第十三話:先生
この小説は作者のノリと勢いでできています。
誤字脱字やここの展開おかしいだろ、と思うところがあれば遠慮なく言ってください。
更新は不定期ですがなにとぞ勢いで書いていますのでご理解ください。
翌日、目覚めたのはまだ日の上がる少し前だった。
「・・・柄にもなく興奮してんのかな?」
なにせ今日から本格的に魔法を習い始めるのだ。ゲームなどの架空の世界でしかありえなかったことを、この世界では当たり前のように使用できる。
これは別世界 から来た俺も例外ではないらしいし、むしろ他の人よりも優れているかもしれないなんて言われたらやる気も上がるってものである。
ということで、すっかり目が覚めてしまったのであった。
「久々に素振りでも・・・ん?」
ふと横を見るとルームメイトであるヨシュアがいない。こんな朝っぱらからどこへ行ったのやら。
「まぁ、俺も人のことを言えないか」
部屋に荷物として学園長が用意してくれていたらしい木刀をもって部屋を出る。
「えっと、広い場所は」
寮をでるとヨシュアが前から歩いてくるところだった。
「おっ、早いな。おはよう」
「おはよう。目が覚めちゃったのさ。というかお前の方が早いだろ。何してたんだ?」
「ん?ああ、俺は冒険者志望だから朝は短剣の練習してるんだ。昼は魔法のことで手一杯だからな。それより手に持ってるのなんだ?なんか見たことないな。木製か?」
「ああ、こっちじゃ珍しいのか。刀っていう武器だよ。本物は金属だけどな。これは練習用の木刀だよ」
そういや、こいつも冒険者希望なんだな。人数少ないっていってた割には結構身近にいるもんなんだな。もしくは学園長の計らいかね。
「・・・なぁ、そういや昨日ハヤトは素手だったよな?」
「ん?昨日っていうとお前と手合せしたときか?そりゃ手元に武器がなかったんだから素手で戦うしかないじゃないか」
いきなり何を言い出すのかと思えば、だから苦戦したというのに。
こっちからしたいい迷惑でしかなかったよ。まったく。
ヨシュアは何か考えるように手を顎に当てているが何か思うところでもあるのだろうか?
「ちょっと俺ともう一度対戦してみないか?今度は両者武器有りでさ」
「??別にかまわないけど・・・どうせ今から素振りでもしようと思ってたところだったし」
「よし、じゃあこっちだ。いつも鍛錬に使っている場所があるからそこに行こうぜ」
◇ ◇ ◇
「おはよう・・・ってそっちのボロボロの人はどちら様?」
「えっと、俺のルームメイトでヨシュア・バニングスっていうんだけど・・・まぁ、いろいろあってな」
「それはお前が言っていい言葉じゃないだろ・・・」
俺とヨシュアは何度か打ち合いをした後一度寮に戻ってからレンとの合流場所に向かったのだがすでに彼女はそこで待っていた。
ちなみにヨシュアがボロボロになっているのは紛れもなく俺のせいなのだが―――
「大体昨日の仕返しってここまでやるか?」
「悪かったって」
今回は木刀があったので万全の態勢で始めたのだが短剣とではリーチ差がありすぎるし、何より魔法なしの戦闘だったのでかなり一方的な展開となったのだ。
「だけど、途中から魔法使ってもいいって言ったじゃないか」
「お前はまったく使わないのに俺だけ使えるかっての」
俺は使わないんじゃなくて使えないだけなんだが。そこには大きな差があるぞ。
「よくわからないけど、私も自己紹介しておこうかしら?私は―――」
しかし、レンの言葉の続きはヨシュアの手によって止められた。
「レヴェリー・クレイグス。現在19歳。三年前にウィード魔法学校中級を主席で卒業。その後冒険者としてギルドへ加入。各地で活躍されているランクDの冒険者でそろそろランクCへの繰り上げも検討されている人物―――だろ?」
「・・・な、なんで?」
「俺も冒険者志望でね。それなりに独自の情報網は持っているんだ。それにあんたは有名人だしな。これくらいは多分冒険者を目指している奴は誰でも知っているんじゃないか?あんな事件もあったん―――」
「やめて」
今度はレンがヨシュアの言葉止めた。しかし、さっきのやり取りよりも口調がきつくなっているのがはっきりとわかる。
「それ以上口にしないで」
「・・・すまない。口が滑ったな」
話から察するに昔レンの身に何かあったらしいのだが、口を挟むことができそうな話題ではない。あたりの雰囲気が急速に悪くなっていくのが肌で感じられる。そんななか後ろから足音が聞こえてきた。
「ふぅ。みなさん、おはようございます・・・って、みなさんどうしたんですか?それに、なんでここにヨシュアさんがいらっしゃるんですか?」
男子寮からエルがローブを着てやってきたのだ。息を整えているところを見るとこちらの姿を見つけて走ってきたのがわかる。あれ?
