第十二話:同居人
この小説は作者のノリと勢いでできています。
誤字脱字やここの展開おかしいだろ、と思うところがあれば遠慮なく言ってください。
更新は不定期ですがなにとぞ勢いで書いていますのでご理解ください。
状況確認をしておこう。
今日俺は学園の案内をしてもらうためレンと一緒に学内を周り、途中図書室出会ったどこから見ても美少女にしか見えない少年エルと出会い、明日に向け今日は早めに寝ようと案内された部屋のドアを開けたら、短剣を持って声をかけてくる男が一人。
というか、なんで短剣持った男に出迎えられてんの俺?
身長は約180㎝近くあり体格もそこそこ、右手には短剣が一本握られている。暗い赤色の瞳と紅色の髪が特徴だが、纏っている雰囲気はやる気のなさそうなゆるゆるな感じで起きてますかーって感じだ。
学園のローブも着ているし、おそらくこの寮生だとは思うんだけど・・・。
そこまで考えた所で目の前の男は短剣を手で回しながら話しかけてくる。
「いや~、ほんとに待った。夕方くらいには来るんじゃないかと思って待ってたのに、全然きてくれないし。こっちの都合も考えてほしいだけど。俺に対しての嫌がらせかよ?」
初対面でそんなこと言われてもどうしようもないだろ・・・
「・・・・・・まぁ、いいや。こんなことお前に言ってもどうにもならないしこんなの見返りがなけりゃやってられないって。はぁ~ぁ、とりあえず
――――――――お手並み拝見といこうじゃないか」
その瞬間、さっきまでの雰囲気が消し飛んだ。その代わりにその場を包み込むのは、はっきりと分かる俺に向けられた闘気だ。
おいおい、こんな奴が寮にいるなんて聞いてねぇぞ!!
レベルからいうとジークよりもやや劣るがそれでも十分強いレベルだ。こちらも迎撃したいがさっきまで手ぶらなのだから武器をもってない。素手でも一応戦うことはできるが、相手の力量を考えると手慣れた刀がないと正直厳しいだろう。
と状況を分析しているところへ相手は突撃をかましてくる。
「じゃ、まずはこのくらいから始めるとしますか!」
こちらの状況なんかお構いなしに目の前の男は手慣れたステップで間合いを詰めてくる。狙われているのはどんな相手でも一撃で仕留められる“首”。
相手の目線を追って狙いがわかった瞬間に俺は全力で屈む。
「いきなりっ、何しやがる!」
同時に足元へと蹴りを放つが寸前で下がられる。
「わぉ、今のが反応できるのか・・・話に間違いはなさそうだな」
話ってなんだ?もしかして噂のことか?だがそれはエルの話からするとそれが理由で襲われるって展開にはならないと思うんだが・・・・
あぁ!もう何がどうなってんだよ!!
「俺はお前に恨まれるような覚えはねぇぞ!なんで襲う!!」
「ふむ、そうだな。口止めされてはいるんだが・・・俺に勝てたら教えてやるよ!」
奴は短剣を逆手に構えなおして半身でとびこんでくる。
体の中心を狙った攻撃は避けづらいし、避けても体勢を崩し、次の攻撃に対して備えることができない。そのため普通は受けて捌くのいいのだが、短剣は小さく動きも剣に比べて速いのだ。素手で受けることはほとんど不可能だと判断したんだろう。
――――――だが甘い!!
俺は攻撃を受けるのでもなく、避けるのでもなく、反撃にでる。向かってくる奴の右手首に刃が届くギリギリのところで手刀を振り下ろす。まさか反撃に出られるとは思っていなかったのか、意外と簡単に手放した短剣を俺はそのまま空中で掴み、後ろへ投げ捨てた。
我ながら上出来だ。
「これで俺の勝ちだ。さっさと―――――」
と、その言葉が言い終わる前に空いた右の拳が俺の顔面めがけて飛んでくる。不意を突かれた俺は何とか左へ避け――――――。
「なぁ、短剣の長所って知ってるか?」
次の瞬間には短剣が空いた右手に握られていた。
「なっ!!」
確認した瞬間に後ろに下がろうとするが、それよりも短剣の方が早い。
ガン!!という音と共に頭に鋭い痛みが走る。振り切られた衝撃で横へとはじき飛ばされるが、その勢いのまま横へと転がり体勢を立て直す。痛みに構っている暇なんてない。すぐに次の攻撃が・・・って
「その態度は俺を馬鹿にしてんのか、それとも余裕の現れなのか?」
つい相手の様子をみて口走ってしまう。まぁ、連撃でボコボコにされそうなとこを追撃せず短剣を振り切った状態でそのまま止まっている姿を見たら誰でもそう思ってしまうだろう。しかしその手には短剣は握られていない。
「ほぉ。いや、別に馬鹿にしてるつもりもないし、むしろちょっと見直してるとこ。あの状態から無理に躱そうとせず次の行動に移ることを咄嗟にできるのは結構場馴れしていないと無理なんだが・・・お前すごいな」
なんか襲われてる奴に褒められてしまった
「それで短剣の柄で攻撃したのもわざとか?普通のやつなら気絶ものの攻撃だったが、刃で攻撃したほうがはるかに確実性も上だし致命傷を負わせられるだろ」
「短剣は見えてるのかよ。結構うまくやった自信はあったんだけどな・・・依頼主の命令ってやつだよ。別に命が目的じゃない」
と言ってさっきの構えを短剣がない状態で構えなおす。俺の命が目的じゃないってことは他に何の意味がある?というか、もし命を狙われてるにしてもその理由が分からない。なにせこの世界に来てから知り合いと呼べるような人はほんのわずかだし、別にやましいことなどしていないのだ。まぁ、ワイバーンを一匹殺してしまったが、別にそれが理由ってことはないだろう。
