第十一話:発覚
この小説は作者のノリと勢いでできています。
誤字脱字やここの展開おかしいだろ、と思うところがあれば遠慮なく言ってください。
更新は不定期ですがなにとぞ勢いで書いていますのでご理解ください。
とりあえず犬耳少女への誤解をなんとか解いたところで俺たちは改めて図書の整理を手伝うことになった。レンも手伝ってくれることになったので効率はものすごく上がった。なぜなら、
「あ、その本は上から二番目です」
「ん~了解。あ、ついでにこの本もこっちね。一緒に片付けとくわね
≪浮遊≫ 」
「ついでにこれもお願いしてもいいですか?」
「あぁ、全然大丈夫よ。よっと!」
と、こんな感じなのだ。さっきまでは俺が手作業でやっていたことも彼女にかかれば魔法でいっぺんにできるのだ。さらにこの図書室は上へと本棚がのびてるので梯子なんか使わないと届かないものも一発で作業が終わる。むしろ俺はさっきから何もできずに呆然と立っているだけである。というかぶちゃっけ邪魔である。
「えっと、何か手伝うことあるか?」
「あ、別にいいわよ。一人で手は足りてるしね」
「はい。大丈夫ですよ」
「・・・りょーかい」
・・・・・・・・・
しかし改めて思うが魔法とはかなり便利なものだ。この世界にきてから町の様子を見たがこの世界、工学というものがあまり発達していない。車や飛行機はもちろん電球や冷蔵庫などもない。そもそも電気というものが使われていないのだ。代わりにあるのはロウソクや馬車などだ。しかしそれでも暮らしが充実しているのは元の世界にはない魔法が存在しているからである。
灯りがほしければ火の魔法で空中に火がともり、食材を冷やしたければ氷の魔法を使い、物を運ぶためには風の魔法で浮かせ、必要な物があれば土の魔法で生成する。
こうした魔法は個人の技量で大きく差ができてしまうが、生活で使う魔法はこの世界では少し勉強すれば出来てしまうため必要なことは自分一人で実行できてしまう。このため機械なんかがなくても生活は充実する。
まぁ、今の俺は自分の意思で魔法の一つも使うことができないので不便極まりないが。
そんなことを考えている間に片付けの方はもう終盤に差し掛かっているのだった。
「はい。これで終わりね」
「すみません。結局ほとんどやらせてしまって」
「別にいいわよ。大した手間じゃなかったし。・・・それにあなたにやらせてたら終わりそうになかったし」
「うぅ~」
最初は彼女も魔法を使って本を整理しようとしたのだが、まだうまく制御することができないらしく、本が高速で俺の方へ飛んできたのを思い出す。もうあまり経験したくない思い出だ。レンは彼女の方を向いて腰に手を当てながらため息をつく。
「ふぅ。まぁ、練習すればいいじゃない。初級生みたいだし、その調子じゃまだ習い始めたばかりなんでしょ?」
「それはそうなんですけど・・・でも目の前で詠唱省略して使われてるのを見せられたら僕も頑張ろうと思うじゃないですか」
「いや、そんな握り拳作って力説されても危ないものは危ないからな」
俺からすれば危険度はあまり変わらない。飛んでくる本を弾幕ゲームみたいによけるのはもう御免だ。
「ん?そういえば何で初級生だってレンはわかったんだ?」
少し不思議に思ったレンの言動に俺が問いかけると彼女は「そういえば言ってなかったわね」とこぼしてから説明口調で俺の問いに答える。
「この学校では皆にローブが支給されるんだけど、裾とかにラインが入っているのよ。その数で位がわかるってわけ。一本なら初級、二本で中級、三本で上級ってね」
言われてみれば確かに彼女の着ている黒のローブには一本黄色のラインが一本入っていた。少し光っているようにも見える。なるほどこれでその人の位がわかるのか。
「ラインの色は着る人の魔法制御力や魔法容量で決まるらしいわ。確か低いほうから順に赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色だったかな?ちなみに魔法容量はほとんど変わることがないから、色を一つ上にランクアップさせたければ魔法制御の練習しか可能性は望めないわね。卒業までに一つ上げられればいいほうだけど」
