第十話:出会い
この小説は作者のノリと勢いでできています。
誤字脱字や矛盾している点など思うところがあれば遠慮なくおっしゃってください。
更新は不定期ですがなにとぞ勢いで書いていますのでご理解ください。
次の日からハヤトは授業受けるための必要な知識をレンから教えてもらっていた。といってもその内容は元の世界での学校と基本同じだったのであまり困ることはなさそうなのだが。
「そういえばレンはこれからどうするの?」
魔法のことを何にも知らない俺はもちろん初級から学ぶことになる。レンは中級を卒業した後すぐに冒険者になったらしいので初級程度なら楽勝のはずだ。まぁ、飲み込みが早ければ中級に上がることはそう難しくないらしいが、それでも時間はかかるはずだ。俺に付き合わせるのも悪いので聞いてみる。俺としては一緒にいてくれると心強いので(精神的に)一緒に行動してくれるとうれしいが、レンにも何か目標とかあるかもしれないし、その足かせになるのはゴメンだと思っていたのだが・・・
「へっ?一緒に受けるつもりだったけど、駄目だった?」
「いや、個人的には居てくれた方が助かるけど・・・中級受かっているレンには退屈だろうし、なにか目的があって冒険者やってるんだろ?それ以前に俺と同じように編入って形になるから受けられないんじゃ?」
「あ、そこはすでに学園長から許可はもらってるわ」
・・・俺のあの苦労はいったい
「確かにやることはあるけど別に急ぎでもないしね。それにハヤトといた方が見つかる気がするのよ。だから、しばらくは一緒に行動することにしたの」
まぁ、言いたいことはもう少しあるのだが本人がいいって言うならその好意に甘えさせてもらおう。頼りにできるのいまのところレンしかいないしな。
そんな言葉をかわしながら俺はレンに学園の内部を案内してもらっていた。
これからしばらくの拠点はここになるのでしっかり覚えておかないと困るのは俺自身だ。何せ広さがハンパない。魔法で空間をいじっているのではないかと何度思ったことか。とりあえずこれから一番使うことになるだろう図書室に案内してもらっている。この学園にあんな試験をやってまで入った理由は俺の体質や異世界への情報を調べるためであり魔法を覚えることは副次的な利点でしかないのだ。
「さて。ここがおそらく一番お世話になる図書室よ」
「おぉ、広いな」
扉を開けるとそこには円状に高く作られた塔みたいな棚がいくつもあり、びっしりと本が敷き詰められている。椅子や机も置いてありその場で読めるスペースも確保されていてとてもいい環境なのは間違いないだろう。
「ちょっと見回ってみる?」
「大賛成だ」
見たこともない本ばかりが並んでいてかなり興味がそそられる。ぱっと見ただけでも魔術、戦術、歴史、小説と内容も幅広い。一応学校なのに娯楽用の本があっていいのだろうかと思ったのだが、寮住まいの人にとっては必需品なのだろう。
とりあえずレンと別れてしばらく中を見回ることにした俺は、少し奥の方も見ておくことにする。
さすがにこの中では迷うこともあるまいと思いながらも、入口の位置を常に確認しながら移動する俺はかなりかっこ悪いと思うが気にしないことにしよう。うん。
そんなことをしながら移動してたのが拙かったのか、俺は前から近寄ってきた人影に気付かなかった。
「うわっ!」
「ヤベっ!」
ぶつかった拍子に運んでいたのか、本をどさどさと音を立てながらひっくり返る人影を見ながら俺はとっさに倒れていくその手をつかむ。
「すまない。前方不注意だっ・・・た?」
倒れないようにつかんだ手から視線を上げてその顔を覗き込むと、そこには頭の上に犬耳を付けた子供がいた。身に着けているローブからひょこっと腰のあたりからフサフサした尻尾も付いている。
「ほえ?」
その子は何が起きたのかわからないのか気の抜けた声をあげる。見た目は元の世界の感覚からいうと中学生くらいだろうか。まず目につくのは深く鮮やかな紺色の耳と尻尾だが、先端だけ白くアクセントになっている。開いたままの口から見える歯もよく見ると犬歯が少し長くなっていてどこから見ても普通の“人”には見えない。顔はどこか中性的だが握った手からは剣を振った時にできるマメが感じとることができた。まさに犬と美少女を掛け合わせたらこんな感じになるであろうという人物である。
そこでやっと俺の視線に気づいたのか姿勢を正して頭を下げた。
「すみません!前が見えていなくて。いっぺんに本を持つべきじゃなかったです!」
「いや、誰もそんなこときいてないし。あと、声が大きいよ」
その声に反応して、周り視線が集まる。こんな場所で目立ちたくはなかったのだが・・・
「す、すみません・・・」
その言葉とともに耳と尻尾が萎れていくように垂れる。
・・・なにこの生き物、めっちゃかわいいんだけど。余談だが俺は猫派だ。しかし、これはこれで癒される。
とりあえず俺は足元に散らばった本を拾い集めて彼女に渡す。
「これで全部か?」