それに、今の攻撃は魔法か、それとも単純に技術なのか確かめる必要がある。魔法込みの戦闘はこれが二回目だし、初めての魔法戦闘は相手が手加減してくれた感じが否めない。魔法も硬化ってだけであまりファンタジーっぽくなかったからな。
鈍い痛みが頭に回っている中、怪我の状態を確認する。
少し血が出てる程度で済んだようだ。一応とっさに飛ばされる方向へ飛んで威力を殺したのでこの程度で済んでいるが、十分強い一撃であったことには変わりない。
とりあえずこちらは魔法は現時点では使えない、あちらは魔法を使ってくると仮定して動くことにしよう。魔法としての概念すらまだわかっていない俺に魔法を使いこなせる自信はないし、あちらが魔法を使うことを想定していればさっきの現象はある程度予想がつく。
「そろそろ考えはまとまったか?」
「あぁ、次はこちらも手を出させてもらうことにするよ。借りはすぐに返す主義でね」
「そりゃ気が合う。だけど俺としてはそのまま貸しときたい。俺の都合が合う日に返してもらいたいね」
「そりゃ無理な注文だっ!」
その言葉を合図に俺は横に飛び出した。その先にはさっき放り投げた短剣が転がっている。
「・・・っ!させるかよ!!」
相手は俺が短剣を拾いに行く前に回り込んで 行動を阻止しようとするが、距離は関係ない。これはは誘いだ。
「!!」
俺は回りながら方向転換すると その回転の勢いを殺さずに奴へ掌底を叩き込む。俺の行動を予測できなかったのかそのまま胸に直撃するが、俺と同じように直前に後ろに飛んで威力を殺している。なかなか反応がいい奴だ。すでに起き上がっていつでも行動へ動ける状態になっている。だが大きな収穫もあった。今の行動でさっきのからくりも大体読めたしな。結局のとこ魔法ってものは万能ってわけじゃないってことか。
「さっきの頭にくらった時の質問、答えておくよ。短剣の長所っていうのは素早く動けるとか、攻撃の出だしが早いとか、まぁ考えればいろいろあるんだろうが・・・最大の利点は携帯性の高さだ。懐に隠すことができ、なおかつ本数を所持することができる。さっきの攻撃も袖に隠しておいた短剣を出しただけだ。魔法を使うことができるなら後ろに放り投げた短剣を瞬間移動みたいに手元へ戻した方が効率がいいし、もっと相手の隙を作り出すことも簡単だろうよ」
「・・・お前何言ってんの?そんな魔法できるわけないじゃん」
・・・・・・はい?
えっと、なにその呆れたような視線。
さっきまであった緊張感のある空気はどっか飛んでいってしまっていた。
「はぁ、魔法のことなんにも知らないんだな。そんなんでこの学校によく入学できたもんだ。しかし、武器の特色とか分かっているだけマシか」
そんなことを口走ったかとおもうと素早く短剣を懐へ仕舞っていく。
「・・・えっと、勝手にそっちで終わらせないで、こちらにも説明してもらいたいのだが」
急に起こったこの戦闘を終わらせるのは俺にとっても願ってもないことなんだが、あまりにも唐突すぎてついていけない。
というか俺のせいでしらけさせてしまった感が半端なくて、ちょっと申し訳なさが俺を苦しめている!!
なんかごめん!!
「なんかごめん!!」
思ったことが口をついてしまうほどだったらしい
「あぁ、別にお前のこと呆れたからじゃねぇよ。依頼内容を満たしたからだ。依頼内容に含まれないことは極力行わないようにしてるんだ。これでも冒険者志望なんでな。とりあえず入れよ」
そう言って部屋の中に入ってしまう。別にもう敵意は感じないし、一応その部屋が説明された部屋なのは確かなのでそれに続くように部屋へと入る。
通された部屋の中はさすが寮というか、家具はベットと机しか置いていなかった。それが二つずつ。
・・・“二つ”ずつ?
「あぁ、そういや紹介がまだだったな。同じ部屋のヨシュア・バニングスだ。いわゆるルームメイトってやつだ」
「・・・待て。それじゃ何か?俺は初対面のルームメイトに襲われたのか?」
「そうなるな」
「なぜ?」
「依頼があったから」
「どんな?」
「実力を測れってさ」
「報酬は?」
「実力に俺が納得しなかったらそのまま追い出していいってさ。この二人部屋を一人で使うって結構快適なのさ。あぁ。あと単位くれるらしいし」
「・・・・・・ちなみに誰から?」
「学園長」
・・・あのやろう。正確には野郎ではないが。
ジークが毛嫌いしている理由がはっきりと分かった。
「それで、俺の実力には納得してくれたってことでいいのか?」
「もちろんだ。正直本気で追い出すつもりだったんだが、一目見て考えを変えたよ。ただ、手合わせしてみたくなっちまってな。実はあの戦闘は蛇足だ」
「おい!」
「ははは、まぁいいじゃねぇか。これからよろしく頼む」
そう言って手を差し伸べてくる。
ふう、この世界に来てかというもの散々な事続きだがこの世界ではこんなもんが日常なのかもしれない。
そんなこと考えてる自分もそれに慣れてきている自覚があるのでもうどうしようもないのだろう。
俺は一度ため息をついたあとその手を取る
「もう知っているのかもしれないが、ハヤト・クロカワだ。よろしく頼むよ」
遅くなり申しわけありません。