。一同は一箇所へ集まった。

 盛大な雪量が巨大盾=アイアンシールドの左右へ分かれ飛び落ちていく。

 セレドニオらにとって、両端に流れる雪の壁が出来たようなものであった。

「うわ、スゲェなこれ……」

「壁みたいだお……」

 その豪快な雪崩の動きに呆気になるドミニクとアリサ。

 ぞっとなるレッド茶とイエローグリーン服の男。

「俺達、これに呑まれて死にそうになったんだよな……」

「あぁ、帰りてぇよ……。でもなぁ~」

 ジレンマの渦に酔う2人を黙々と眺めるセレドニオ……。

 一同は雪崩が収まるまで待つが、呆気なく即座に雪崩は止まった。

「あ、あれ? こんなモン? 早くねぇか?」

 ドミニクは途端に静かになった雪景色を見渡しながら、疑問を呟く。

「……って、何だありゃ!?」

 沈静化したかに見えたが、突如雪が空中に集束そくしていく。

「む! おそらくこれは………」

 セレドニオは大方この空中雪集束の意味を看破。

 そう、それは………。

 融合していく雪はずんぐりとした4足・胴体を形成。

 最後の仕上げに大きく平たい耳と細長い鼻、その左右に獰猛な牙が設立される。

 これは巨象……いや、マンモス。

 災害の化身、ハザードマンモスが誕生した!

 雪で作られし肉体は地へ降下し、壮大な地響きを発してこの雪原を踏み締めた!

 長い鼻を扇がせ、Hマンモスは雄叫ぶ!

 その煩さに思わず両耳を両手で塞ぐセレドニオら一同。

 身構えるドミニクにセレドニオ。

「ク、雪のハザードクリーチャーかよ……」

「あんたらはどうする? 選べ。ここから逃げて鉱物探しに行くか、それとも俺達にここから逃がして貰うか」

 セレドニオは鋭い眼光で冷然と調達員の男2人に問うた。

 もはや、悠長にこれからどうしようか悩む間などない事を悟る調達員。

「ど、どうする?」

「命あっての調達だ。今回は逃げよう。彼らがハザードクリーチャーを倒して平穏になった後でここへ出向く事にしよう。一旦ここから退いてまた登るのは面倒だが……」

「そ、そうだな……。決めたよ。俺ら、ここから逃げるよ」

「……いいんだな?」

「あぁ……」

 調達員2人は迷いの欠片もなく、真っ直ぐに首肯した。

「よし、アリサ。この2人を避難させろ」

「分かったお!」

「俺とドミニクで戦う。行くぞ!」

「おっしゃ!」

 セレドニオとドミニクは颯爽と駆け出し、雪の巨象へと突撃!

「「カードアクション!!」」

 セレドニオはブラックの結晶巨人……。

「ブラックギガンテス!」

 ドミニクはレッドの結晶巨人……。

「レッドアレクサンダー!」

 セレドニオとドミニクが凛々しいフェイスで咆哮!

「潰せ!」

「行けーっ!」

 Rアレクサンダーが火炎のランサーを突きの構えで突進!

 Bギガンテスは豪腕を突き出し、殴らんとダッシュ!

 Hマンモスとの激戦が火蓋を切った!


「カードアクション、ライトニングゲート!」

 アリサは光の扉を召喚。これで手っ取り早く調達員2人を逃がそうとする。

「さ、ここを潜るお。この山の下の町へワープ出来るお」

 これで非難出来る故、安堵に頬が緩む調達員ら。

 ……が、途端に表情が曇る。

「……なぁ、お嬢チャン。俺達がお嬢チャンらに助けて貰った事は内緒にしてくれないかな?」

「何でだお?」

「お嬢チャンら、ジャード国のレスキューウィザードだろ? つまり、俺達の国と戦争相手の1つの国民な訳だ。だから、お嬢チャンが俺達を助ける事は戦争相手に恩を売っている事になるんだよな。そうなると、戦争する時、俺達の国の方が肩身狭くなっちゃって、戦争し難くなっちゃうんだ」

「そうなると困るんだよねぇ~。お嬢チャン、分かってくれるかなぁ?」

「オジさん達、お嬢チャンらに助けられたとオジさん達の国にバレたら酷く怒られちゃうんだ……」

「ゴメンねぇ~。助けて貰っておいてさぁ~」

 ニヘラニヘラと卑屈な笑みで、幼い少女を丸め込もうとする2人の男。

「ゴメンはこっちだお……。アリサ、オジちゃんらが何言ってるか分かんないお……。でも、アリサの一存で決めるような事ではないお。それよりも早く、避難するお」

 幼きレスキューウィザード・アリサは閃光のような眩い笑顔でそう返す。

 巧く丸め込めなかった―――。

 調達員2人は舌打ちし、不機嫌な態度となる。

 その次にアイコンタクトをする。

 こいつを人質に取って、口封じさせてみるか?

 いいなそれ。名案だ。

 と、意思疎通完了。

 2人は実行フェイズへと移行を試みるが……。

「カードアクション、ブリッツタワー!」

 その名の通り、雷の柱が2本、調査員2人へ直撃!