「あ、はい。あ、ありがとうございます」
そのまま本を積み上げたまま渡したのだが、顔が隠れてしまってそのままだと前が見えていない。そのままたどたどしく歩く姿はとてもかわいらしいが、そのままだとさっきの二の舞になるのはどこから見ても明らかだ。
ということで俺はひょいと半分本を持ち上げる。
「あ、あれ?」
「手伝うよ。どこに運べばいいの?」
「え?で、でも」
「別に気にしなくてもいいよ。ただの気まぐれだから」
彼女はそのまま数秒考え、「じゃ、じゃあお願いします」と俺に頭を下げた。
◇ ◇ ◇
「で、この本はどこに置けばいいの?」
「あ、それは上から二番目でお願いします」
俺と彼女は本の整理をしていた。話を聞いてみるとこの図書館には広いが図書を整理している人が一人しかおらず自発的に手伝っているらしい。
「しかし、こんな広い場所を一人で管理って・・・。ほんとに出来ているのかな?」
「それが僕も不思議でならないんですけど、出来ているんですよ。僕もここはよく利用するんですが、本が散乱していることはおろか場所を間違えていることもありませんし。本のタイトルを言えばどこにあるのか一瞬で答えてくれますし。恐ろしく優秀な人なんですよね」
それはほんとにすごいな・・・
「だけど、さすがに大変だと思って何度も交渉した結果、手伝いの件を了承してくれたんです!」
「・・・交渉したの?」
「はい!」
元気いっぱい返事してくれたけど、普通大変なことを手伝ってくれるといって断る人はそうそういないと思うが・・・さっきの場面が目に浮かぶ。
「そういえば何か本を探しに来たんじゃないんですか?お礼に手伝いますよ」
「ああ、いや。別に本を探しに来たわけじゃないんだ。今度からここに通うことになったから案内を、」
とそこまで言った瞬間に彼女の耳がピンと立った。そして言葉が遮られる。
「えっ!通うことになったって・・・。じゃあ噂の編入してきた人ってあなたのことだったんですか!?」
「へ?噂になってるの?」
この時点で嫌な予感しかしない。俺自身もやめておけばいいのに彼女に問いかけてしまう。
「えっと・・・どんな?」
「すごいですよ!ただでさえ編入って前例がないのに、その試験でジーク先生を片手であしらったとか、実は貴族のエリートだとか、ドラゴンを一撃で倒したとか、それで白龍に認められた人物だとか、」
「・・・いや、もういいや」
俺はまだまだしゃべり足りなさそうな彼女を止める。彼女は不満そうにまだまだあるのにと小さくこぼした。
いや貴族のエリートとかありえないから。それにちょっと事実が入っているところが妙に心臓に悪い。
しかし、たった一日しか経っていないのに噂になったうえにここまで広がっているとは・・・
なんでこういう話がすぐに広まるのか不思議だ。
とりあえず、これ以上広まってしまうと面倒なので目の前にいる子から誤解を解いていくことにしよう。
「あのな」
「わくわく!」
「いや・・・だから」
「どきどき」
「え、えっと・・・」
「キラキラ」
いや、こんなことされたら無理でしょう。この状況で言い出せる男がいたら教えてほしいです。尊敬しますんで、マジで。
そんな中、レンの姿を見つけた俺は声をかける。
「ちょうどよかった。レン、ちょっと助けてくれ」
「あっ、ここにいたのね。少し探したじゃない。どう?見回り終えた?」
「いや、それがややこしいことになちゃってな。彼女への説明を手伝ってもらおうかと」
「彼女?」
そこでレンは俺のななめ後ろにいる犬耳少女の姿に気づいたようだ。だが、レンはなぜか怪訝そうな視線を向かわせじーっと観察し始めた。
何か彼女に不審な点でもあったのだろうか?そりゃ、犬耳なんて俺からしたら不審な点ばかりなんだが。この世界でも普通ではないだろうか。
と、こんな考えに耽っていると急に納得したようにポンと手を叩き俺に対してにやにやと笑いをこらえた感じで俺をみてきた。
「ふふっ・・・なるほど、彼女ね」
「なにか問題でもあったか?」
「い~え、別になんでもないわ。それで何を説明してほしいって?」
そこで俺はレンに近づいて囁く。
「いや、なんかこの前の編入試験のときやワイバーンを倒したことがなぜか噂になってるんだよね」
「・・・それほんと?」
レンから笑みが消える。ここからまじめに取り合ってくれるらしい
「あぁ、俺もわからないがどこからか広まってるらしい。俺の素性やらは調べても何も出るはずもないが、なさすぎるっていうのも困る。何か対策を取った方がいいかもしれない」
「そこまで気にしなくてもいいと思うけど、編入試験やワイバーンの時も誰も見ていないはずだからちょっと気味が悪いわね。ちょっと調べておきましょうか」
「ああ、よろしく頼むよ。レンしかここでの知り合いって言える人はいないし。・・・ついでに俺の後ろのあの視線をどうにかくれない?」
彼女は苦笑いでその視線の先へと向かって説明を始めた。
更新がとても遅れて申し訳ありません。