レンの言い方からしてかなり難しいことらしい。俺はどんな感じなんだろうか
そんな俺の顔を見たのかレンが笑う。
「ふふっ、そんなに気になるなら後で着てみればいいじゃない。たぶん寮にはもう入学に必要な物が届けられてると思うしね」
「そっか、じゃあ後でためしてみることにするよ。そういえば初級ってことは俺と同じだな。まぁ、よろしく頼むよ」
俺は彼女に向かって声をかける。しかし彼女は浮かない顔をしていた。
「それじゃあ図書館も見終わったことだし、次の場所に行くとするか」
図書室の窓から外を見るとすでに日が落ちかかっていた。ちなみに時間の感覚は元の世界と同じだったので今は夕食時ってところか。少し腹も減ってきた。
「そうね。結構時間かかっちゃったし、とりあえず使いそうな場所だけ簡単に案内するからそのあと寮にもどりましょう」
今日は図書室の感じを掴めただけでもよしとしよう。ほかの場所は行く機会があるだろうしな。
「あ、あの!!」
そう思って移動しようとした瞬間俺の右腕に負荷がかかる。振り返ると犬耳少女が俺の右腕とつかんでいた。
「あ、あの。えっと・・・名前!名前教えてください!」
最初は自分が何をしているのか分かっていなかったのだろう。慌てっぷりが丸わかりだ。
というかお互い名前を教えあっていなかったことに今更気づくとは・・・
最初の出会い方が衝撃的だったからな。噂の件で知られてると勝手に思ってしまっていた。
「そういえば名乗ってなかったな。俺はハヤトだ。黒川隼人。まぁ、呼び方は何でもいいよ」
そう言って手を伸ばす。彼女はさっきの浮かない顔から一変して元気いっぱいにその手を握り返してこう言った。
「ハヤトさんですか。僕はカシウス・エル・フィードです。これからよろしくお願いしますね」
そう言って俺の手を握り返す。しかし俺は彼女の言葉に違和感を感じた。
・・・・・・カシウス?
あれ、カシウスって普通男のつける名前じゃね?いや、ちょっと冷静に考えよう。うん。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・どう考えても男の名前ですね、はい。
手を握りあったままレンの方を見ると笑いをこらえているのが見えた。
あの野郎、最初からわかっていやがったな。
そう考えるとレンが彼女・・・いや、彼と初めて会ったときの反応にも納得がいく。
一人称も僕だったしな。そんな外見で僕なんて言ってたら僕っ子かと思うじゃねぇか。
レンも俺が勘違いしてるってわかってたのならその場で教えてくれればよかったのに。
「え、えっと。じゃあエルって呼ばせてもらおうかな。これからよろしく、エル」
動揺がエルに伝わらないようにできるだけさっきと同じ態度を心掛けて言葉をかける。
「はい!」
努力の甲斐があったのか彼には勘違いのことはばれなかったようだ。
あぁ、生きた心地がしなかったぜ。いきなり初対面の人に『ごめんなさい。女の子だと思ってました』なんて言われたら俺ならショックのあまりそのまま引きこもるぞ。
そこでやっと笑いのツボから解放されたレンが前に出る。
「ふふっ、私はレヴェリー・クレイグスよ。呼び方はハヤトと同じレンで読んでくれるとうれしいかな。ちなみに彼、あなたのこと女の子だと思ってたみたいよ」
「えっ!?」
「おい!!!!」
そこで言うか?言っちゃいますか!?人がせっかく気づかれないようにと細心の注意を払ってたとこにそんな爆弾落としていくか!?この女!!
そんなことよりエルへのフォローを、と振り返るとすでに地面にうずくまって落ち込む姿があった。しかもなんかブツブツいってる。耳を澄ますと、
「・・・そうだよね。・・・僕なんて女の子にしか見えないよね・・・それなりに男らしくなろうとがんばってるのに・・・初対面の人には区別つかないんだね・・・」
ああっ!なんかすごく根が深そうだぞっ!
