第四話:大賢者
この小説は作者のノリと勢いでできています。
誤字脱字やここの展開おかしいだろ、と思うところがあれば遠慮なく言ってください。
更新は不定期ですがなにとぞ勢いで書いていますのでご理解ください。
「失礼します」
俺はレンに続いて部屋へと入る。そこにいたのはそこへいたのは50代くらいの真っ白な髪を生やした男が座って紙の束と格闘していた。見るかぎり結構厳つい顔してるし、見た目は規則とか厳しそうな人だ。するとこっちに気付いた。
「やあ、報告はきいているよ。怪我はなかったかい?」
そして仕事をほっぽり出してこっちへとむかってくる。
レンは机を見るとため息をつく。
机の上をみると結構な量があるのだが・・・こんな仕事の量を毎日やっているのだろうか?
「叔父様、また仕事さぼりましたね。こんなに溜め込んでどうするのですか・・・」
・・・そうでもないらしい。
「いやいや、つい仕事中に思いついたことがあってな。気が付いたら実験のことばかりまとめていて、ついついギルド(こっち)の仕事は溜まってしまうのだよ。はっはっは」
見た目にそぐわず結構お茶目な人だった。
「それで紹介したいという人はそっちの子かい?レンもやっと恋人をみつけてくれたのかな?」
「叔父様!?何言ってるんですか!?」
「はっはっは!冗談だよ!」
どんどんと最初のイメージがガラガラと音を立てて崩れ去っていくのがわかる。
そしてこちらへと歩みよってきた。
「はじめまして、ハヤト・クロカワくん。私はこのギルドマスターのジン・ローウェルという者だ」
そういいながら俺の手をとって握手した。
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「なるほど・・・異世界からこっちへきたというわけかい?」
「ええ。これが俺の夢でないならですけど」
俺はこれまでのいきさつをジン(最初は大賢者様と呼んでいたのだが、堅苦しいのは嫌いなんだといわれたのでこう呼んだ)に話した。最後まで話し終えるとジンは今までの話を自分なりに噛み砕いて理解しているようだった。そして俺に向かって頭を下げた。
「すまないが、私でもこの世界以外にも別の世界が存在することを証明することはできん。いや、世界中の誰もできないだろう。自分で言うのもなんだが、こう見えても私は結構優秀な学者でね。世界で作られた魔法は全て使えるとまで言われた魔導師なんだが・・・」
「そうですか・・・」
いきなり希望が断たれたな。ほかにも似たような境遇の人がいたことでもわかればよかったんだが、手がかりなしからはじめるのは結構きついものがあるな・・・
「ただ・・・」
「ただ・・・?」
「証明するのは無理だが、君が異世界人だということを私自身が納得できるようにはなるかもしれん。少し“視せて”もらってもいいかね?」
突然の申し出に俺は首をかしげる。“ミセル”ってなにを見せるんだ?
その様子に納得したようにジンは笑みを浮かべる
「まあ、見ててくれればなんとなくわかるよ。そのままじっとしてくれるかい?」
と言ってジンは指を自分の眉間に当てた。そして呪文を唱える。
≪人の枷を外し、真の世界を我の前に示せ、千里眼≫
ジンはゆっくりとゆっくりと目をあける。するとそこには瞳を水晶のような透明な輝きを持った色に変えたジンがいた。
「なっ、これは!!」
えっ!?なにかやばいことでも!?
「あ、あぁ、すまない少し驚いただけだよ。この魔法はその場に存在するオーラ(属性)を読み取ることができてね、生き物は常にこのオーラを纏っているもんなんだよ。そしてこのオーラは量や質、特性などその人物の生命力を示しているから誰一人として同じではないんだ。だから異世界からきた君ならまた異質のオーラであると思ったんだが・・・ここまでとは思っていなかったよ。これならワイバーンを一人で倒したこともある程度は説明できる」
「どういうことですか?」
ここまで成り行きを見守っていたレンもこの発言には口をはさんだ。
「まぁ、軽く説明していこう。まず最初に君の周りには“緑”のオーラが見える。これは風の属性だ。まぁ、ここは風の国だから多少は影響があるからこれはいいんだが・・・」
そこで言いよどまないでくれ、いい予感がしないから。
「君の内側のオーラが常人とは思えないほどになっている。それも器(体)からあふれるくらいにね。おそらくここへきてからの身体能力の向上や翻訳魔法もこれが関係している。君の内側にとどめられななったオーラが外へと流れ魔力となって無意識に発動しているのだろう。オーラ単体では外へと発散できないのでね。」
一目みてここまで説明できるのだからこの人の頭の良さがわかる。本当に優秀だったんだな。
「ということは俺は今も魔法をつかっている状態だということですか。」
「そういうことになるね。これはかなり君の非常識さをものがたっているよ。」
「そうなんですか?」
基準がわからないから常識の範囲がわからないな。
「大体訓練していない一般人は中級魔法を3回使えば次の日は寝込む。訓練したランクE、Fの人間でも上級魔法1,2発で同じような目に合う。ところが君はその上級魔法を使うくらいの魔力を常時使用していることになる。これでどれだけ非常識なことかわかったかい?」
