058.Tryungler
暗闇のダンジョン唯一の明かりであるコアちゃんがスクリーンを照らし続ける。
森の怪物たちと戦っているのは、冒険者と……それとは違う統一された鉄の鎧を纏う、恐らくは騎士。
俺の知っている人間でこれまで最も強かった魔法使いはフィーニャ。次いで剣士ラグネル。
フィーニャは魔法使いなので別物として、明らかにラグネルを超えるおかしい連中が複数いる。
その中でも突出しているのは、真っ先に戦場に飛び込んできた戦鎚を担いだ厳ついおっさんと、銀の鎧と槍を持った騎士。この二人は明確にラグネルよりも一段以上の格上だろう。
「こりゃー思ったより大変なことになったなぁ」
「うはー! DPがいっぱいよー! たっくさん死んでる死んでる! ねーねー、シノミヤ! 次はなに創る? どうする??」
コアちゃんのウキウキモードがなんだか懐かしく感じるのはこの戦闘の長さのせいだろうか。
湯船に浸かりながらグレイスの身体の汚れをこすり落としてやりながら考える。
「まずは階層を増やそうか」
「え? マジ? この二階層だってこの部屋しかないのに? モンスター増やさないの?」
「確かにコアちゃんの言う通りだし、モンスターは増やすつもりだけど……先に階層かな。一階層の迷路くらいのサイズで三階層くらいなら増やせるよね?」
「できるけど……本当にいいの?」
「いいよー」
「わかったー」
今はボーナスタイムのように次々と洞穴前広場からDPと死体や装備が流れ込んでくる。以前に階層を追加したときのことを思えば、このダンジョンを全五階層にすることくらい容易だろう。むしろ、もっと増やせる。
増築を五階層目で止めるのは、これから対四つ目鹿のために捨て駒が大量に必要だから。その戦力を待機させておくためのスペースが欲しい。
あとは、それとは別に少し試したいこともある。
「階層の追加は終わったよー、この階層が最上階で、二階層から四階層は何もない広間になってる状態ー」
「おっけーありがとう。増築した二階から四階は全部迷路にして。小部屋付きで。あとそうだ、捕虜の監獄は一旦この五階層を広げてこっちに移そう。この階も適当に何部屋か増やしてくれる?」
「迷路の設計は今回もお任せいいの? 小部屋ってどのくらいの広さ? 五階は3LDKくらいでいい?」
「DとKは要らないからただの三部屋で。あとこの部屋は一回り大きくして」
その他の階については適当に迷路にしてもらう。細かい構造を考えるのは後回し。のんびりとやっている暇はない。
「えっと、一階はそのままで、二階から四階は小部屋つきの迷路で……この部屋は二十四畳くらいで、残りの豚部屋、二部屋は十畳くらいでいっか」
コアちゃんがぶつぶつ言いながらダンジョンの改築を進めてくれる。指はないけど指を折りながら数字を計算してそうなのが目に浮かぶ。数字弱いもんね。というか、この部屋そこまで広げなくてもいいんだけど……まあいいか。
コアちゃんの作業が終わるのをスクリーンを眺めながら待つ。森の獣たちは何処から湧いてくるのか次々とやってくるので減っている気がしないが、人間の方は結構減っている。とはいえ、多分それは運が悪かったやつか他より腕の落ちる連中だろう。
冒険者にも騎士の中にも動きが劣るのがいくらか混ざっていて、そいつらが脱落している。しかも、そういう奴らに限って臆病に離れて戦うものだから、ダンジョンの支配域の外で死ぬことも多く、DPを取りこぼす。死ぬならダンジョンの中で死ね。
「ふぅ。とりあえず改築終わったよ!」
「ありがとう」
コアちゃんに言われて視線をスクリーンから外すと、確かにこの部屋も広くなっていた。
泉とトイレ代わりみたいなものと、このバスタブは隅っこ。ベッドは反対側の隅っこ。
ベッドまでが遠い。不便すぎる。というか、お風呂があるなら泉もいらない気がする。今度こそ普通サイズの洗面台が欲しいが、それも後。
「DPの余裕は?」
「全然まだあり! こんなに使ったのにまだまだDPがあるなんて贅沢ね! 私用のベッドも創っちゃおうかしら!?」
「……必要なら止めないけど、必要なの?」
「隣で寝てほしくないの?」
「眩しいからやめて欲しいかな」
「……そう」
そのたまに無駄にメロつくのやめてくれない?
「それならどんどんモンスターを追加していこう。とりあえずは数を稼げるモンスター、今いるうちのメンツの頭数を増やそうか」
ゴブリン、コボルド、スライムの最初の三匹。それからスケルトンにローパーにオーク。
繁殖は試みているけれど、あれは時間と手間がかかる。四つ目鹿対策の捨て駒ならこのレベルでいい。
あの鹿は初級風魔法で倒せる程度の耐久しかない。肉壁が突撃している間に殲滅するのは俺の役目だ。これはもう今更譲れるものか。
「すごいすごい! リスポーン待ちのモンスターたちとあわせて百になるようにゴブリンとコボルドとスライムを召喚したのにまだDPがあるよ!」
「人も獣も何十、合わせたら百以上はもう死んでるからね」
最初の急襲だけでも五十は超えていたところに追加が来て、人間も二百近く来たようだし、これまでがなんだったんだと思いたくなる稼ぎだ。
まあ、さすがにこんなボーナスタイムが来るのは今回だけだろうけれど。
それと、モンスターの数を百に合わせたのはコアちゃんが数字に弱いから……と言いたいけど、正直俺も三桁を超えるともう記憶が曖昧になるから。
将来的には何が何匹とか気にすることもなくなるんだろうけれど、これまで最弱同士仲良くやってきた連中のことを俺は覚えていられるだろうか……無理だな。
所詮、モンスターはダンジョンギミックの一つでしかないんだから。
それから他のモンスターを増やすのだが、これはオークを優先して貰った。
安価に数を揃えたので、次は質を優先したい。スケルトンとローパーはオークを増やして余った分で増やすことにする。
それに、新しいモンスターも欲しい。
人間から奪った物資でダンジョンで使わないものは産出品に回すので、せっかくならミミックとか欲しいよね。
産出品でリピーターや新規顧客を集めつつ、時々ぱくり。これがダンジョン運営の基本だと思うんだ。
今はまだこの立地と状況のせいでできていないけど、普通はそのはず。他所のダンジョン知らんけど。
そうして、結局オークは過去に召喚した分も合わせて四十を揃えた。ローパーは二十。スケルトンは三十。
ローパーが少ないのはこいつらは罠とセットで運用したいので節約。
素材もあって一番増やしやすいスケルトンを三十で止めたのは理由がある。
「……シノミヤ、ヤバい、どうしよう」
「どしたん? 話聞こか?」
「挿入れてくれる?」
「無茶言うな。どこにナニをだよ。はい、ツッコミを挿入れたよ。で、なにがあったの?」
「ユニークモンスターの生成が解除されたって……」
「やっぱりか」
階層を追加して、モンスターを増やす。
どちらもなるべくキリの良い数字で揃えたのはどこかでトリガーを引き当てるだろうという算段。
そして引き当てたからこそ、DPを無駄にしないためにモンスターの召喚を止めた。
「くっくっく。遂に来たか! この時が!!」
「シ、シノミヤが過去一悪い笑顔してる!」
そりゃそうだろう!
この時のために俺はコアちゃんに新しいモンスターを追加させずにおいたんだ!
俺はここで、セックスできる尽くしてくれる系シスター属性の爆乳美人モンスターを引き当てる予定なのだから!!




