033.Mr.Music Go Go!!
新しく召喚したローパーの見た目は、巨大なイソギンチャク。触手は半透明で全員色違いを引き当てた。色は、赤ピンク、水色、黄色、紫、薄緑色だ。他にも見た目で言えば、根本はちょっと岩っぽかったり目玉が付いていたりするのだが、五体も眺めていると気色悪かったので、比較的エロくない黄色を残して他はさっさと第二と第三に転移させた。
ちなみにこのローパー、伸び縮みできるのは触手だけではないらしく、本体(?)ごと大きさが変化できる。というか、擬態の能力を持っているらしく、今は第二の天井や第三の落とし穴の下などに岩に擬態してくっ付いている。
残りのモンスター、新しく召喚したゴブリンは五体ずつに分けた。今、第一に居るゴブリンは二体だけなのでそこに半分、残りは第二のメイジのところへ配置。第二の方は弓が足りないので石や木の槍を持たせておいた。
スケルトンはそのまま第三に合流。
ややこしいので一度今ある戦力を整理する。
第一にゴブリン七体。
第二にスライム二体、ローパー二体、ゴブリンメイジ一体、ゴブリン五体。
第三にスケルトン五体、ローパー二体。
迷路にコボルド。
ゴブリン三体はダンジョンの外で冒険者に倒されて不在。
そして、コアルームに黄色のローパーとグレイス、そして俺とコアちゃん。
以上、現有戦力のまとめ。
「さて、黄ローパーくん。きみには今日からしばらく俺の左腕として貢献して貰いたい」
もちろん、立場的なものではない。文字通りの意味で無くなった方腕の代わりをしてもらう。
「ヌルヌル」
実際に声に出している訳ではないが、ローパーが動く度にびちょびちょぬるぬると音が出る。そんな卑猥な音を立てながら俺のそばにやってきたローパーが触手を伸ばしてきて左の肩に絡まって来た。
「ちょっと! 俺にはそういう趣味はないから!」
いったい何が始まるんです!?
驚いて抵抗しようにも、右腕にグレイスがいるせいでこれまた抵抗できない。俺はローパーの触手の前に無力である。
「ヌルヌル」
「ん? おお?? おふっ……おぉん?」
俺の左肩に絡まり付いてきたローパーがぐねぐねと蠢いたあと、ぴたりと千切れた腕の傷口にくっついて、あっという間に腕が生える。擬態だ。俺の体のサイズに合わせて左腕に擬態してくれたのだ。
「黄ローパーくん、ちょっとこのグールを引き剥がしてくれ」
「ヌルヌル」
「ぐる? ぐるぅ!? がうがう!」
なんと、命令したら俺の左腕が触手に変化してグレイスを雁字搦めにして引き剥がしてみせる。
グレイスは見た目は肌の色が変な大人の人間、重量は人外。それを当たり前に持ち上げてみせたのだ。
「グレイスがこんなに慌ててるのは初めて見たなぁ」
「イジワルはやめなさいよー、趣味が悪いわよ」
「別にただ、この傷口を舐めてくる怪物を剥がしただけだよ」
「でも絵面が悪いわ」
コアちゃんに言われてグレイスを見る。
ボロボロの薄い服一枚のグレイスが、ヌメヌメの触手に全身を縛られている。うん、これはアウトだ。
「グレイスを離してあげて」
「グルルルル!!」
ローパーがグレイスを離すと、グレイスはこちらを睨みながら脱兎の如く逃げ出した。そうは言っても六畳一間、距離はそうないけれど。
「それにしても、後続が来ないね?」
話を冒険者に戻す。
さっき二人の冒険者を倒してから数十分は経っているはずだが、外の冒険者たちに動きはない。
「さすがにあんなに早く仲間が死んだとは思ってないんじゃない?」
「確かに」
剣士二人はダンジョンに入って五分足らずで始末できてしまった。対応したこちら側がびっくりしているくらいなのだから、向こうだって想定外だろう。
「うーん、音楽変えてみる?」
「そういう問題かなー」
コアちゃんの提案に考えてみる。
「とりあえず今の曲はちょっと俺の趣味に合わないのもあるし、もうちょいウェルカムで陽気な曲にしてみて」
例えば、女王様でも踊り出したくなるような感じなのはどうだろうか。そう提案したのだが、地球の音楽についてはコアちゃんはピンとこない様子。
「それならオリジナルソングとかどう?」
「オリソンなんてあんの?」
コアちゃん音楽好きなのかな? とは思っていたけど、まさか作曲の趣味まであったなんて驚いていると、馴染みのあるノリのいいクラブサウンドが鳴り響く。
「あれ? この曲って前に……」
聞いた覚えがあるよ、と言おうとしたら。
ドゥン……ドゥン……という重低音の後に続いて、聞き覚えしかない男の声でなんとも言えないラップが始まる。
『震えろ、このフロウで“境界”を裂いてやる……
コア上げて……ビート“最大”……
——Ignite!』
「これ俺のオリソンじゃねーか! 弄るなよ! 一回切りのネタだと思ってたのに掘り起こして今さら擦んないでよ!」
「今になって思うと、あれだけノリノリで格好つけて出てきた魔法がしょぼい着火のイグナイトっていうのがジワジワくるよね」
「ジワジワどころかぶっ刺さってるわ! 致命傷だよ! もうやめて!」
なんでだよ! あのときは我が事のように喜んでくれてたじゃん! もう二度と無いと思って記憶から消してた黒歴史を今さら持ち出さなくたっていいじゃん!
「シノミヤ……ダサイ……」
「グレイスー! そんな時だけ喋るんじゃないよ! disってんじゃねー!」
よってたかって俺をいじめて楽しいか! 俺はダンジョンマスターなのに!
「ヌメヌメ」
「黄ローパーくんは踊ってくれなくてもいいから……」
「ヌメェ……」
気を利かせて無数の触手でうねってくれてるところ悪いけど、それは逆に俺に効く。
「あ、シノミヤ、冒険者たちが動き出したよ! "なんだこの不気味な詠唱は!?" だって!」
「余計なお世話だよ!!」
どいつもこいつもぶち殺してやる!