それは・・・ちょっと反則みたいなものだな。
隣をみるとレンが信じられないという視線でこっちをみている。さすがにそこまでとは思っていなかったのだろう。俺自身でさえもそうなのだ。
「しかし、これはあまりいい状態とはいえないな」
「というと?」
俺はジンの言葉に首をかしげる。またもやよくない雰囲気だ。
「見る限り君のオーラの量は異常だ。普通の人間なら生きていればオーラは消費していくし同じくらいの量が作られるから魔法でも使わない限りこの量が変化することは少ない。だが、君の場合魔力に変換してオーラを減らしても君の中で創られる量のほうが多い。」
「そんな人がいるのですか?」
レンが横から心配そうな声を出す。
「少なくとも私は見たことがないな。だが今ここに一人いるのが現実だ。これをどんな方法でも制御することができなければ君の体にはオーラが溜る。さっき説明したとおりオーラ単体では発散することができないから、君の体に負荷がかかり続ける。その状態が続けば・・・」
「器(体)が壊れますか」
「・・・その通りだ。体が持たなくなりオーラが暴走するだろう。今すぐにでも対策を打つ必要がある」
まったく、次々と問題が圧し掛かってくるな。
「もっと大きな魔法を教えて使わせたらどうかしら?」
レンが少し考えた後答える。
「それも考えたが、大きい魔法は大きくなればなるほど使用者への負担も大きい。本末転倒だよ。それにハヤト君はワイバーンを倒したとき魔法を使ったのだろう?ワイバーンを一撃で倒すにはかなりの量を消費したはずだ、それこそ何週も寝込むほどのね。しかし彼はこの通りぴんぴんしている。おそらくその方法では結果は変わらないよ。」
そう答えたジンは少し考え、後ろの棚に置いてあった棚から一つの箱を取り出した。
そして俺の前へと置く。
「これは?」
「これは宝具だ。ただし呪われている。まぁ、そういうものはまとめて呪宝具と呼ばれているんだけどね」
いや、呪われているって・・・
「これは身に着けた者のオーラを吸い取るというもので、際限なく吸い取るので普通の人が身に着けると死んでしまうんだよ。オーラはその人の生命力でもあるからね。でも今の君になら丁度いいだろう。とりあえず解決するまで身に着けておくといい。」
そういうとジンは箱のふたを開けた。
中には黒い宝石がついたイヤリングがあった。それを見た瞬間俺は内側から何か不思議な感覚がわいてくるのがわかった。
あれ、この感覚どこかで?
「どうしんだい?身に着けるのがこわいかい?」
「いや、そういうことはありませんよ」
俺はそのイヤリングを身に着けた。別に何の変化も起きた様子はないが。
そうと思ってジンを見るとうなずいていた。
「だいぶさっきよりもオーラが減っているよ。気分が悪くなったとかはないかい?」
「別に大丈夫です」
レンを見てみると呆れたようにジト目でこっちを見ている。
「ほんとに大丈夫なの?何も魔法を使ってない私でさえわかるくらいオーラが減ったのだけど・・・」
そんなこと言われてもね、別におかしくなったことなんてないし。
「でもこれは一時的処置に過ぎない。何か対策を考える必要があるね。・・・・・・そうだね、ウィード魔法学校に行ってみるかい?」
「ウィード魔法学校?」
「その名の通り魔法を教えている学校だよ。とりあえず君もこの世界にいるなら魔法を覚えたほうがいいし、オーラの制御もできるようになるかもしれない。ちなみにレンもそこの卒業生だよ。それにあそこには本がたくさんある。君の探している情報も見つかるかもしれないよ。学校のほうにはこっちから連絡は入れておこう」
それは願ったり叶ったりだ。
「しかし、ここまで無償でやってもらえるなんていいんですか?一応ギルドのマスターなんですよね?個人にここまで・・・。それに俺はここに登録している冒険者でもないんですよ?」
その言葉を聞くとジンは大声で笑った後答えた。
「君にはレンを助けてもらった。レンは私の親友の子供でね、私にとっても娘みたいな存在なんだ。娘を助けてもらったんだ。これくらいじゃ、お礼したりないくらいだよ。・・・娘を助けてくれてありがとう。」
そういってジンは頭を下げた。やっぱりいい人だ。俺はあらためてそう思った。
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ハヤトとレンが出て行った後、一人になったジンは部屋の窓からレンと一緒に歩いていくハヤトを見ていた。
本人には言っていないがあの時ハヤトを見た瞬間最初に目についたのは周りに纏っている“緑”色のオーラでなく“黒”だった。黒いオーラなんて見たことがない。オーラの基本属性はこの世界の国々の色の緑、赤、黄、青の4つしかない。個人差で濁った色になることはあるが、あそこまで黒にはならない。しかもそのあと見た内面のオーラの量は一般人なら即死しているほどの量だったのだ。
ジンは深く息を吐いた。
「まったく、ハヤト君。君は何の運命を背負ってこの世界にきたんだろうね・・・」