「いやな、エル。そんなに落ち込むなよ。確かにかわいいなとは思ったけど、さすがに女の子だとまでは思ってないって」
「・・・・・・・・・かわいいですか」
ああっ!さらに落ち込んでしまった。レンに視線で助けを求めるが知らん顔される。
こんな状況になったのもお前のせいだろっ!くそっ、何かいい方法は?
何とか男らしいところを上げればこの状況を打破できそうだが、相手は初対面でよく知らないし、一緒に行動してた時もドジしているところしか思いつかねぇ。
とそんな時ふと思い出した。よしっ!これならいける!
「確かに外見はかわいいけど・・・エルみたいに努力してるやつはカッコイイと思うぞ」
「・・・そんな初対面の人に言われても」
「いや、わかるさ。お前の手のマメ。ぶつかって手を握ったときに気づいたんだが、それは剣を振り続けるやつしかできない。それも何千回と毎日振り続けるやつにしかな。俺もかじってるから分かるんだがそれだけの努力ができるやつはやっぱりカッコイイだろ」
エルは驚きで目が点になっている。ちなみにレンも同じような顔をしていた。
「えっと、そんなに驚くようなことか?」
そんな言葉にエルは困惑し、レンは呆れたように溜息をつく。
「普通わかりませんよ。というか誰にも気づかれないように早朝にやってたし、誰にも気づかれたことなかったのに」
「エル。それはこの人が普通じゃないからよ。ハヤトはいたるところで規格外な人だから。この人を参考にしてたらいつか身を滅ぼすわよ」
おい。そこまで言いますか。
「別におかしいことじゃないだろ。魔物もいるんだし自分の身を守るくらいの力は必要じゃないのか?剣の練習なんてみんなやってるだろ」
「あのね。ここは魔法学校なのよ?剣の練習をやるくらいなら魔法の技術を上げたほうがよっぽど自分の力になるわよ。体術をかじっている人は上流貴族か卒業後に冒険者とかどこかの守衛になりたい人しかやってないわ」
「そうなの?」
「はい。一応体術の授業もありますがあまり人気はありません。みんな宮廷の魔導士を目指していますし。僕は将来冒険者になりたいので練習しているんですが・・・一発であてるなんて・・・ハヤトさんって一体何者なんですか?」
「何者って言われてもなぁ。・・・・・・流れ者の魔法剣士ってとこ?」
「はい?」
何者ときかれてもね。そんなこと俺が一番聞きたいところだって。
◇ ◇ ◇
図書室から出た俺たちは寮へと向かった。エルも同じ建物なので一緒に同行している。
男子寮と女子寮で分けられているらしいのでレンとは途中で別れることになる
外はすでに暗くなって月が見える。ちなみに月は一つしかない。まぁどうでもいいことだが。
「なんか今日はどっと疲れたな」
「そう?私は楽しかったけどね。ハヤトの反応とか」
「レンは俺をいじめていただけだろ」
「でも僕も楽しかったですよ。そうだハヤトさんって剣扱えるんですよね?今度教えてください」
「別にかまわないけど、あんまり期待するなよ」
そんな取り留めもない話をしながら歩いていると二つの建物が見えた。あれが寮らしい。
「じゃあ、ここでまた明日。ハヤトは寝坊しないようにね」
「俺だけに言うのかよ」
まぁ、少し自信ないが。
「エルはしっかりしてそうだし。エルも明日ハヤトが起きてないようなら起こしに行ってあげてね」
「はい。任せといてください」
レンの姿が見えなくなった後、寮に入った俺はエルと別れ、聞いておいた部屋の前にたどり着いた。
「ふぅ、やっとついた。今日は早めに寝て明日に備えるとするかな」
最近は一人になる時間がなかったから、やっとゆっくりできると思いドアを開けた。
独特な音を出して開けたその先には一人の男が立っていた。
「遅かったな。待ちくたびれたぞ」
―――――――――短剣を持って
これから更新はおそらく一月に一回になると思われます。
でき次第投稿するので前後はあると思われますがご了承ください。