「二人は知り合いなのか?」
俺はヨシュアとエルを見比べる。見る限り接点は全くと言って程なさそうなのだけど。
そんな俺の態度にヨシュアが答える。
「俺もこいつも冒険者志望だからな。体術の授業でよく一緒になるんだよ。人数が少ないから全級合同の授業になっちまうもんでな。こいつはセンスあるぜ」
そういいながらエルの頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でる。「や、やめてください」と言いながらじゃれている二人を見ていると兄弟のように見えた。
「なぁ、レン―――」
同意を求めようとしてレンに声をかけようとしたのだがそれは彼女の表情を見て言葉を止めた。まるで昔を懐かしむように、それでいて何か決意を改めてしているかのような表情をしているのだ。
「・・・・・・」
「レン?どうした?」
「・・・え?あっ、ごめんなさい。聞いていなかったわ。どうかした?」
「・・・いや。なんでもないよ」
これ以上はまだ踏み込むべきではないと判断してごまかす。
俺にだって話せないことが山ほどあるのだから。
◇ ◇ ◇
最初に講堂に入った時の感想はあんまり地球と変わらないということだった。机に椅子、唯一の違いと言ったら黒板がなかったことくらいかもしれない。部屋自体もそこまで大きいというわけでなくせいぜい50人がゆったりと入れるという感じだ。
ちなみにヨシュアは中級の生徒のため講堂の手前で別れた。「体術の授業は絶対にとれよ。いや~楽しみになってきた」という不吉な言葉を残していったので少し憂鬱だ。
授業には地球の数学、国語と同様に魔法、戦闘訓練などに分けられているだけでなく、さらに細かく分けられいる。たとえば戦闘に関してなら先ほどヨシュアが言っていた体術のほかに魔法技、剣術などに分けられる。今から俺が受けるのは魔法基礎という初級の生徒なら全員が受けなければいけない授業であるらしいが人数が多いためかいくつかに分けられているらしく今回の授業は30人くらいしか受けないみたいだ。
すでに半分ほど席は埋まっていてエルのように獣耳やしっぽをはやしている者もちらちらとみることができる。見る限りみんな年は俺よりも低いように見られる。レンに聞いてみると、
「よっぽどのことがない限りあなたぐらいの歳ならみんなこの授業は既に受け終わっているわよ」
ということらしい。少し注目を集めながら入ることになってしまったのだが、しょうがないと割り切ることにする。
「席はどこでもいいのか?」
「はい。僕はいつも適当に座っていますし」
「最初は後ろのほうに座っていたほうが迷惑にもならないんじゃない?確か魔法をみんなの前で見せないといけないこともあるはずだし、前の方よりは指名されにくいんじゃないかしら」
俺が魔法をまともに使えないことを知っているのはレンだけなので素直に指示に従っておく。異世界人ということは一応隠しておく方針なのであまり目立ちたくないということもあって俺は後ろから二番目の窓側の席へと座った。その両隣にレンとエルが座る形となる。
しばらく雑談を交わしながら時間をつぶしているとやけに小さい人が入ってきた。身長は140㎝あるかないかというところだ。長い青い髪を後ろでポニーテイルまとめているが歩くたびに髪がひょこひょこ動き本物の馬の尻尾のように動いている。まるでマスコットだ。
「ものすっごく背の低い子がいるけど、あの子も生徒なのか?見るからに小学生・・・この世界じゃなんていうのかな。歳が低そうなんだけど・・・」
と、思ったことを独り言のようにつぶやいたのだが、その言葉はちゃんと二人に聞かれてしまっていたらしい。二人はどの子だろうと一斉に顔を向けて―――
「「・・・・・・」」
二人とも一瞬で言葉を失っていた。
「え?あれ?俺、なんかいけないこと言っちゃった?」
そちらへ向くと二人とも同じタイミングで目をそらす。何が起こっているのか訳がわからない。しかし、それは後ろからかけられた声ですぐに分かることになった。
「あ、あなたが、本日から参加なさるハヤト・クロカワさんで間違いないかしら?」
かけられた声は幼いながら透き通るような感じでなんとも可愛らしいのだが、どこが言い難い圧力が入っているのがわかる。
なんとなく予想しながら恐る恐る振りかえると、そこにはさっき話題に出した青い髪の少女が仁王立ちしていた。その様子はまるで威厳はない。どちらかというと一生懸命大人ぶっている子供で可愛らしい。俺は困惑しながら答える。
「えっと・・・そうだけど、何か用かな?お嬢ちゃん」
その言葉はさらに彼女を怒らせることになったらしい。威圧感が増したのがわかる。が、やはりそこまで怖くない。後ろではレンの溜息とエルのあわわという言葉が聞こえてくる。彼女を見ると拳を握って何かこらえているようにも見える。何か対応を間違ったのだろうか?
「・・・い、いえ。用ということはないのですが、学園長からも一応よろしくお願いしますとい言われていますので・・・一言挨拶をしておこうと思いまして。私はき、ょ、う、し、のシャロン・アーダルベルトと申します」
き、ょ、う、し、?
後ろを見て二人に本当に教師なのか同意を求めようとしたが二人とも既に後ろの方に退避していた。逆にその行動が真実だと証明しているようものなのだが、それでも信じられない。ということでもう一度聞き返す。
「えっと、もう一度おしゃってもらってもよろしいですか?」
言葉が丁寧になったのは許して欲しい
「教師のシャロン・アーダルベルトです。これからよろしくお願いしますね」
笑顔が怖かったのは言うまでもなかった。