 魔力の篭った雷撃は自由自在に調節が可能であり、相手を気絶・致死まではさせずとも、まともに身体を暫くは動かせられないぐらいのダメージを与えた。

「アリサ、実は知ってるお。その難しい事情を。でも、アリサ、人質にはならないお。だって、オジちゃん達より強いから」

 毅然と胸を張って、少女アリサは凛々しく新たなカードをドロー。

「カードアクション、エレクトロアーム!」

 電気で造られし、巨大な手を召喚。

 気絶した調査員らを摘み、ライトニングゲートの先へ放り飛ばしたのだった。

「ふぅ、避難完了だお」

 ほっと一息漏らすアリサ。

 その様子をチラと見ていたのはドミニク。

 ドミニクもほっとした。

 何だ。アリサって俺が思ってたよりも立派じゃないか。

 そう思ったドミニクは再び自分の今やるべき事=Hマンモスとの戦闘に戻る。

 思索を巡らし、戦術の実行へと移行。

 レッドのカードを新たにドローしたドミニク。

「さぁて、一気に畳むぜ! カードアクション、バーニングバズーカ!」

 紅蓮のボディが特徴の巨大バズーが光臨!

 そのバズーカはRアレクサンダーの方へとゆっくり降りた。

 火炎を司るレッドき結晶巨人=Rアレクサンダーはランサーを投擲。

 Hマンモスは咄嗟に回避。

 雪のハザードクリーチャーである為、火炎は最も苦手な相手。

 機敏に動くのは苦手といえど、恐怖の炎が来るとなれば、危険意識により、回避力を増し、何とか逃げ抜いたのである。

 Hマンモスが回避により、足元のバランスを取り戻そうとする。

 その隙に肩へ招来されたバズーカを掴み、砲撃体勢となるRアレクサンダー!

「撃てーっ!」

 雪地を踏み締めるクリアーレッドの両足。

 主の命令を受け、レッドの結晶巨人はバズーカを放った!

 巨大な火球が突き進む!

 当然、Hマンモスは逃げようと4足を動かしていく。

「そうはさせるか! ブロンズハンマー!」

 Hマンモスが逃げようとする方向へ巨大ハンマーが出現!

 ハンマーがマンモスを叩き飛ばす! 逃げるのを阻止した!

