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【第二部開始】初心者マスターとポンコツコアの迷宮運営記 〜なんでもありの外道ダンジョンでも独立国家になれますか?〜  作者: 綴木春遥
第一部 ミストフォークと聖女の剣<上> 始マリノ歌 編

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006.はじめてのダンジョン改築


 午前中にコボルドとゴブリンが小動物を幾つか獲ってきてくれたものをDPへ。


 モンスターには休憩は必要ないので、労いの言葉をそれぞれにかけてから、ゴブリンには昨日同様に食べ物探しと、ついでに木材を削れそうな鋭い形の石があれば拾って来て貰えるように頼んで森に入って貰う。

 コボルドとスライムは穴掘りと土壁作りの続きをして貰う。


 で、手が空いた俺は何をするかと言うと。


「コアちゃん、今あるDPで薄くてもいいから壁を一枚作れないかな?」

「壁? 部屋を分けるってこと? 部屋を増やすにはさすがに今あるDPじゃ足りないよ」

「部屋を増やしたい訳じゃないんだ、壁だけ」

「前にも言ったけどダンジョンを塞ぐのは無理だよ?」


 このダンジョンは洞穴型で、入り口からコアのある最奥まで一直線なので、普通に壁を設置したらコアちゃんの言う通り、ダンジョンのルールとやらに引っかかる。


「完全には塞がないで、天井から地面の半分くらいまでを隠せる壁が欲しいんだ。土と石を素材にしたら薄い壁作れない?」

「天井から半分……?」

「そ、やってみてくれたらわかると思う」

「シノミヤがそういうなら、今ある素材とDPでやれるか試してみるね! うーん……改築!」


 コアちゃんの掛け声のあと、ズズズと天井の一部から壁が盛りあがって下へ向かっていく。壁の厚さは見た感じ五センチくらい。

 下に伸びて行って、だいたい俺の臍の辺りの高さで止まる。少しだけアシンメトリーで左右の高さが違うのは材料とDPが足りなかったのかコアちゃんが不器用なのか……まあ、俺もノートをとる時に文字が右上がりになるタイプだし細かいことは気にしない。


「ごめんね、うまくできなかったみたい」

「何言ってるんだいコアちゃん。これだよこれ、これがいいんだ」


 コアちゃんを励ましている訳ではなく、これは本音である。


「この壁があれば外部から中の様子が見えにくくなるでしょ? コアちゃんが壁や天井にくっついてても巨大ニワトリみたいなのが来ても見えないし、大きい生き物は屈まないと入れない。入ろうと思えば入れるけど、入るために足を止める必要がある。これがいいんだよ」

「足止めだけでいいの?」

「勿論。見つからなければ一番、見つかっても諦めてくれれば良し、中に入ってこようとするなら……こう!」


 その辺に置いてあった木材を取って、壁の下の隙間に向かって振り下ろす。


「俺たちに今ある武器は硬い棒と石だけ、戦力は俺と最弱モンスター三匹。ぶっちゃけ雑魚だ。だったら、相手に隙を作ってそこを一気に仕留めるしかない」


 壁を下から生やすよりも上から生やしたのにも理由がある。

 まず、今配下にいるゴブリン、コボルド、スライムは全員背が低い。ゴブリンとコボルドは俺の腰くらいの身長しかないし、スライムは不定型。

 モンスターは全員そのまま出入りできて、俺は屈んで潜れば問題ない。

 作業中以外はモンスターには入口の土壁に隠れて見張りをして貰っているので、襲撃があれば先に中に引っ込める。俺に関しては今の極貧生活が落ち着けば中に引きこもるつもりだし。


 そして、攻撃面。

 モンスターたちは背が低い。ゴブリンには棍棒を持たせているが、自分より背の高い相手に対して上に振り回すより、うさぎを仕留めた時のように振り下ろして貰った方が威力が出る。これは俺も同じだ。コボルドは爪や牙が武器だし、四足歩行になれば低い方がむしろ戦い易い。スライムはべとべとしてる。


「つまり、今の俺たちにとっての脅威である巨大ニワトリみたいな化け物対策にピッタリな低コスト迎撃システムってわけ!」

「うほー! シノミヤ天才! すごい! じゃあこれからはニワトリ狩り放題?」

「……お、おう」


 正直、良い言い方をしただけで、本当ならちゃんとした罠や迷路、モンスターを増やすなどしたくてもできないからこその苦肉の策な訳で……実際またあのニワトリと戦えるかは別ではある。少なくともあの竜みたいな脚に攻撃が通る気はしない。けど、屈んで頭だけ出してくれたらやれるとは思う。その程度だ。

 まあ、小動物狩りでDPを稼いで戦力が増えるまで壁で大型動物の目線を切って見つからなければそれでいい。それがいい。というのはコアちゃんには黙っておこう。


「俺の作戦通りなら何も心配ないから任せてくれよ」

「うおー! シノミヤがかっくいい! ついに私たちもダンジョンらしくなってきたね!」

「そうだな! 俺たちの本格的なダンジョン計画が動き出したぜ!」


 なんてはしゃいでいたのが悪かったのか。


「わんわん!」

「…………!!」


 外で作業していたコボルドの鳴き声がしたので、コアちゃんを壁におかえりして、新築の壁を潜って外に出る。


「ガルルルル」

「わん、わっ、きゃうん!」

「……!!」


 そこで目にしたのは、全身ブルブルしながら尻尾を股の間に隠して吠えているコボルドと、ぷるぷると揺れながら地面を這いずってこっちに向かってくるスライム。


 そして、尻尾が三本ある狼が三匹。

 四足歩行のコボルドより一回り体格のいい、小型敏捷タイプ。完全に戦略の埒外。壁を素通りできちゃう天敵である。


 ブルってるコボルドが必死の威嚇で狼三匹と睨み合っている間に、のろのろと地面でぷるってるスライムを引っ掴んで壁の内側に。


「あら? どうしたのー」


 コアちゃんの問いに答えるよりも何よりも先に、無意識に悪態をつくのも許して欲しい。


「これもうゴースティングだろ」


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