 ……が、ハンマー叩きの勢いが過度のものだったようで、バズーカから放たれた火球の軌道からズレてしまう。

「まだだ! Bギガンテス!」

 ブラックの結晶巨人=Bギガンテスは腰を屈め、片方の肩を迫り出し、身構える。

 接近していくHマンモスをタックルガード。

 ぶつかった衝撃で少し後ろへ撥ねる。

 その先はRアレクサンダーの渾身の攻撃・バズーカの火炎弾の突き進む軌道上。

 左右へ逃げてもハンマーとBギガンテスが戻そうとする。

 かといって、真後ろに逃げてもどうせ攻撃は喰らう。

 前へ逃げようとしても、Rアレクサンダーが居る為、逃げるどころか、自殺物である。

 もはや雪原地災害の化身であるこのホワイトき巨象に逃げ道は無い。

 困惑するマンモスはそんな中、バズーカ攻撃という、最も喰らいたくない火炎攻撃の餌食として採用された。

 熔解されていく雪のボディ………。

 Hマンモスを呑み込んだ巨大な火球がホワイト銀の雪景色をレッドブラックく染めたのであった……。

 見事、Hマンモスを撃破した。

 ドミニク・セレドニオは出現させた武器・結晶巨人をカードへ戻す。

 そこへアリサが駆け付ける。

「ドミにーちゃん、マッチョにーちゃん、やったねぇ~」

「アリサ……」

「ん? 何だお、ドミにーちゃん?」

 ドミニクは表情をニカッとさせ、アリサの綺麗な髪のある頭を撫でた。

「お前、一人前のレスキューウィザードだったんだな!」

「んん?」

アリサを撫でつつ、ドミニクはふと思い起こす、

アリサと共に暮らすようになった日々を。

―――あれは6年前。

ドミニクは町の小劇団の劇団員をしていた。

ドミニクはルックス的に適役なヒーロー役を演じていた。

そんなある日、親戚の子・アリサがドミニクの元へ来客。

アリサの両親が戦死した為、残った唯一の身寄りであるドミニクの元へ来た。

この時は泣きの人見知りであったアリサ。

彼女は当初ドミニクだけに懐き、彼の後ろにしがみついてばかり居た。

しかし、ドミニクの豪勇な性格やヒーロー芝居に影響され、段々明るい子になったアリサ。

「ったく、知らない間に成長しやがってよぉ」

「ま、お前らは久しぶりにミッションに来たものだからな。それでアリサがどの位働けるか、気になったのだろ?」

「ん。セレドニオ……。まぁな。炎や電気で救助って、中々結び着かない……。活躍させ難いデッキだからなぁ。そのお陰で俳優業と兼業出来ているけどな」

 ドミニクはレッドのカードデッキケースを手に取り、見つめながら失笑。

「だが、杞憂だったようだな……。あいつは立派なレスキューウィザードだ」

 セレドニオの言葉にドミニクは爽快な笑みで首肯する。

「そうだな……」

 美麗な蒼ホワイト景色がそこに有った。

 快晴のブルーと雪原のホワイトの織り成す芸術。

 心落ち着かせる美しい風景を暫し眺めるドミニク・セレドニオ・アリサ。

 3人はライトニングゲート使用可能な時間が来るまでその雪景色を堪能した………。



 レスキューステーションの居間に光のゲートが出現。

 ドミニク・セレドニオ・アリサが無事帰還した。

「おっす!」

「ただいまだおー」

「んん?」

 眉間に皺を集めるセレドニオ。

 ドミニク・アリサも混沌な目の前に唖然となる。

 激突していた。

 バニーガールとメイドが。

 バニーガール姿のローラとメイド姿のカリーネがいつも以上に意地の張り合い交戦を広げていた。

「どぉん? このデカ乳に、キュッと締まったク・ビ・レ。バニーガール姿がサマになってるっしょ。つまりあたしの方が女として格上って事」

「ふん、淫らに肌を露出してはしたない。露出すればいいという安い考えに失笑しますわ。女の魅力は即ち愛! 愛情宿るメイド服こそ至高のものですわ!」

「ハン! 彼氏居ない奴が偉そうに! あ、あんたが避けた許婚はカウントしちゃダメだからね。だって、そいつに好かれなくて逃げたんだからあんたは」

「う、うぅ……。あなただって彼氏居ないクセに!」

 デコとデコが衝突!

 長い指の爪を立てて、キャットファイトを繰り広げる……。

 ポカンとのっぺりした顔をしてドミニクら3人は、淡々と読書中のオルフェの居るソファーへ腰を落とす。

「フ、飽きないヤツラだ……」

「しかし、何でバニーガールやメイドになってんだぁ?」

「いつの間にかどっちが女として魅力あるか勝負をするという話になったようですよ」

 オルフェは書物のページを捲り、事情の把握出来ない仲間にさらっと説明する。

「メスゴリラバトルだお……」

「こらこら。毒吐くな。とばっちりがこっちにも来るぞ」

 ドミニクが面倒臭そうな顔でアリサの頬を人差し指で小突く。

 アリサの新鮮な肌はプニプニと音を立て、張りと柔らかさを主張した。

「おっと、危ないお……」

 思わず、アリサは己の口を小さな両手で塞ぐ。

 この実に素直で可愛らしい対応に、にこやかな笑いを始めるドミニク。

 セレドニオも小さく鼻で「フッ……」と、クールに笑う。

 そんな中、オルフェは歴史書を黙々と読み進める。

「……む?」

 ふと、表情を曇らすオルフェ。

 歴史書の現在読んでいるページに怪訝な反応を示す。

 その内容=至上最悪のハザードクリーチャー・津波の化身、Hシーサーペントは3年置きに一国家を蝕む。という、内容。

「! そういえば……」

 ハッと立ち上がるオルフェは他に調べたいことが発掘され、確かめるべく、本棚へと歩む。

 唐突に動いたオルフェに少し驚くドミニクら。

「んあ? オルフェ?」

「爽やかにーちゃん、どうしたんだお?」

 オルフェは彼らに返答を交わさず、新たに掴んだ書物のページをパラパラと捲っていく。

「!! やはり……」

 オルフェは確証を掴み、ドミニクらの元へ。

「大変ですよ皆さん。とんでもない事が分かりました」

「……何だ? 言ってみろ」

「明後日……津波。もとい、Hシーサーペントが出現するそうです」

 瞳孔を開き、衝撃を受ける一同。

 喧嘩中のカリーネ・ローラコンビですら、咄嗟に静止した。

「何を根拠にそう言うんだ?」

 セレドニオの疑問に、オルフェは自分が持つ本を翳し、答える。

「書いてあったんですよ。この本にね……。知りませんでした。ユーロップの様々な場所で起こった事らしいので」

「マ、マジかよ……。場所は分かるのか?」

 首を左右へ振り、苦い表情を示すオルフェ。

「いえ……場所はランダムですから」

「そっか。まぁ、俺らには現場を速効で把握出来る宝玉があるから対応は出来るか」

「まっかせるおー!」

 アリサは元気な声色で宝玉の埋まったペンダントを翳し、自慢げに顔を突き上げる。

 クールダウンしたカリーネ&ローラも集合。

 6人のレスキューウィザードは凛とした面持ちで、互いを見合わせる。

「決戦は数日後……」

「それまでに対策を立てねばなりませんわね……」

 ローラとカリーネは順にそう呟き、息を飲む。

「皆さん、絶対に津波から人々や町、そして自分達を戦って守りましょう!」

「おう!」

「アリサ、頑張るおー」

「当然ですわ!」

「オッケェ! 津波なんか跳ね返してやろうジャン?」

 ドミニク・アリサ・カリーネ・ローラが順に迎合。

 最後にセレドニオが無言で首肯した。

 6人は打倒、津波・Hシーサーペンターに闘志滾らせるのであった。

 じわじわと海水を蒸発させるかの如く………。


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